病院
地域包括医療病棟入院料の狙い
今改定で7対1病棟の看護必要度はどうなるのか
株式会社メディチュア 代表取締役 渡辺 優■今改定で7対1病棟の看護必要度はどうなるのか
重症度、医療・看護必要度の2024年度改定の内容は多岐にわたる。影響の大きい変更点は、「救急搬送後の入院」及び「緊急に入院を必要とする状態」の評価日数5→2日間が挙げられる。また、7対1看護配置の病棟においては、患者のADL評価であるB項目を含む基準の廃止の影響も大きい。
いくつかの急性期病棟の患者を対象に改定の影響についてシミュレーションを行ったところ、現状の該当患者割合の推移と比較し、入院2日目のピークが鋭くなり、3日目以降の落ち込みが顕著となった=グラフ1=。特に20%以上を満たさなければならないA3点以上の要件①は、入院から2週間を過ぎると10%を割り込むほど低下する。このシミュレーション結果から、看護必要度の基準クリアが厳しい病院では、対策として病床高回転化を図らなければならないだろう。
グラフ1【 入院経過日数】看護必要度(7対1)シミュレーション
看護必要度の診療報酬上の要件は、近年、急性期度合いを表す指標として用いられており、病棟における看護師の業務負担との関連性が薄くなっているように思う。今回の改定内容も、救急搬送の評価日数短縮に代表されるように、その傾向が強い。なぜなら、病床機能報告のデータを用いて、急性期一般入院料1の病棟における看護必要度の該当患者割合と看護配置の状況を調べると、救急医療入院の割合の高い病棟ほど、看護配置は手厚いことが明らかであった=グラフ2=。
グラフ2【 急性期一般1】救急医療入院割合と看護必要度・看護配置の関係
7対1病棟が複数ある病院ならば、院内の病棟ごとの業務負担に応じた看護師の傾斜配置を行う。救急医療入院の割合が高い病棟では、看護師を手厚く配置しているということは、それだけ、業務負担が高いと言える。それにもかかわらず、2024年度改定で救急搬送の評価を厳しくするのは、7対1病床の削減を目的とした厳格化に他ならない。
いくつかの急性期病棟の患者を対象に改定の影響についてシミュレーションを行ったところ、現状の該当患者割合の推移と比較し、入院2日目のピークが鋭くなり、3日目以降の落ち込みが顕著となった=グラフ1=。特に20%以上を満たさなければならないA3点以上の要件①は、入院から2週間を過ぎると10%を割り込むほど低下する。このシミュレーション結果から、看護必要度の基準クリアが厳しい病院では、対策として病床高回転化を図らなければならないだろう。
グラフ1【 入院経過日数】看護必要度(7対1)シミュレーション
看護必要度の診療報酬上の要件は、近年、急性期度合いを表す指標として用いられており、病棟における看護師の業務負担との関連性が薄くなっているように思う。今回の改定内容も、救急搬送の評価日数短縮に代表されるように、その傾向が強い。なぜなら、病床機能報告のデータを用いて、急性期一般入院料1の病棟における看護必要度の該当患者割合と看護配置の状況を調べると、救急医療入院の割合の高い病棟ほど、看護配置は手厚いことが明らかであった=グラフ2=。
グラフ2【 急性期一般1】救急医療入院割合と看護必要度・看護配置の関係
7対1病棟が複数ある病院ならば、院内の病棟ごとの業務負担に応じた看護師の傾斜配置を行う。救急医療入院の割合が高い病棟では、看護師を手厚く配置しているということは、それだけ、業務負担が高いと言える。それにもかかわらず、2024年度改定で救急搬送の評価を厳しくするのは、7対1病床の削減を目的とした厳格化に他ならない。
■高齢者救急を中心に厳格化される
年代別の看護必要度の改定シミュレーション結果を示す=グラフ3=。病院によっては基準を満たすことが難しいA3点の基準は、80歳以上の高齢患者において極端に該当患者割合が低くなる。このシミュレーション結果の背景には、高齢者ほど該当しやすいADL評価が廃止になる影響が大きい。また、救急搬送の評価日数が短くなることも高齢患者ほど厳しい。相対的に若年層の救急搬送患者は、救急搬送自体の評価日数が短くなっても、緊急手術や他の医療資源投入によりA3点を満たす割合が高い。一方、高齢患者はA3点を満たす割合が低い。
グラフ3 【 年代別】看護必要度(7対1)シミュレーション
グラフ3 【 年代別】看護必要度(7対1)シミュレーション
■看護必要度クリアの難しい患者の受け入れは「下り搬送」か「最初から地域包括医療病棟」か
2024年度改定における看護必要度の厳格化により基準をクリアできない病院では、急性期病棟の入院料のダウングレード、急性期病棟以外への機能転換など、何らかの対応を検討せざるをえない。また病床高回転化でクリアできる場合においても、稼働状況次第では病床規模のダウンサイジングを検討すべきだろう。
しかし、グラフ2で見たとおり、救急搬送を積極的に受けている病院では、手厚い看護配置が求められることも事実であり、ダウングレードや機能転換に応じ機械的に人員配置を減らす対応はできない。つまり、入院収入は減り、コストは変わらないため、経営悪化につながる可能性が高い。このような状況を極力避けるためには、今回新設される地域包括医療病棟入院料や救急患者連携搬送料がカギになる可能性があると考えている。
なぜなら、グラフ3で見た80歳台、90歳以上の看護必要度の厳しくなる患者について入院料別の入院単価のシミュレーションを行ったところ、急性期一般入院料の点数と比較し、地域包括医療病棟入院料の点数が比較的高いからである。高額な薬剤投与や手術を伴う患者は、急性期一般入院料の点数の方が高い。
特にDPC包括対象患者であれば、階段状の点数自体が高く設定されるため、急性期一般入院料の方が地域包括医療病棟入院料より高い。一方、高齢の内科系の患者の多くは、DPCの階段状の点数もあまり高くないため、在院日数によっては地域包括医療病棟入院料の方が高くなるケースすらあると見ている。
院内または地域において、地域包括医療病棟入院料を算定する病棟を持つことにより、急性期機能の役割分担ができれば、7対1などの高度な急性期機能の施設基準の維持と、10対1の看護配置とそれなりの高い点数が約束された病棟機能の維持が可能になる。地域でこのような機能分担をするのであれば、これらの病棟間をつなぐひとつのインセンティブが救急患者連携搬送料になるだろう。
【2024. 3. 15 Vol.588 医業情報ダイジェスト】
しかし、グラフ2で見たとおり、救急搬送を積極的に受けている病院では、手厚い看護配置が求められることも事実であり、ダウングレードや機能転換に応じ機械的に人員配置を減らす対応はできない。つまり、入院収入は減り、コストは変わらないため、経営悪化につながる可能性が高い。このような状況を極力避けるためには、今回新設される地域包括医療病棟入院料や救急患者連携搬送料がカギになる可能性があると考えている。
なぜなら、グラフ3で見た80歳台、90歳以上の看護必要度の厳しくなる患者について入院料別の入院単価のシミュレーションを行ったところ、急性期一般入院料の点数と比較し、地域包括医療病棟入院料の点数が比較的高いからである。高額な薬剤投与や手術を伴う患者は、急性期一般入院料の点数の方が高い。
特にDPC包括対象患者であれば、階段状の点数自体が高く設定されるため、急性期一般入院料の方が地域包括医療病棟入院料より高い。一方、高齢の内科系の患者の多くは、DPCの階段状の点数もあまり高くないため、在院日数によっては地域包括医療病棟入院料の方が高くなるケースすらあると見ている。
院内または地域において、地域包括医療病棟入院料を算定する病棟を持つことにより、急性期機能の役割分担ができれば、7対1などの高度な急性期機能の施設基準の維持と、10対1の看護配置とそれなりの高い点数が約束された病棟機能の維持が可能になる。地域でこのような機能分担をするのであれば、これらの病棟間をつなぐひとつのインセンティブが救急患者連携搬送料になるだろう。
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