診療所

患者さんからのセクハラ行為に対処するポイント

クリニック相談コーナー
合同会社MASパートナーズ 代表社員 原 聡彦

【相談内容】

近畿地方の整形外科クリニックの院長より「スタッフが、特定の患者から体をわざと触られるというセクハラ行為を受けている。どのように対処すればいいか、お教え頂きたい」というご相談をいただきました。

【回 答】

クリニックの職場は女性が多い事から「患者さんからの不必要な体への接触」「スマートフォンなどでの盗撮」「患者さんからのデートのお誘い」「軽いストーカー行為」など、患者さんからのセクハラ行為に困惑してしまう院長からご相談を受ける事が増えています。そこで、患者さんのセクハラ行為に対処するポイントをお伝えしたいと思います。

1.ターゲットになりやすいスタッフのタイプ
患者さんに優しく、親切、丁寧にという接遇の基本をきちんと守り、また、生まれ持ったほんわかとした温もりがにじみ出ているタイプのスタッフは、患者さんから好意や微妙なメッセージをいただくケースがあります。例えば、電話番号を書いたメモをスタッフのユニフォームのポケットに入れ込んでくるケース。
「今度、ご飯でも食べに行こう」といったメッセージが入っています。弊社のクライアント様の事例では、「愛を語る詩を書き綴りました、読んだら捨てて下さい」などと書いてあり、発言は控えめ、行動や文面は大胆といったケースもありました。
 クリニックの場合、女性のスタッフが多いので年齢層にかかわらず男性の患者さんから好意を持たれ、やがてセクハラ行為に発展するケースが増えております。セクハラ行為のある患者さんの対応策を多くのクリニックはもっているわけではありませんので、スタッフを守るための仕組みをつくることをお勧めします。

2.院長がスタッフへ伝えるべき事と伝え方の事例
セクハラ行為からスタッフを守るというクリニックの姿勢をスタッフへ周知することをお勧め致します。全スタッフへ伝達する機会がないクリニックでは院長からの業務連絡として下記の文面を配布しました。

スタッフの皆さんへ
お疲れ様です。
先日、ある患者さんからスタッフのスカートの中を盗撮している患者さんがいる旨の報告がありました。患者さんからセクハラ行為(体への不必要な接触や盗撮など)があれば一人で悩まず、深刻な事態になる前に院長またはコンサルタントの原氏に早めにご相談ください。スタッフの皆さんが、安心して働き続けることのできるよう職場環境を守っていきたいと考えております。
例えば、セクハラ行為を行う患者さんが特定できている場合は1対1の対応ではなく必ず2名で対応することやセクハラ行為の予防策としてユニフォームをズボンにすることも検討しておりますので、良いアイデアがあればご提案ください。セクハラ行為を受けた場合は、くれぐれも一人で悩まずご相談ください。
〇〇整形外科クリニック

3.セクハラ行為を行う患者への具体的な対処方法
弊社では下記手順でセクハラ行為を行う患者への対処方法を指導させて頂いております。

☆セクハラ行為を受けたスタッフに事実確認を行う
 ◇ 院長に患者さんと直接話してもらい解決してもらう程の困った事態か?
 ◇ 患者さんは、そうされなければいけない程のことをされたのか?

☆セクハラ行為をする患者に対応する体制について
 ◇ 患者さんからターゲットとなるスタッフを援護する体制を作る(2名体制で行う)。
 ◇ 院長が伝達する場合は、ナースもしくは他のスタッフなど、第3者を立ち会わせる。

☆セクハラ行為を注意する手順について
 ◇ 事実確認
 「当院スタッフに『〇〇という行為があった』旨、報告を受けているが事実なのか?」
 ◇ 事実を認めた場合
 「今後、このような行動があった場合、当院での診察ができなくなるので厳にこのような行為は謹んでもらいたい」
 ◇ 事実を認めない場合
 「勘違いされる行動をとらないよう注意を促す。今後、同じような報告があれば、当院での診察ができなくなるので注意して頂きたい」
 ◇ 手紙やプレゼントを特定のスタッフに渡す患者に対して
 「どんな小さなことでも患者さんからの頂きものや感謝のお言葉は、院長に報告することになっておりますので、お手紙お預かりしておきますね」

上記のように具体的なセリフを決めておくことでスタッフは落ち着いて行動がとれるようになります。患者さんのプライドを傷つけないような言葉を選ぶなど配慮が必要なこともたくさんあると思いますが、ひとつひとつ丁寧に対応し、患者さんにとってもスタッフにとっても良い対応策をあらかじめ作って頂くことをお勧め致します。


【2022. 8. 15 Vol.550 医業情報ダイジェスト】