病院

二次性骨折予防継続管理料-対象患者の把握と集患対策-

2022年度診療報酬改定 「二次性骨折予防継続管理料」が新設
株式会社メデュアクト  代表取締役 流石 学
2022年度診療報酬改定では、骨粗鬆症治療の地域連携を評価する「二次性骨折予防継続管理料」が新設された。

B001_34 二次性骨折予防継続管理料
イ 二次性骨折予防継続管理料1 1,000点
ロ 二次性骨折予防継続管理料2 750点
ハ 二次性骨折予防継続管理料3 500点

二次性骨折予防継続管理料1(以下、イ)は、大腿骨近位部骨折に対する手術を行ったものに対して、二次性骨折の予防を目的として、骨粗鬆症の計画的な評価及び治療等を行った場合に、入院中に1回算定できる。
二次性骨折予防継続管理料2(以下、ロ)は、地域包括ケア病棟入院料(入院基本管理料)、回復期リハビリテーション病棟入院料の届出を行っている医療機関において、他の保険医療機関でイを算定したものに対して、継続して骨粗鬆症の計画的な評価及び治療等を行った場合に算定できる。同一医療機関内の転棟や、特別な関係にある病院からの転院では算定できない。
二次性骨折予防継続管理料3(以下、ハ)は、イを算定したものに対して、外来で継続して骨粗鬆症の計画的な評価及び治療等を行った場合に、1年を限度に月1回算定できる。
急性期から回復期、そして退院後の外来まで、骨粗鬆症治療の地域連携におけるそれぞれの役割を評価する形になっている。

■公開データから対象患者を検証する

大腿骨近位部骨折かつ手術実施は、DPC/PDPSの診断群分類では「160800xx01xxxx 股関節・大腿近位の骨折 人工関節置換術等」が該当する。手術コード01(DPCコードの9,10桁目)は「K0811 人工骨頭挿入術肩、股」「K0461 骨折観血的手術 肩甲骨、上腕、大腿」などの実施を意味する。
今回は分析の一例としてK市を取り上げ、「退院患者調査」のデータより「160800 股関節・大腿近位の骨折 手術コード01」に該当する件数を調べた。
K市内では、5病院において大腿骨近位部骨折の手術入院が行われており、年間で360名のデータ対象患者があった。そのうちA病院が特に多く、全体の4割以上を占めている。退院患者調査では、院内転棟した患者はデータ対象から除外するルールがあるため、各医療機関の該当患者数は急性期一般病棟から直接退院した患者に絞られる。そのため、この数字が実質的に、ロの算定にかかる市場規模になる。



またDPC参加病院がウェブサイト上で公開している「病院指標」も有益な情報源になる。
A病院ウェブサイトより、同診断群分類の患者数等の情報を確認したところ、1年間に162名の該当患者(イ、ハの算定対象)がいた。そのうち約9割に相当する140名程度が他医療機関に転院(ロの算定対象)していたようだ。
 院内転棟や特別な関係にある病院から地域包括ケア病棟等に転院した患者は、ロの算定対象にはならない。しかし退院後はハの算定対象になるため、外来も含めた市場規模を把握する際は、少し手間はかかるが「病院指標」の数字も確認したい。



■市場規模の把握は集患対策の第一歩

地域包括ケア病棟や回復期リハビリテーション病棟を持ち、回復期機能を担う医療機関の立場では、急性期病院から転院する患者をいかに確保するかは、言うまでもなく重要な経営課題である。
マーケティング戦略(集患戦略)を考えるためには、市場規模(対象患者数)の把握はまずやらなければならないことの1つだろう。

今回紹介した退院患者調査や病院指標は、自院の診療圏や近隣にある個々の医療機関に、どの程度の対象患者がいるのか、そのうち自院はどの程度の数(割合)を受け入れているのか。もし自院に紹介されていないようであれば、どの医療機関に転院していのか。定性情報ではなく、客観的な情報として把握することができる。
急性期と異なり、回復期病床の稼働率は高い傾向にある。しかし、公開データから回復期機能の病床の稼働状況を確認すると、同じ二次医療圏であっても、常に稼働率95%以上で推移している医療機関もあれば、逆に70%に満たない医療機関もあることがわかる。診療報酬の実績要件が改定のたびに厳しくなっていくなかで、回復期においても、集患力の差が目に見える形で表れ始めている。

二次性骨折予防継続管理料は、あくまで骨粗鬆症治療の地域連携を評価する項目だ。しかし回復期を担う医療機関にとっては、同管理料の算定に取り組むことが、結果的に集患対策に繋がっていくのではないだろうか。


【2022. 6. 15 Vol.546 医業情報ダイジェスト】