組織・人材育成
ハラスメント加害者の気付き~ある研修終了後の一風景
繰り返す組織の悩みが、自分のものの見方を変えたことで改善の方向性が見えた!
株式会社メディフローラ 代表取締役 上村 久子街行く人の装いが軽やかになってきましたね。私は出張が多いのですが、日本全国で様々なお花を目にして温かい気持ちになっております。皆さまいかがお過ごしでしょうか。
今回はメンタルヘルスに関する公開セミナーでお会いした管理職の方とのお話から、「繰り返す組織の悩みが、自分のものの見方を変えたことで改善の方向性が見えた!」という学びを共有したいと思います。
今回はメンタルヘルスに関する公開セミナーでお会いした管理職の方とのお話から、「繰り返す組織の悩みが、自分のものの見方を変えたことで改善の方向性が見えた!」という学びを共有したいと思います。
ケース:
メンタルヘルス不調を起こさない組織づくりをテーマとした公開セミナーで講師を行った時にお会いした、ある医療法人の人事系管理職を担当されている方のお話です。
この日は3時間の公開研修。コロナ禍で行うリアル研修のため広い会場に30名程の限られた参加者という環境でしたが、管理職者ばかりという事もあって学ぶ意欲の高い参加者に恵まれ、とても良い空気感で研修を終えることが出来ました。参加された管理職の皆さまは大きな病院から小さなクリニック、訪問看護ステーションの方までさまざまです。いくつかのケースをご紹介し、グループに分かれて話し合っていただきました。
とあるケースをご紹介した後、あるグループでそれまで積極的にワークに参加していたAさんが突然難しい表情で黙り込み、考え込んでいるところを発見しました。そのケースとは「院長先生にとって些細な声掛けをしたら、職員Bさんは涙を流して悲しんでしまった。感情を露わにするBさんに嫌悪感しか生まれなかった院長先生だったが、なんと院長の勘違い!実はBさんは院長先生の意図を組んでクリニックをより良くしようと行動していたが、院長先生の些細な声掛けによりその思いを否定していたことが判明。院長先生は今まで見ようとしていなかったBさんの気持ちと改善行動に気付き『相手の意図を相手に確認することの大切さ』を学んだ」という内容です。
研修終了後、後片付けをしているとAさんが筆者のもとへ挨拶に来られました。
Aさん「私は職場でハラスメント管理職と呼ばれているのです。昨日もキャリアアップを理由に短期間で退職願いを出してきた看護師に対して『前職でも勤続期間が短いみたいだけど、こんなに短期間で辞めたら他に行っても続かないよ。君を雇うためにいくらかかったか分かる?』と言ってしまいました。実際にはもっと責めているような言い方だったと思います。その職員は今日出勤しなかったそうです。相手を追い詰めている言葉になってしまっているのは分かっているのですが、私は正しいことを指摘しているし、私の気持ちを理解してほしくて伝えていました。しかし本日のケースを通じて、『相手の言動には私が想像し得ない理由があるのかな』と思いました。もしかしたら退職を希望する職員なりに頑張ったけれども、自分の組織に問題があったから退職を希望したかもしれない(実際にこの法人は離職率が高い)。私はハラスメントと言われるほど酷いと思っていなかったし、私が正しいと思っていたのですが、正しさはハラスメントの問題とは全く関係ないことに気が付きました。ケースを通じて、自分が思う以上に素直に反省することが出来た気がします」
このケース、どのような感想を持ちましたか?
このAさんのように、時々「自分はハラスメントの加害者だ」と認識されている方とお話する機会がありますが、「確かに厳しい言い方をしていることは認める(=声を荒げるなど相手が恐怖を感じる言い方になってしまうことは良くない事だと理解している)」「私は正しい指摘をしているから仕方がない(=言い方が悪いだけで責められる原因は相手にあるから私は悪くない)」と主張されることが少なくないように感じます。そして、自分は悪くないと信じたい一方で心の奥底では「…そうは言っても、何か変わらないといけないことも分かるが…どうしたら良いか…」という矛盾も抱えており、手も足も出ずに悩まれている方も多くいらっしゃるようです。
このようにハラスメントの考え方が広がってくると同時に、加害者と言われてしまうことで自分の正義が責められているようで苦しいと思いを打ち明けて下さる管理職の方にお会いすることがあります。
このような場合には、Aさんのように当人とは全く関係の無いケースワークを通じた気付きが有効に働く場合があるようです。当事者として「こういう言い方をしてはいけないよ」と指摘をされるよりも、全く関係の無いケースの方が自分自身を振り返りやすいとのこと。ハラスメントの勉強会を企画する際には、ハラスメントの概念を学ぶのではなく、ケースを通じて組織員の皆さまと考える機会を作ってはいかがでしょうか。何らかの気付きから行動変容に繋がる一歩を踏み出せる可能性はゼロではないと思いますよ!
【2023. 4. 15 Vol.566 医業情報ダイジェスト】
この日は3時間の公開研修。コロナ禍で行うリアル研修のため広い会場に30名程の限られた参加者という環境でしたが、管理職者ばかりという事もあって学ぶ意欲の高い参加者に恵まれ、とても良い空気感で研修を終えることが出来ました。参加された管理職の皆さまは大きな病院から小さなクリニック、訪問看護ステーションの方までさまざまです。いくつかのケースをご紹介し、グループに分かれて話し合っていただきました。
とあるケースをご紹介した後、あるグループでそれまで積極的にワークに参加していたAさんが突然難しい表情で黙り込み、考え込んでいるところを発見しました。そのケースとは「院長先生にとって些細な声掛けをしたら、職員Bさんは涙を流して悲しんでしまった。感情を露わにするBさんに嫌悪感しか生まれなかった院長先生だったが、なんと院長の勘違い!実はBさんは院長先生の意図を組んでクリニックをより良くしようと行動していたが、院長先生の些細な声掛けによりその思いを否定していたことが判明。院長先生は今まで見ようとしていなかったBさんの気持ちと改善行動に気付き『相手の意図を相手に確認することの大切さ』を学んだ」という内容です。
研修終了後、後片付けをしているとAさんが筆者のもとへ挨拶に来られました。
Aさん「私は職場でハラスメント管理職と呼ばれているのです。昨日もキャリアアップを理由に短期間で退職願いを出してきた看護師に対して『前職でも勤続期間が短いみたいだけど、こんなに短期間で辞めたら他に行っても続かないよ。君を雇うためにいくらかかったか分かる?』と言ってしまいました。実際にはもっと責めているような言い方だったと思います。その職員は今日出勤しなかったそうです。相手を追い詰めている言葉になってしまっているのは分かっているのですが、私は正しいことを指摘しているし、私の気持ちを理解してほしくて伝えていました。しかし本日のケースを通じて、『相手の言動には私が想像し得ない理由があるのかな』と思いました。もしかしたら退職を希望する職員なりに頑張ったけれども、自分の組織に問題があったから退職を希望したかもしれない(実際にこの法人は離職率が高い)。私はハラスメントと言われるほど酷いと思っていなかったし、私が正しいと思っていたのですが、正しさはハラスメントの問題とは全く関係ないことに気が付きました。ケースを通じて、自分が思う以上に素直に反省することが出来た気がします」
このケース、どのような感想を持ちましたか?
このAさんのように、時々「自分はハラスメントの加害者だ」と認識されている方とお話する機会がありますが、「確かに厳しい言い方をしていることは認める(=声を荒げるなど相手が恐怖を感じる言い方になってしまうことは良くない事だと理解している)」「私は正しい指摘をしているから仕方がない(=言い方が悪いだけで責められる原因は相手にあるから私は悪くない)」と主張されることが少なくないように感じます。そして、自分は悪くないと信じたい一方で心の奥底では「…そうは言っても、何か変わらないといけないことも分かるが…どうしたら良いか…」という矛盾も抱えており、手も足も出ずに悩まれている方も多くいらっしゃるようです。
このようにハラスメントの考え方が広がってくると同時に、加害者と言われてしまうことで自分の正義が責められているようで苦しいと思いを打ち明けて下さる管理職の方にお会いすることがあります。
このような場合には、Aさんのように当人とは全く関係の無いケースワークを通じた気付きが有効に働く場合があるようです。当事者として「こういう言い方をしてはいけないよ」と指摘をされるよりも、全く関係の無いケースの方が自分自身を振り返りやすいとのこと。ハラスメントの勉強会を企画する際には、ハラスメントの概念を学ぶのではなく、ケースを通じて組織員の皆さまと考える機会を作ってはいかがでしょうか。何らかの気付きから行動変容に繋がる一歩を踏み出せる可能性はゼロではないと思いますよ!
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2024-11-05
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