保険薬局

【続き】(25)学校薬剤師になろう

検査によるデータを根拠とした提案
薬剤師 産業カウンセラー 荒井 なおみ

2.検査によるデータを根拠とした提案

今年の1月に1つの教室(クラスルーム)で空気検査を、2つの特別室(被服室、金工室)で照度検査を行いました。この検査は、毎学年2回定期に行います。検査を行う教室は、私が担当している学校では養護教諭の先生が普段から気になっている教室を選びます。実は、養護教諭の先生も2023年4月に他校から赴任され、当該中学校で働くのは私と同じ1年目ということでした。今回は2つの特別室で行った照度検査についてご紹介いたします。
先生からは「普段から気になってはいたが、どうも被服室と金工室が暗いように思う。検査結果を校長先生に見せて来年度には対応をお願いしたい」とのこと。実際に測ってみると確かに暗く、以下のような結果でした。



この結果を受けて行った学校薬剤師としての指導助言は、特に金工室について「照度の基準となる50 0L xを下回っているところがほとんどであり、金工室という手元作業を行う場であることから怪我の危険性が高まることが懸念される。天井の蛍光灯を増設する、作業台の近くにスタンドライトを設置するなど、照度をあげる何等かの対応を早急に行うことが望まれる」としました。金工室は天井が高く、作業台が壁に向かって並んでいるので、手元は自分の影でさらに暗くなるのではないかと推察されます。学校には予算がないという話もされていましたが、子どもたちの学びに最低限の環境を整えてもらいたいと思いました。

学校環境衛生基準では、「教室及びそれに準ずる場所の照度の下限値は、300 lxとする。また、教室及び黒板の照度は、500lx以上であることが望ましい」となっています。

3.学校薬剤師の経験から学んだこと

たった1年ではありますがいろいろと学ぶことができました。そしてこの経験が自身の視野を広げ、また職場にも還元できることを知りました。皆さんも日常業務で忙しいとは思いますが、機会があれば積極的に手を挙げてみることをお勧めいたします。

1)地域への親近感が増す
 学校周辺を身近に感じます。そこに集う方々へ思いを馳せることができます。これらは地域医療を担う私たちにとって大切なことだと思いました。自宅や職場から近い地域を担当するとよいでしょう。

2)環境衛生についてより関心を持つようになる
 学校での環境衛生が必要であるように、職場でも衛生的な環境で働く必要があります。ご自宅も含めて点検なさってみてはいかがでしょうか。

3)若者世代に眼差しを注ぐことができるようになる
 自身とあまり関係が深くない世代に対して、関心が薄いことがあるかもしれません。関わることで見えてくる世界があることを知りました。

今回は学校薬剤師の活動をご紹介しました。ご参考になれば幸いです。


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【2024.5月号 Vol.336 保険薬局情報ダイジェスト】