組織・人材育成

人事評価の目的とその運用にあたって重要なポイント

人事・労務 ここは知っておきたい
株式会社To Doビズ 代表取締役 篠塚 功
数年前から評価者研修だけではなく、評価を受ける職員(被評価者)に向けた研修を行っている病院の担当者から、今年は例年になく多くの職員が参加したと報告を受けました。ランチタイムにリモートで30分間の人事評価研修を2日に分けて行っています。目標の立て方や自己評価の仕方など運用面で知っておいてもらいたいことを伝えるのは当然として、理解してもらおうと努めていることは人事評価の目的です。
そこで今回は、人事評価の目的と、その運用にあたって重要なポイントを紹介します。

人事評価の目的は何か

職員の多くは、人事評価は、自分たちを評価し格付けするために行っていると勘違いされているのではないでしょうか。まず、この誤った認識を修正する必要があります。人事評価の目的は何かと言えば、1つは人材育成です。職員一人ひとりの成長を助けるためのツールです。もう一つの目的は、部署のあるべき姿(ビジョン)に近づけていくことです。管理職や指導職が思い描く、自部署のビジョンや夢を職員に理解してもらえるように分かりやすく説明し、その夢に近づけていくための1年間の部署目標を立て、それを達成するために、職員一人ひとりが目標を立て取り組む活動が、人事評価です。これからのリーダーは、自部署のビジョンを構築し、抽象的なビジョンを分かりやすい言葉で職員に伝え、みんなの活動をビジョンの実現に向けて引き出せる人でなければなりません。このようなリーダーをビジョナリーリーダーと呼びます。
人事評価によって、職員が成長し、部署の目標が達成され、それによって、病院の目標が達成されて、運営や経営がよくなり、その結果、職員の賃金が上がることを目指しているのです。しかし、人事評価を導入すれば、自然に目的が達成できるというものではありません。まずは、職員全員に、この目的を理解してもらうことが、目的達成のための第一歩です。このことを理解してもらった上で、①個人の目標設定のポイント、②進捗管理、③自己評価の仕方、④面接を受ける上での心構え等、運用面での重要なポイントを学んでもらう必要があります。

人事評価の運用にあたって重要なポイント

①個人の目標設定で、最も重要なポイントは、部署の目標を達成するための目標を立ててもらうことです。部署目標からブレイクダウンされた目標を立てることが第一のポイントです。すなわち、部署の目標から職員一人ひとりの個人の目標に展開されていくことを、目標をブレイクダウンすると言い、先述の人事評価の目的を理解してもらえば当然のことです。
②進捗管理とは、部下一人ひとりの目標が達成できるよう、上司が支援することです。部下が目標を達成できなければ、部署の目標も達成できなくなるわけですから、目標が達成できない障害があれば、いち早く発見し、それを除去しなければなりません。例えば、管理職等評価者には、部下の意欲と能力に応じたサポートをするようにお願いしています。意欲は、部下が目標の目的や意義を理解し、達成に自信をもっているかで判断します。また、能力は、目標を達成するだけの知識・技術はあるか、実行のための具体的方法を理解しているか、過去の経験はどの程度あるかで判断します。当然、意欲も能力も高い部下であれば、部下に任せ、必要時に、報告・連絡・相談を受けるだけでよく、部下が自律して目標が達成できるという理想的な形になるでしょう。しかし、意欲が高くて能力が低い場合には定期的なチェックが必要となるなど、部下の状況に応じたサポートが必要になります。そして職員には、たくさんの部下を抱えている上司が、実際に全員の進捗管理をするのは無理があるので、部下のほうから進捗状況を報告し、問題があれば、その都度早期に、上司に相談してほしいとお願いしています。
③自己評価の仕方で重要なポイントは、自己の職務行動をしっかりとふりかえって評価をすることです。例えば、自分は一生懸命頑張ったというようなふりかえりではなく、具体的な行動事実を思い起こして、その行動を1つの評価要素に結び付け、できたとかできなかったという評価をするように伝えています。これも育成という人事評価の目的を達成するために重要なポイントです。
④人事評価における面接は、目標面接、中間面接、育成面接がありますが、これも部下を育成するために行われるわけですから、職員には、受け身ではなく、能動的に関わるように伝えています。そして、面接には、自ら積極的に上司とコミュニケーションを取る姿勢で臨んでほしいとお願いしています。
評価者となる管理職にだけ研修をするのではなく、全職員を対象に人事評価研修を行うことで、人事評価が正しく運用され、目的の実現に近づけると考えます。


【2025. 6. 1 Vol.3 メディカル・マネジメント】