病院

外来機能分化でCT利用は変わるのか

CT台数、あまり増えない病院と増え続ける診療所
株式会社メディチュア  代表取締役 渡辺 優

■CT台数、あまり増えない病院と増え続ける診療所

日本はCTやMRIなどの画像診断装置の保有台数が諸外国と比較し極めて多いと言われている。OECD加盟国間で人口当たりのCT台数を比較すると、日本は断トツで多い=グラフ1=。

グラフ1

※ 基本2021 年データ。2021 年データがない国は開示されているうちの最新データを使用
出所:OECD Health Statistics 2022 を基に作成

ただし、病院におけるCTの保有台数の伸びは近年落ち着いてきている。病院ではリプレイス中心の対応になっていることが想定される。それに対し、診療所は年率2%近いペースで増えている。診療所の差別化・患者確保策として、CT等の医療機器の充実を図っているものと思われる。

グラフ2

出所:厚生労働省 医療施設調査(2008-20 年)を基に作成

■ 外来機能分化が進めば、病院はCT利用患者の確保に積極的になる

CT1台当たりの利用患者数は病院と診療所で大きく異なる。病院ではCT1台当たり月利用患者数が年々増加し、2020年は300人を超えているのに対し、診療所は2008年から2020年までほぼ増えておらず、その人数も50人程度と少ない=グラフ3=。
CTは列数により診療報酬点数が異なり、また、造影剤の利用などの加算により収入が変わる。しかしここまで利用患者数が異なれば、収益性の面で診療所は明らかに分が悪い。診療所の中には、CTがあることで患者確保につながっていると考え、CTの多少収益性の悪さには目をつぶっている可能性がある。また、すでに投資したCTは、使わなければ収入がなくなるため、しぶしぶ使っている可能性もある。

グラフ3

※患者数は各年の9月中の数
出所:厚生労働省 医療施設調査(2008-20 年)を基に作成

今後、外来機能報告などを通じ、病院・診療所の役割分担の議論が加速する想定である。厚生労働省は下記3つの「医療資源を重点的に活用する外来」機能について地域で基幹的に担う医療機関を明確化することを改革の方向性として示している。

医療資源を重点的に活用する外来
  1. 医療資源を重点的に活用する入院の前後の外来
  2. 高額等の医療機器・設備を必要とする外来
  3. 特定の領域に特化した機能を有する外来(紹介患者に対する外来等)

紹介受診重点医療機関の認定要件や入院診療加算の要件などは、CT等の高額な医療機器の効率的な利用を促すことが目的となれば、病院は「医療資源を重点的に活用する外来」の患者確保に積極的になるのはほぼ確実である。そのような将来を見据えるならば、病院と診療所携強化し、地域の医療資源の効率的な利用を目指すべきだろう。診療機能上CTを持たなければならない例外的な診療所を除けば、患者確保策として診療所がCTを持つのは、周辺病院との連携の関係悪化、厳しい診療報酬点数による収益性悪化を招く。この2つの悪化を想定するならば、診療所がCTを持つのは得策とは言えないだろう。かかりつけ医から病院にCT等を利用する患者を積極的に紹介し、病院で診療を終えた患者は元のかかりつけ医に帰す。その取り組みを強化することが、今後の厳しい診療報酬制度下において、地域の病院・診療所の共存共栄につながるはずである。


【2023. 6. 15 Vol.570 医業情報ダイジェスト】