保険薬局

医薬品の供給不能がさらに悪化している

セルフメディケーションを進めて、患者にOTC医薬品を提案する
開局薬剤師 岡村 俊子
初めは後発医薬品メーカーの不適切な製造工程による業務停止が発端だったが、その後次々と他の後発品メーカーでも自主点検や行政の立ち入り調査で不備が見つかり自主回収が行われたため、急激に後発医薬品の供給量が減った。そして次に先発品メーカーへ火の粉が飛ぶという玉突き事故的供給不足が続いている。毎日、卸から「配送未定」「入荷次第配送」というFA Xが届く。新規の薬が処方されて薬局に在庫がない場合、卸に配送日程の確認をしてからでないと安心して処方を受けることができない。供給遅滞する薬は解熱剤、咳止め、漢方薬、ビタミン剤、トローチ等の急性疾患対応薬に多いことも問題だ。これから新型コロナやインフルエンザの同時流行が予想されるし、寒い時期に風邪をひいても肝心の薬が用意できないというのでは不安だ。

利益の出ない薬は作らない。薬価との乖離率の高い薬剤の薬価は下げられる。利益が出なくなれば手放し、他社へ権利譲渡する。自社では作らず、他国の薬剤を輸入し手数料を得る。企業の論理としては至極当然だと思う。しかし、後発品使用率80%目標を掲げたときにこの道筋は予想できなかっただろうか。もし想像できていれば、ここまで現場の医薬品供給不足が悪化する前に何か対処できていたのではないかと思う。
ただ、薬剤師にとって良いこともある。この際、次のような提案を検討してはどうだろうか。

① セルフメディケーションを進めて、患者にOTC医薬品を提案する
  •  発熱や風邪症状等に備えて常備薬としての解熱剤や総合感冒薬を案内する。その際、具体的にどのようなOTC医薬品があるかという説明も必要だ。
  •  ただ・・・小児の場合は一部負担金がない場合が多いし、高齢者は負担割合が低いため丁寧な説明が必要である。
  •  保険適応外薬の処方について医師と検討する。

② 医師に剤形変更を提案する
  •  錠剤、口腔崩壊錠、散、シロップ、ドライシロップ、坐薬、貼付剤に変更する。
  •  患者に使用可能かどうかの確認はすること。

③ 医師に薬の規格変更を提案する(10㎎×2錠⇔20㎎×1錠など)
  •  患者が理解可能かどうかの確認をすること。
  •  規格による適応症の確認をすること。

④ 医薬品の供給に時間がかかるので医師に長期処方ではなく、リフィル処方箋を提案する。
  •  日数をかければ、供給される薬剤もある。
  •  リフィル処方箋にすることで、患者の服用状況や副作用状況を把握できるというメリットがある。

⑤ 重複、長期に使用すべき薬かどうかを確認し、減薬を提案してみる
  •  重複している薬は医師に連絡し、調整する。
  •  漫然投与されている可能性がある薬であれば、いったん休止してみることを提案する。

⑥ 同種同効薬を提案してみる
  •  供給されない薬であり、どうしても必要な薬であれば代替薬を考える。

⑦ 患者とともに残薬調整を考える
  •  医療用医薬品は患者の一部負担金額が比較的安いため、「とりあえずもらっておく」「残ったら捨てて新しい薬をもらう」といった間違った認識を持つ患者もいるので、薬の有効期限の説明も含めて残薬の確認と対応を考える。

⑧ フォーミュラリーやプロトコルについて医師と一緒に考えてみる
  •  普段であれば考えないかもしれないが、医師とコミュニケーションをとる良い機会だ。

今までのように「処方通りに調剤する」のではなく、処方を医師と一緒に考え、薬剤師としての職能を発揮するチャンスととらえる。
そして大切なことは、患者に医薬品供給が困難な実態を丁寧に説明して理解していただくことだ。患者の立場からすれば医薬品供給が不安定であることと自分の薬が入手できないことは無関係だ。まずはご不便をおかけすることをお詫びし、ご理解いただくことが大前提だ。

今、食品ロス削減の機運が高まっている。食品ロスを減らすには、家で食品ロスが出ないようにするだけではなくて、食べ物を買うお店、食べるお店でも食品ロスを減らすことを意識することが大切なのだ。医薬品も同様に「必要でない場合はもらわない(症状を確認する)」「飲み残しをしない(残薬調整する)」「過剰にもらわない(今必要な薬を備蓄する)」といった心構えが提供施設側にも患者側にも必要だ。また薬局は普段から分譲システムを活用し、地域で分譲し合う、不動在庫は必要な薬局に(安く)買い取ってもらうという互助システムの構築が必要だと思う。


【2023.1月号 Vol.320 保険薬局情報ダイジェスト】