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スタッフの変化と成長をサポートする成長対話

優秀なスタッフから考える機会を奪わない
合同会社MASパートナーズ 代表社員 原 聡彦

【相談内容】

大阪府の開業8年目の内科クリニックの院長より 「スタッフのマンネリ化を防ぎ、学びを継続させるためにスタッフのリスキリングを推進するべく経営コンサルティング会社の研修や東京の大手コーチング会社のコーチングを導入していますが、なかなか計画通りに進みません。計画したことができるように指導していきたいのですが、スタッフにどのようなアプローチをすればよろしいでしょうか」 という相談をいただきました。

【回 答】

計画に限らず、やるべきことはわかっているけど、なかなか実行に移せないということはたくさんあると思います。例えば、糖尿病で甘い物はよくないとわかっていてもやめられない、勉強しないと合格できないとわかっていても勉強する気になれないなど、やるべきことはわかっているけどやめられない!できない!ということは日常生活のなかでたくさんあります。
計画はあるのに、なぜ実行に移せないのでしょうか?それは、実行に移すための情報と動機づけが不足しているからではないかと思います。私なりの解釈ですが、事前にスタッフに伝えておくとよい 「実行に移しやすくなる情報」 があることがこれまでの経験からわかりましたので下記にまとめました。

(1)実行に移しやすくする情報
  • なぜこれをやるのか?
  • 仕事の完了形は?
  • 納期はいつか?
  • 時間はどれくらいかかる?
  • 業務設計(業務分解)の方法は?
  • 聞く人・協力者は得られるのか?
  • 報・連・相は誰にするのか?

私の経験上、上記の情報を伝えると、計画を実行に移す確率が極めて高まります。
では、このような情報をどのように伝えていけばいいのか、それがコンサルタントとしての私の悩みの種でした。

私が考えた末に出した答えが、弊社で実践している 「成長対話」 を活用して行動に移しやすい情報を伝えることと動機づけを行うことです。


(2)計画と実行の架け橋となる成長対話
成長対話とは、自らの経験を振り返ることによって、新しい気づきを獲得し、思考や行動に変化をもたらすというものです。最近で言う 「内省」 「振り返り」 「リフレクション」 という言葉に近いと思います。
成長対話を通じてクリニックの経営者である院長も含めて人は学び、変化し、そして成長するのではないかと思います。職業を持つ社会人の多くが成長を感じる場所はやはり職場であり、仕事の中で成長しなければ人生は退屈なものになってしまうと私は思います。「学びの終着駅に着いた大人」にならないためにも、可能であれば月1回、月1回が難しければ3カ月に1回でもいいのでスタッフとの成長対話を実施していただくことをお勧めします。成長対話の質問例を下記にまとめておきます。

(成長対話の質問の例)
  • 今期の目標に対して先月(先週)はどのように活動したか
  • 今期の目標に対してできたことはなにか
  • 今期の目標に対してできなかったことはなにか
  • 何がよくてどのようにしたらもっとよかったか など

(3)成長対話実践の落とし穴
最後に、私どもの会社で成長対話を導入した当初、失敗した事例をお伝えいたします。

①「いつでも聞いてね」では聞けない!
私は聞きやすい雰囲気をつくるために、「疑問点・問題点など何かあったらいつでも聞いてね」と伝えていました。しかし、この言葉は部下にとって、かえって聞きにいけないという意見を聞きました。おそらく、私が忙しそうにして顔を強張らせているので聞きにくいこともあると思います。したがって、日々のスケジュールで、1~3分間でもいいので、部下やメンバーと対話をすることをお勧めします。ちなみに私は朝のチームミーティング後に1~3分成長対話をするようにしております。

②ゴール明示なくして実行なし!
仕事を依頼するときには、仕事の出来栄えをはっきりさせましょう。私は「こんな感じで」とか「様式はお任せするわ」とか、仕事のゴールを明示することなく仕事を依頼することが多いとある部下から指摘され、ショックを受けた経験があります。また、時間当たりの生産性向上の観点から仕事のアウトプットは雑でも丁寧すぎてもいけません。
明確なゴールを明示し共有しておくことが大切です。私どもの会社ではランクアップノートという共有のツールを用いてアウトプットとプロセス管理をしております。

③優秀なスタッフから考える機会を奪わないこと!
一方的な指示をしてしまっては優秀なスタッフも指示待ち族になってしまいます。指示待ち族を作らないためには下記のポイントを踏まえて十分考えてもらうことが重要です。
  • 活動前に十分考える機会を与える
  • 活動前に成功イメージを持たせる
  • 活動後に活動結果を分析させる


【2024. 7. 15 Vol.596 医業情報ダイジェスト】