診療所

低予算でできる集患に役立つ広報の事例

クリニック相談コーナー
合同会社MASパートナーズ 代表社員 原 聡彦

【相談内容】

関東地方で整形外科クリニックを開業する院長より「コロナが一段落しましたが来院患者数がコロナ前の15%減少となっています。なんとかコロナ前の来院患者数に回復させたいのですが、低予算で実施できる集患の事例をご教授ください」と相談をいただきました。

【回  答】

今回は低予算で再受診の必要性を院内新聞で情報発信して再来患者を増やしている近畿地方の整形外科クリニックの事例をお伝えします。
院内新聞を発刊しているクリニックは多いですが、長く続けば続くほどネタづくりに苦戦します。そこで、患者さんにフォーカスをあてた記事ネタで院内新聞を8年間継続させている事例をご紹介いたします。

1.毎回、ファン患者さんのインタビューを掲載する
このクリニックでは、患者さんのインタビュー記事を毎回、掲載しています。患者さんの選定は、“ファン患者さん”を選定いただくことがポイントです。ファン患者とは自院に1年以上通院している方で自院を積極的に紹介してくれる患者さんです。また、良いところも悪いところもご指摘頂ける患者さんもいいと思います。

2.インタビュアーはスタッフが行う
 スタッフから患者さんにインタビューを行うことで自院の良さやスタッフがやっていることを承認してもらえる場になり、スタッフにとって大きな励みになります。インタビューを終えたスタッフの感想を聞くと、「私たちが日頃やっていることが患者さんに喜んでもらっていることがよくわかってよかった」「日頃、やっていることの意味や価値に気づかせてもらえた」「私たちの仕事が認めてもらえてとても嬉しい」など、患者さんから気づきや承認を得たという声をたくさん聴きます。私が言うのもなんですがコンサルタントがやる接遇研修より、効果は何百倍もあると実感するのでぜひ実践いただきたいと思います。

3. インタビュー内容は当院の強みや特徴を確認する内容にする
インタビューする患者さんの中には話好きの人や大人しい人、いろんな方がいらっしゃいますので、インタビューの質問項目はあらかじめ決めておくことをお勧めします。弊社では事前にスタッフとミーティングを行い決めておりますが、おおむね下記のような質問となっています。

・ なぜ、数多あるクリニックから当院を選んで通院していただいているのか?
院長と患者さんとの関係がわかったり、院長が患者さんにどのように関わってこられたのか、患者さんのエピソードを知ることができます。また、院長の素晴らしいところをスタッフに患者さんの口から伝えてもらえるので職場の帰属意識を高めることができます。

・当院の良いところは?
自院の良いところを患者さんから直接、聞くことで自院の良さを把握できます。スタッフが日頃、何気なくやっていることの意味や価値を知る機会にもなります。

例えば患者さんから「娘がクリニックの近くに住んでいて娘から勧めてもらったのがきっかけで、もう10年以上はお世話になっていると思います。クリニックに行くと、先生もスタッフも笑顔があり、院内も掃除も行き届いていて清潔感があって好感が持てます。そして、スタッフは皆、やさしくていうことがない」という感想をいただいたクリニックのスタッフは日々やっているクリンネス(決められた箇所を毎日、掃除を行う)の価値を知ることになりました。院長も「患者さんから教えられることが多い」とお話されました。

・当院に期待することは?
自院の課題(問題)ではなく、あえて期待していることを質問します。「当院の課題や直した方がいいところは?」と聞くと、患者さんによっては「悪いところなんかないよ」と気を遣っておっしゃる方もいらっしゃいますが、「当院に期待することは?」と聞くとほとんどの患者さんは回答してくれます。例えば、「病気についてパンフレットをたくさん置いているけど、多くの患者さんは読まないので啓蒙する機会を作ってもらいたい」「待ち時間に外へ出ても大丈夫にしてほしい」「介護保険でもできるリハビリを実施してほしい」など要望事項が出てきます。もちろん、できることとできないことがあると思いますが、期待事項を聞くことで今後の事業展開にも役に立つと思います。

今回ご紹介した事例の整形外科クリニックでは、年4回の院内報の発刊を8年間継続しています。通院を中断していた患者が院内報を見て再来院することや、院内報を家族・知人から見せてもらって来院する新患・再初診患者さんなど、集患に役立っています。また、患者さんの声を院内新聞などクリニックの広報媒体に掲載することは、単なる広報だけではなくスタッフへの教育にも役立ちますのでぜひ実践いただきたいと思います。


【2023. 10. 1 Vol.577  医業情報ダイジェスト】