保険薬局

(28)よく来たね、新人さん②

一人ひとりに合わせた育成の重要性
薬剤師 産業カウンセラー 荒井 なおみ
前回に続き、新人さんの話をしたいと思います。4月入社の方であれば3カ月間を無事経過し、少しずつ慣れてきている頃でしょう。会社によっては、試用期間を設定しているかもしれません。労使双方で上手に利用していきましょう。

1.試用期間とは

試用期間とは、小学館デジタル大辞泉によれば 「従業員を採用する場合に、本採用の前に一定期間働かせて職業能力を試してみる期間。見習い期間。」 と記載されています。会社側からすれば、この人はウチの会社の仕事がうまくできるだろうか、他の人とうまくやっていかれるだろうかなど、新人さんの能力や人柄を見る機会となります。働く側からすれば、この期間にしっかり会社の理念やその理念がどのように具現化されているのか、自分はこの会社で成長できるのかなどを確認する機会となります。雇う側も雇われる側もこの期間を利用して、お互いを知る努力をしていきましょう。

マッチングという考え方は、とても大切だと感じています。思ったような仕事ではなかった、と入社してすぐに辞めていく新人さんも多いようです。同じ人がある職場ではうまくいかなかったものの、他の職場に異動したら問題なく働けたということがあります。また、ある職務では成果がなかなか出なかった方が、他の職務に就いたら高い成果を上げることもあります。何にでも相性が良く、あらゆるところで能力を発揮できれば良いのですが、人間ですからそうもいきません。管理する側の方々は、この人はどこでどうしたら生き生きできるだろうか、という視点をお持ちいただけたらと思います。本採用後も人間関係含めどこなら生かせるかを考えていきましょう。

試用期間中に業務遂行能力等に問題があった場合は、どこで躓いているのかを探してください。躓きがわかれば対応策を検討できます。躓いているところを再教育してください。ご本人の側に問題がある場合もありますが、教える側の能力も試されます。十分に教育し、環境を整えてもミスを頻発して患者さんへの影響が看過できないことが予測されるなら、別の職務に就くことや新しい場所で働くことなどを提案することもあります。

2.教え方を学びましょう

実務教育を行う場合、ある程度その業務に熟練した方が行うことが多いでしょう。実際、自分が理解していなければ人に教えることはできません。だからといって、ベテランが教えるのがうまいかというと、うまい場合もありますし、そうでもない場合もあります。 「自分が出来る」 ことと 「人に教える」 ことは、別のスキルと考えたほうがいいでしょう。学校の先生は、誰もがなれるわけではありません。先生になりたければ、先生になるための学習をしなければならないのです。
私たち薬剤師は、教職課程を取られた方以外は教えるための教育を受けていないことがほとんどでしょう。きちんと教えているのに相手が理解しないと思わずに、どうやったら理解してもらえるかを考えてみるのもご自身の成長に繋がります。いくつか留意したい点を挙げてみました。どうぞ楽しんで教育してください。
  • 全体像を見せてから個々の説明をする
  • 資料があるとよい(書き込める、何回でも確認できる)
  • 手本を見せる(写真や動画は患者さんの個人情報に留意する)
  • コツを教える(これは喜ばれます)
  • 1度で覚られる人なんていないことを肝に銘じ、何回でも教える(意外と難しい)
  • 教える人は機嫌が良い状態を保つ(意外と難しい)→ イライラして教えるより、にこやかに教えたほうが、結局は早く覚えて戦力になります。

3.その人を見て育てる

人はそれぞれ違います。考え方も能力も、性格も態度も。最終的に一人前になれば良いのです。多少の時間の早い遅いは仕方がありません。一人ひとりをしっかり見て、その人に合った育て方をしましょう。教育こそカスタマイズする必要があります。

①一緒に考える
→ 調剤ミスを度々起こす場合、 「いい加減に自分で考えてください」 と伝えても効果は低いです。それが分かれば行っているはず。一緒に確認し、一緒に考え、できることから一つずつ実施してください。

②何回でも質問OK
→ 1回で覚えられるものなら、誰でもテストで満点を取ることが出来ます。でも、きっと私たちも満点ではないことがあったはず。であれば、1回で覚えられないのが当たり前と思ったほうがいいでしょう。何回でも教えてもらえる職場は、新人さんだけでなく誰もが安心できる職場です。指摘するのにキツイ言葉は不要です。

③何が得意で何が苦手か確認する
→ 自分でも何が得意で何が苦手か分からないことがあります。管理者や先輩から 「ここが得意だね、ここが苦手だね」 と伝えてあげましょう。分かれば双方が楽になります。

今回は新人さんの教育について考えてみました。ご参考になれば幸いです。


【2024.8月号 Vol.339 保険薬局情報ダイジェスト】