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在宅療養支援病院の変更点と診療報酬の独自解釈

在宅療養支援病院は計1,439病院と増加傾向
株式会社MMオフィス 代表取締役 工藤 高

■在宅療養支援病院は計1,439病院と増加傾向

2025年に厚労省が目指す地域包括ケアシステムの構築に向けてますます重要性が増すのが在宅医療である。2022年度改定では「在宅療養支援病院(在支病)・在宅療養支援診療所(在支診)の施設基準の見直し」「外来在宅共同指導料の新設」「継続診療加算の見直し(在宅療養移行加算への再編)」「在宅がん医療総合診療料の小児加算の新設」「緊急往診加算の見直し」の変更が行われたが、全体的にはマイナーチェンジだったと言える。
施設基準が見直された在支病とは、患者が住み慣れた地域で安心して療養生活を送れるよう患家の求めに応じ24時間往診が可能な体制を確保する、または訪問看護ステーションとの連携により24時間訪問看護の提供が可能な体制を確保することで、緊急時に在宅で療養を行なっている患者が直ちに入院できるなど、必要に応じた医療・看護を提供できる病院のことである。
届出は許可病床200床未満病院に限定されており、届出ハードルの高さで3つの類型となっている。厚労省によると2019年7月1日現在で在支病は従来型877、機能強化型(連携型)366、機能強化型(単独型)196の合計1,439病院と増加傾向にある。一方、在支診は従来型10,956、機能強化型(連携型)3,161、機能強化型(単独型)197の合計14,314診療所となっている。

■機能強化型の在支病は施設基準ハードルを下げた

改定では地域における24時間往診体制の構築に向けて、機能強化型の在支病・在支診には、他の医療機関や介護施設との連携や24時間体制での在宅医療の提供に、より積極的に関わるように促した。機能強化型在支病の施設基準に次の②、③が追加され、①〜③のうちいずれか1つを満たすことが要件とされた。①過去1年間の緊急往診実績が10件以上、②在支診等からの要請で患者の受け入れを行う病床を常に確保し、患者の緊急受け入れの実績が直近1年間で31件以上、③地域包括ケア病棟入院料・入院管理料1または3の届出という要件である。

今改定までは①だけが要件であったが、②と③が加わりハードルが下がった。弊社クライアントでは、これまで①緊急往診10件以上は満たせないものの、③はクリアしていたため、本年4月から機能強化型が算定できるようになったところもある。
また、改定では本年9月まで経過措置があるが、「適切な意思決定支援に係る指針の作成」(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)が義務付けられた。ACPは、日本語では「人生会議」という愛称で「今後の治療・療養について患者・家族と医療従事者があらかじめ話し合う自発的なプロセス」になる。ただし、地ケア病棟では、すでに前回2020年度改定で指針作成が施設基準になっているため、すでに地ケアを持つ病院では問題ない。

■地方厚生局による方言のような独自解釈による混乱

2年前の前回改定において在支病は、当直医とは別に配置が必要な往診担当医について、自宅待機のオンコール体制でも良いことを明確化した。従来からも一般的にはその解釈だったのだが、一部の地方厚生局で「当直医の他に院内に夜間待機していなければならない」といった誤った指導が行われていた。そもそも在支病が届出可能な200床未満の中小病院において、当直医1名の他に往診担当医1名を院内配置で当直させることは医師数や人件費を考えても物理的に無理な話だ。
このように地方厚生局、さらに担当者によって方言のごとく独自解釈をするケースが多々ある。筆者は全国行脚しているため、自県は不可だけど、隣県は届出受理というケースに頻回に遭遇する。20年近く前の話になるが、「診療録管理体制加算」の施設基準の一つにある「中央病歴管理室の設置」について、「独立した部屋でなければならない」と指導を受けた病院もある。中央病歴管理室を医事課内に併設の形をとっていた同院医事課長は「施設基準にはそのような記載はないはず」と食い下がったが、「『室』と記載があるのだから専用部屋でなければならない」という国語の先生的な文章深読み担当者の解釈は頑なであった。

自主返還はまぬがれたが、厚生局の指示どおりに多額の投資をして壁を増設、中央病歴管理室を完全に独立した部屋にした。その後、事務連絡で「必ずしも専用の個室である必要はない」と発出された。同院では「工事料金を返せ」と憤ったが、もちろん、返るはずはない。大昔の話だが、DX時代到来の中で実施された2022年改定でも、いまだに類似のケースが多々あるのは残念だ。


【2022. 7. 1 Vol.547 医業情報ダイジェスト】