介護

通所リハビリの要支援減算対策

減算回避のためのリハビリ会議の運用
株式会社メディックプランニング  代表取締役 三好 貴之
令和6年度介護報酬改定では、通所リハビリにおいて1年超えの要支援者の利用者に対する減算が大幅に拡大されました。要支援者に対する減算は前回改定から導入されましたが、今回の改定では、減算額が6倍にもなる一方で、減算回避策も明示されました。特に短時間の通所リハビリでは、要支援者の割合が多いため、絶対にこの減算対策を講じていただきたいと思います。

▼要支援者に対する減算

1年超えの要支援者に対する減算は、前回の改定で導入され、「要支援1:20単位、要支援2:40単位」の減算が設定されました。7月10日の介護給付費分科会の資料によれば、減算のまま算定している事業所の割合は「93.6%」とほぼすべての事業所が減算のまま利用を継続しています(図)。また、算定数に対する減算の割合も徐々に増え令和4年10月に
は、「64%」となりました。

今回の介護報酬改定の改定項目をみると通所リハビリの役割は、退院退所直後の生活期への移行をスムーズにして、すみやかに在宅生活を軌道に乗せることです。よって、医療で疾患別リハビリを受けていた場合には、リハビリ実施計画書を入手することを義務化したり、通所リハビリの職員が退院時カンファレンスに参加することを評価する「退院時共同指導加算600単位/1回」を新設しました。つまり、通所リハビリのリハビリ専門職は、軽度者のリハビリではなく、移行期の利用者に対するリハビリに注力してほしいということでしょう。

逆に利用開始から1年を超える要支援の軽度者に対しては、今回の介護報酬改定で、減算が「要支援1:120単位」「要支援2:240単位」となんと「6倍」にもなりました。今までは減算が小さかったため、筆者はクライアント先の通所リハビリには「特に気にする必要ないので、継続して利用していただきましょう」とアドバイスしていました。しかし、さすがに減算が6倍になると多少は影響が出てくるため、減算回避のための「リハビリ会議」を実施するようにお願いしています。

▼減算回避のためのリハビリ会議の運用

この要支援減算を回避するには「3か月に1回のリハビリ会議」が必要になります。要介護者に対してリハビリマネジメント加算を算定している通所リハビリは、すでにこのリハビリ会議を実施していると思います。一方、サービス提供時間の短い通所リハビリでは、リハマネ加算の算定をしていない事業所も多いでしょう。よって、このような通所リハビリは新たにリハビリ会議を開催しなければならなくなりました。
リハビリ会議とは、「アセスメント結果などの情報の共有、多職種協働に向けた支援方針、リハビリテーションの内容、構成員間の連携等を協議」するものです。要は、カンファレンスなのですが、ここで課題となるのが、ケアマネジャーや福祉用具事業者など、利用者のサービス提供に関わる人を招集する必要があること、さらに、通所リハビリの医師の出席も求められることです。このメンバー招集が困難なために、リハビリ会議の開催が難しく、リハビリマネジメント加算を算定していない通所リハビリは多くあるのではないでしょうか。

▼リハビリ会議は全員参加でなくてもOK

しかし、厚労省の「リハビリテーションマネジメント加算等に関する基本的な考え方並びにリハビリテーション計画書等の事務処理手順及び様式例の提示について」によれば、「利用者及び家族の参加を基本し、構成員による多職種協働により、リハビリテーション会議を開催すること」とあるため、まず、利用者や家族が出席していれば条件は満たされます。今回は、要支援者が対象なので、比較的しっかりしている方も多く、利用者だけでも良いと思います。つまり、利用者とリハビリ専門職の2名でのリハビリ会議の実施でも問題ないでしょう。

では、参加できなかった家族、医師、ケアマネジャーはどうするかというと、「令和3年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.2)(令和3年3月23日)」に、「構成員に欠席者が出た場合は、当該会議終了後、すみやかに欠席者と情報共有すること」と示されています。つまり、リハビリ会議の議事録を渡せばよいということになります。通常は、このようにリハビリ会議を開催し、何か重要な変更点があれば、必要なメンバーを招集する形式が効率的だと思います。非常に大変だとは思いますが、ぜひ、リハビリ会議を開催し、減算回避をしていきましょう。


第219 回社会保障審議会介護給付費分科会(令和5年7月10 日)


【2024. 4. 15 Vol.590 医業情報ダイジェスト】