保険薬局

薬局DX対策は進んでいますか?

薬局がやらなくてはいけないことは大きく二つ
開局薬剤師 岡村 俊子

◆薬局がやらなくてはいけないことは大きく二つ。

  1. 電子処方箋対策(薬局)
  2. HPKIカード取得(薬剤師)

私のような個人経営薬局は①と②を同時進行で行う必要があるのでややこしい(と思うのは私だけであろうか?)。
この原稿を書いている10月初旬はHPK I(薬剤師資格証)申請書を作成し、申請書類送付窓口宛に必要書類を郵送完了の状態で、発行費用支払いに関する案内メールを待っている。

HPKIカードが手元に届いたら・・・・カードに内蔵したICチップにより電子署名が可能になる・・・はずです。
マイナンバーカードで本人の同意を得た場合は、オンライン資格確認等システムで閲覧できる情報に加え、複数の医療機関や薬局で直近に処方・調剤された情報の閲覧が可能になる・・・はずです。

あえて「・・・はずです」と書いてしまうのは実施したことがなくイメージがわかないからだ。オンライン資格確認のためにマイナンバーカードを持ってくる患者もまだ多くはないため、「やってみたらメリットがわかる!」とも言えない状態が続いている。
そのうえ③セカンド電子証明をクラウド上に保管する・・・となると「一度にいろいろ言わんといて!」と言いたくなるが、行政とすればHPK Iカードの破損・紛失に備えてセカンド電子証明があったほうが安心便利なのでスマホと紐付け登録するためのQRコードを送るから自分で紐付けしてね・・・ということらしい。しかもスマホを生体認証にしておけば、もっと簡単にログイン可能・・・うーん、私は対応できるのか?
薬局のデジタルに詳しそうなスタッフを巻き込みながら悪戦苦闘する様が目に浮かぶ。

◆ 電子処方箋を利用したいという患者さんに説明するとしたら

 Step.1 医療機関の窓口で電子処方箋を選択
 Step.2 電子処方箋対応薬局で受付
 Step.3 調剤されたお薬を受け取る

薬局のなかにはDXに不得手な薬局もあるだろう。DXに不得手というだけで地域に根差す「かかりつけ薬局」が排除されることになるのは避けたいので、地域薬剤師会による会員薬局への支援が必要かもしれない。患者が今まで「かかりつけ薬局」と頼ってきたのに、その薬局がDXに対応していないからという理由で否応なしに違う薬局に変更になるというのは本来の「住み慣れた地域での生活」とは違ったものになるのではないだろうか。
DXは便利だが、現在受診が多い年代層にとっては「理解しがたいもの」だ。いくら便利で効率的であっても肝心の患者が置き去りになってはならないと思う。

また、薬局だけが電子処方箋システムを導入しても、地域の多くのクリニックがDXに対応できるだけの猶予期間がないと患者にとってのメリットは見えにくいのではないだろうか。病院・クリニック・薬局が相互にデータを共有できてこそ患者に利益が生まれる。
全国4か所の小さな地域でのモデル事例をどのように全国に広めるのか、行政からの丁寧な支援が必要なのではないか。このような大きな変革の際に、ついていくことができる医療機関・薬局だけがついてくれば良い・・的な運用スケジュールはいささか乱暴に感じる。
医療業界のDX化は患者の治療にとって必要不可欠なものではあるが、現場の混乱を招けば、そのツケは患者に来る。しっかり地固めをしながら進めて行ってもらいたいと思う。


【2022.11月号 Vol.318 保険薬局情報ダイジェスト】