診療所

クリニックを狙う! 期間限定無料広告詐欺の手口とは

クリニック相談コーナー
合同会社MASパートナーズ 代表社員 原 聡彦

【相談内容】

整形外科クリニックの院長より、次のようなご相談を頂きました。
「3週間前に突然、求人広告会社を名乗る女性から連絡があり、『現在、キャンペーン期間中につき2週間の求人掲載が無料になります。無料掲載期間で解約すればお金はかかりません。解約手続きも後ほど送付される書類に記載してありますのでご安心ください』と丁寧に説明され、安心して申込書を記載してFAXで送りました。

その後、無料掲載期間が終了する1日前に連絡をしましたが連絡がとれず、そのまま放置していたところ、『有料契約に切り替わりました』と通知され掲載料30万円の請求が届きました。
解約前に連絡したが連絡もとれないし解約手続きについてもはっきりわかるような記載もなかったので請求された金額は払えないと伝えましたが、『契約したのだからお金は必ず支払ってもらいます』と言われ困っています。どのように対応すればいいかご教授ください」

【回  答】

上記のご相談のようなトラブルが増加しています。今回は悪徳業者の手口と問題点、対応策を紹介させていただきます。

1.無料求人広告の悪徳商法を行う会社の手口とは?
悪徳業者は、有料の求人媒体やハローワーク等に求人を出しているクリニックに対し、「キャンペーン期間中につき特別に無料で求人広告を出せるので求人を掲載しませんか」と無料であることを強調した手口で勧誘します。この勧誘に興味を示すとメールやFAX等で無料キャンペーンの申込書等が送られてきます。電話とメール・FAXで契約が進み、対面での打ち合わせや説明などは行われないのが特徴です。
申込書には「無料」や「キャンペーン」などの文字が大きく記載されていますが、無料期間終了後には自動的に有料契約に移行することは書かれていないか、小さな文字・分かりにくい内容でのみ書かれています。多くのケースでは、別途送られてくる「利用規約」等に小さく、分かりにくく記載されています。
申込書に必要事項を記入して送ると、形式的な「掲載内容の確認」などの連絡があり、その後、連絡がピタリと止まります。無料期間満了が近くなり、被害者が連絡をとろうとしても、極端に連絡が取りにくくなります。また、最近のケースでは事前に「無料期間で解約を希望される場合には、解約用の書式を送ります」と伝えておきながら、解約用の書式を送ってこないパターンも散見されます。そうしているうちに、無料期間が終了します。そして、無料期間経過後、図ったようなタイミングで高額の金額が記載された請求書が送られてくるのが手口です。

2.悪徳業者の手口に引っ掛かる受け取る側の問題点
上記のような悪徳業者の手口は、「キャンペーン中」「無料」を強調し、申込者に「無料で広告を掲載できる」「無料期間中に簡単に解約できる」と誤信させる点に特徴があります。本来であれば、負担や費用がいくらになるのかは申込者にとって最も重要な関心事ですので、この点に誤解が生じないよう丁寧に説明を行うことが求められるはずです。ところが、悪徳業者は、無料期間経過後は有料契約に自動移行することをあえて伝えず、申込者を騙し、または申込者の不注意を利用して高額請求を行う点に大きな問題があります。

3. 悪徳業者の手口に引っ掛かってしまったらどうしたらよいか?
上記のように「無料による求人広告」を謳う悪徳業者に引っ掛かってしまったとしても諦めてはいけません。下記のポイントを踏まえ行動しましょう。

①請求を放置してしまう
請求を放置すると、契約の自動延長が延々と続き、不当請求がどんどん高額になってしまいます。そして、かなりの金額になったところで、悪徳業者は訴訟を起こしてきたり、支払督促手続きをとってきたりします。裁判所から届いた訴訟や支払督促の書面をさらに放置してしまうと、欠席裁判等により悪徳業者の主張する金額の支払いを強制される立場に立たされてしまいます。そのため、放置は絶対にしてはいけません。

② 支払いに応じず弁護士などの専門家に相談しましょう
高額請求を「勉強料だ……」などと諦めて支払いに応じてしまうのも誤った対応です。弁護士に依頼すれば、このようなケースであっても、解約通知を確実に相手方に受領させるよう、証拠の残る複数の方法で通知書を送付しますので、「契約を解約できない」との心配はなくなります。また、訴訟等になった場合も、詐欺取消、錯誤取消、公序良俗違反による無効、債務不履行解除等の主張を行うことにより、相手方の請求に対して的確に反論を行うことができますので専門家へ相談いただくことをお勧めします。


【2023. 10. 15 Vol.578 医業情報ダイジェスト】