診療所

高配当の金融投資の話に騙されてはいけない!

クリニック相談コーナー
合同会社MASパートナーズ 代表社員 原 聡彦

【相談内容】

「この投資案件の内容は元本の3%を毎月配当として分配するFXファンドです!」と、A院長は信頼する知人から紹介された資産構築コンサルタントと名乗る人間から提案されたそうです。
 「こんな高配当の金融投資話は怪しいと思いますが、親しい知人もこの投資はやるべきで、やらない選択肢はないぐらいの勢いでアドバイスをくれます。この投資話に乗ったほうがいいのかアドバイスを頂きたい」という相談をいただきました。

【回  答】

「高配当の金融投資の話に騙されてはいけない!」とわかっていても、クリニックの院長と奥様を狙う一般的にはあり得ない高配当の金融話にのってしまう事例は後を絶ちません。今回は事例を通じて金融投資のトラブルに巻き込まれないための対策をお伝えします。

1.あり得ない金融投資案件に投資した失敗事例
結論的にはA院長はこの投資話に乗りませんでした。今回の投資話の顛末は、投資した人に対し配当は約束どおり2回行われましたが、〇月〇日に証券取引等監視委員会が無登録を理由に、この投資案件を取り扱う株式会社〇〇〇〇の業務の禁止・停止を命じるように△△地裁に申し立てを行い、停止命令が裁判所より出されました。業務の停止命令が出されたという理由で約束された配当はなくなり、投資額の元本の返金もなくなりました。

今回の投資にのったA院長の知人によると、この資産構築コンサルタントから「投資である以上、リスクは当然ありますが、私もこのような結果になってしまい、とても残念で心苦しく思っています。今回、このような事態が察知できなかったのは、透明性のなさが原因だと思います。この投資案件は自分の出資している資金の残高が全く見えない投資でした。損失が出ていてもそれを知ることができませんでした。今後は、運用の良し悪しがきちんと確認できる、透明性の高いものだけに投資しようと思います。高い勉強代になりました」という案内が送られてきたそうです。A院長の知人はガックリされていたとのことです。

2. 怪しい投資コンサルタントの常套手段を知っておく
今では手段も常套化しており、確信犯的にあの手この手でお金に関する知識のない開業医からお金を巻き上げています。資金を持ち逃げされた投資家はただただ泣き寝入りするしかないケースが殆どで、資金が戻ってくることはまずありません。
上記1のようなFXでの運用商品を謳った儲け話は、毎月数パーセントという高配当をチラつかせ、あたかもそれがずっと続くかのような誘い文句でターゲットの開業医から資金を引き出させる。そして、最初は警戒心を抱くのを見越して少額から勧める。その後、数ヶ月は当初どおりの配当を出し安心感を与える。そこで、さらに追加出資を促し安心した投資家に多額の資金を上乗せして注ぎ込ませ、その後、姿をくらますのが常套手段です。

3. 詐欺的投資に騙されないために知っておくべきこと
投資で騙された話で最も多いのが「この人は信頼できる人だから大丈夫だ」ということ。この時点で、客観的な判断ができなくなっていることを認識して頂きたいと思います。
このような金融の投資の詐欺的リスクを回避する唯一の方法は、金融庁の登録をしているかどうかをまず確認することです。「金融庁の登録をしてない会社からの投資話(儲け話)には乗らないこと!」です。
A院長は私のアドバイスどおり金融庁の登録の有無を確認したところ、資産構築コンサルタントからは明確な回答はなく「私もやってるから絶対大丈夫ですよ」というわけのわからない回答であったので、この投資話には乗りませんでした。正解です。

この時に考えてほしいのは、そんな話をなぜあなたにわざわざしてくるのか??ということ。少し考えればわかることと思います。でも、院長と奥様の被害は後を絶ちません。なぜか? それは「自分は大丈夫!」という過信が、客観的な判断をできなくさせているからです。

もし、読者の先生や奥様にもそういった話がきたら先ずは、顧問税理士、弁護士などに一言相談してみてください。第三者に相談するだけで大切なお金を守ることができた事例は多数あります。
「自分は大丈夫!」という過信を捨て、慎重な行動こそが大切なお金を守ることができるという事を肝に銘じて頂きたいと思います。


【2023. 7. 15 Vol.572 医業情報ダイジェスト】