診療所

顧問の専門家と良好な関係を構築するポイント

クリニック相談コーナー
合同会社MASパートナーズ 代表社員 原 聡彦

【相談内容】

開業7年目の内科クリニックの院長より「開業7年で顧問会計事務所の担当者が5人も変わりました。引継ぎもうまくできていないようで慣れた頃に担当者が変わる印象です。もう少し役に立つ提案など頂きたいと思うのですが思うような提案もありません。妻も資料の紛失などで不満をもっているようですが、関係性が悪くなるのを恐れてこれまでクレームを言ったことはありません。今後、良好な関係で長いお付き合いをしたいのですが、どのように対処すればよろしいでしょうか?」というご相談を頂きました。

【回 答】

税理士事務所、会計事務所(以下 会計事務所)などの顧問税理士、顧問社労士、顧問コンサルタントなど顧問の専門家に不満を持っているクリニックの院長から多くの相談をお受けします。会計事務所に勤務していた私にとっては、「もっとこうすれば会計事務所もサポートしてくれるのになあ」と思うところもたくさんあります。
今回は顧問の専門家と良好な関係を構築するポイントをまとめました。

ポイント1. 会計事務所に期待していることを言語化して伝える。
そもそも不満が出てくるのは期待しているサービスと現状のサービスのギャップが大きいからです。
だからこそ、顧問税理士の所長あるいは幹部職員に自分自身が期待していることを言語化し伝達することが最初にやるべきアプローチです。

ポイント2. 期待していることはやってもらえるのか?顧問サービス内容を確認する。
期待してることをやってもらえるのか?いくらの報酬でやってもらえるのか?どんな担当者がきてくれるのか?など、顧問会計事務所のサービスを確認しましょう。そして、顧問を依頼するとしたらどんな契約になるのか?など、顧問契約内容を契約書などの書面で確認しておくといいでしょう。会計事務所の営業は所長自ら行う場合もあれば、コミュニケーションに長けている営業のできる職員が行う場合もあります。会計事務所の営業をやっていた私の経験ですが、営業時は、もっとも気合いが入っていて最高のプレゼンテーションをしてきますので、言葉に惑わされないように会計事務所のサービスをしっかり書面で確認することをお勧めします。

ポイント3. 体験顧問、経営相談会などお試しサービスを受ける。
会計事務所のサービスは目に見えないので一度、お試しでどんなことをしてくれるのか、現在の経営の悩み(税金、資金繰り、人事)を伝えてどんな提案をしてくれるか、お手並みを拝見されてはいかがでしょうか。最近、顧問契約前に体験顧問、経営相談会を実施する会計事務所が増えているので、お試しサービスの有無を確認してください。

ポイント4.相談内容は書面で残す。
会計事務所業界は職員の入れ替わりが激しいので、担当者がどんどん変わっていくケースは多いです。重要な相談内容は書面で残すように心がけてください。相談内容についてはいいことばかり聞くのではなく必ずリスクも確認しておくこと。そして、そのリスクを負うのは自分自身であることを肝に銘じてください。

ポイント5. 安易な顧問料の値下げ要求は避けるべき。
会計事務所の顧問料が高いと実感している医療機関が多いのは事実です。顧問料が高いと実感するのは期待値と実感値にギャップがあるからこその話。だからといって、安易に顧問料の値下げ要求を行うのはお互いのためによくありません。なぜなら、安易に顧問料を値切ってくるクライアントに情熱をもってサービス提供できないからです。安易に値切ることは避け、サービス範囲を限定していくなどして会計事務所の仕事の軽減をしてあげて顧問料を下げてもらう交渉をすることを考えてはいかがでしょうか。会計事務所の顧問料減額は「値切るより削れ」で対応してください。

ポイント6. 顧問会計事務所には率直な意見を伝える。
こんなことを言ったら気を悪くされるのでは?クレームを言いたいけれど今後のこともあるから言えないなど、顧問会計事務所に対して悶々とした気持ちを持っているクリニックの院長、院長夫人の方は多いようです。いざとなれば顧問会計事務所は変更できるので、勇気をもって今の顧問会計事務所の責任者に率直な意見を言ってほしいと思います。
そして、経営のパートナーとして長期におつきあい頂くことを願うばかりです。

顧問会計事務所と良好な関係を構築できれば強力な経営のパートナーとなりえます。ぜひ、上記を参考に顧問会計事務所を強力なパートナーにして頂きたいと思います。


【2022. 12. 1 Vol.557 医業情報ダイジェスト】