組織・人材育成

【続き】医師の偏在とこれからの処遇のあり方

賃金制度の見直しとインセンティブ手当
株式会社To Doビズ 代表取締役 篠塚 功
最近は、労働市場の中で、診療科による賃金格差が見えてきていますから、それに合わせて賃金の格差をつけなければ、医師の採用は難しくなります。
なお、すでに格差が存在している以上、仕事の内容が異なるから基本給を変えるというよりは、基本給調整手当といった手当を支給することで水準を変えてはどうかと考えます。例えば、最近医師の賃金制度を見直した病院では、外科、整形外科、麻酔科等の医師に手当を支給することにしました。月額5万円とわずかな金額ですが、今後は、診療科によって、賃金水準を変えていくという方向性を示したことになります。
さらに、救急対応や手術等変則的で過酷な勤務への報酬として、救急患者を診察して入院させた場合には、1件につき1万円を支給するといったインセンティブ手当などの支給も併せて検討するようにしています。

医師の人事評価および診療科目標の加点と業績賞与

医師の人事評価を行う際、救急対応を行う医師の評価に、当直回数や日当直帯での診察率等を救急医療対応加点といった形で、加点項目として加え、人事評価の結果が高くなるような配慮もするようにしています。救急医療に関わらない医師は100点満点ですが、救急対応をする外科医などは110点満点にすることにより、高い人事評価結果が得られやすくなります。

また、各診療科の半期の収入目標を設定し、その達成度合いで診療科の業績を判定し、病院に貢献した診療科の医師の賞与を引き上げるような仕組みも入れるとよいでしょう。その際、救急車受入れ件数や、診療点数の高い手術の件数などを加点項目として評価し、外科医等の診療科業績賞与を膨らませるような仕組みを入れるとよいと考えます。

すなわち、医師の賞与は、表のように、医師個人業績賞与と診療科業績賞与の組み合わせとし、個人業績賞与には人事評価の結果を反映させた係数を掛け、診療科業績賞与には、診療科の収入目標や加点項目の達成度を反映させた係数を掛けてはいかがでしょう。外科医の賃金を手当等で単に上げることも大事ですが、医師個人の業績や診療科の業績を反映させて賞与が上がる仕組みを入れることで、頑張っている医師に、真に報いる処遇制度となります。


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【2024. 7. 15 Vol.596 医業情報ダイジェスト】