診療所

しくじり体験記から学ぶ院内マネージメント①

合同会社MASパートナーズ 代表社員 原 聡彦
今回は弊社クライアント様のA整形外科クリニック院長のA先生に許可を得て「人事トラブル事例しくじり院長の院内トラブル体験記」を2回にわたって、お伝えしたいと思います。それではA先生よろしくお願いいたします。

☆A先生のしくじり体験の概略☆
私は近畿地方で整形外科クリニックを開業して8年目で年齢は45歳です。患者数(レセプト枚数)は順調に増加し続け、経営も安定している状況ですので、個人診療所から医療法人にしました。スタッフにも恵まれ、クリニックの業績とともにスタッフの仕事内容のクオリティも順調に上がってきて
おりました。自分でいうのもなんですが、これまで本当に順風満帆でした。
しかし、開業8年目で大きな転機を迎えました。開業期から支えてくれたリーダーシップのある看護スタッフの産休に伴い、これまで体験したことのなかった大きな事件が起きたのです。モンスター看護師を入職させたことでスタッフの規律の乱れ、看護スタッフと受付事務スタッフの対立、労務上の不平不満が噴出しました。一度、クリニックを閉院しようかと思ったぐらい大変な想いをしました。この状況からコンサルタントの協力などを得て、院長である私の経営者としての仕事を変革した記録をお伝えします。

☆クリニックに噴出した3つのトラブル☆
あるとき入職した看護師が、面接段階では見極めることができませんでしたが、モンスター看護師だったのです。院内をかき乱し続け、1年後にようやく退職してもらえましたが、院内には下記のトラブルが噴出しました。
  1. 看護スタッフと受付スタッフの仁義なき対立
  2. スタッフの規律の乱れ
  3. 労務上の不平満が噴出
特に3つ目の労務上の不平不満が院内に根強く残りました。モンスター看護師が退職後、看護師の求人をハローワークや有料媒体に出しましたが、給与水準が上がっていることがわかり、既存スタッフの給与を上げるとともに、求人を出して、働きやすい職場をアピールするために勤務の終了時間も1時間ほど繰り上げました。
こうした努力とは裏腹に、疑問を持ったスタッフは昼休憩ごとに当院の就業規則や賃金規程などの閲覧を求め、読み込んでいました。そして全体ミーティングで、普段、あまり発言のないスタッフが挙手して給与や有給休暇について不満をぶちまけたのです。当然、院内には労務上の不満が蔓延してしまいました。

☆トラブルが起こった原因☆
このようなトラブルが発生した原因をコンサルタントと一緒に考えた結果、以下のとおりとなりました。
  1. 雇用が難しい時代へ突入 ⇒ 当院の賃金を含め労務管理が時代に合っていなかった
  2. 院長のキャパオーバー ⇒優先順位ができていない
  3. スタッフとのコミュニケーション不足 ⇒ミーティングや面談が足りていない
上記の3点を引き起こした要因は院長である私自身の考え方や行動にあり、私自身が変わる必要があるとコンサルタントを含め外部ブレーンから指摘を受け、コンサルタントと一緒に院長である私の変容ストーリーを次のように考えました。

<院長の変容スト―リー>
  1. 自分で何とかする(自分一人で抱え込む) ⇒みんなで何とかする
  2.  スタッフのことには興味がない(マネージメントにも興味がない) ⇒ スタッフをチームの一員と考え、彼女達たちのことを知る
  3.  患者の増加に比例してクリニックの規模拡大志向 ⇒ 理念やミッションが実現できるクリニック規模を模索する

☆院内を改革するための方針☆
まず着手したのは院内を改革するための方針づくりです。コンサルタントにも協力してもらい、方針を明確にしました。
  1.  メンバーが同じ方向(理念)を見て、協力し合えるチーム作り
  2.  愛情:個人としっかり向き合う ⇒個人面談
  3.  規律: ルールを決めて、小さなことでも守ってもらう ⇒ミーティング
スタッフが協力し合うためには、コミュニケーションが大切であり、面談やミーティングが必須と考えました。



☆組織の循環モデル☆
コンサルタントに教えてもらった組織の循環モデルをお伝えしたいと思います。組織の循環モデルには、図のとおり、グッ
ドサイクルとバッドサイクルがあります。
スタッフとの「関係の質」の大切さを理解せずに、「結果の質」だけを求めていると、スタッフとの信頼関係を築くことができず、どんなに努力しても組織として結果を出せない状況になります。結果を求めるならば、まずは「関係の質」を向上させることを意識する必要があります。

次回は、今回お伝えした改革方針のもと、現在、院内で取り組んでいる「関係の質」を向上させる取り組みやマネージメントの具体的な行動をご紹介して院内の変容や私の変容をお伝え致します。
最後までお読み頂きありがとうございました。


【2024. 4. 15 Vol.590 医業情報ダイジェスト】