保険薬局
(10)保育園児虐待事件からパワハラを考える
職場におけるハラスメントについて考える
薬剤師 産業カウンセラー 荒井 なおみ昨今、幼児を巡る痛ましい事件が相次いで起きていることはご承知の通りです。保育園児への虐待で保育士が逮捕される事件も起きています。今回は児童虐待から、職場におけるハラスメントについて考えてみましょう。
1.児童虐待の定義と現状
厚生労働省によれば、児童虐待は以下のように4種類に分類されます。各項目の( )は、平成26年度の種類別割合です。
- 身体的虐待(29.4%)殴る、蹴る、叩く、投げ落とす、激しく揺さぶる、やけどを負わせる、溺れさせる、首を絞める、縄などにより一室に拘束する など
- 性的虐待(1.7%)子どもへの性的行為、性的行為を見せる、性器を触る又は触らせる、ポルノグラフィの被写体にする など
- ネグレクト(25.2%)家に閉じ込める、食事を与えない、ひどく不潔にする、自動車の中に放置する、重い病気になっても病院に連れて行かない など
- 心理的虐待(43.6%)言葉による脅し、無視、きょうだい間での差別的扱い、子どもの目の前で家族に対して暴力をふるう(ドメスティック・バイオレンス:DV)、きょうだいに虐待行為を行う など
虐待者は実母が最も多く52.4%、続いて実父が34.5%でした。実父以外の父による虐待も6.3%あります。
残念なことですが、『虐待』は高齢者施設や障害者施設でも起きています。留置場で拘留中の男性が暴行を受け、死亡するという事件も発生しました。学校の部活動等において指導者や先輩から暴力を受けたという例も後を絶ちません。
2.なぜ虐待が起きるのか
保育園児虐待事件では、保育士はなぜ虐待をしてしまったのでしょうか。朝日新聞の報道から虐待の要因を3つ取り出してみました。
① 新型コロナウイルス感染症の対応で業務が増えた。余裕がなくなっていた。業務に忙殺されていた。
① 新型コロナウイルス感染症の対応で業務が増えた。余裕がなくなっていた。業務に忙殺されていた。
- 現場に求められることは多くなっているが、保育士の配置基準は変わらない。慌ただしさと忙しさは増す一方。現場は常に人手が足りずギリギリの状態。現場の志だけに頼られている。
- 余裕がなくイライラが募ってしまう。忙しい毎日で精神的に追い詰められていた。時間に追われることが多く、本当に忙しかった。
- スケジュールは決まっているが、子どもが時間通りに動くとは限らない。焦る気持ちから急かしてしまうことがあった。言うことを聞かせなければいけない場面が増えていった。気持ちを受け止めてあげられなくなっていた。
② 暴行のつもりはなかった。冗談のつもりで言った。
(新聞記事では特に言及はありませんでしたが、してはいけないことをしてしまった自分自身に対し行為を納得するためにそう発言したのかもしれません。)
③園が対応しない。相談できない。
- 園は職員の虐待行為を知りながら指導や処分を適切に行わなかった。
- 他の保育士たちに問題があることに気付きながら指摘できずにいた。現場を見ても誰かに言えない、相談できない状況だった。信頼できる上司のいる園でなければ訴え出にくい。
- 園に相談したが何もしてくれないことがあった。
- 園全体の課題として対応すべきことも、保育士の問題、クラスの問題に置き換わってしまう。
- 園の対応に遅れがあった。暴行の情報が関係者から園長に伝わっていたが、行為を確認できなかったとしてそのままにしていた。
3.どうすればハラスメントを減らせるのか
上記の事例を私たちの職場に置き換えて考えてみましょう。部下を成長させるためには厳しい指導をすることもやむを得ない。忙しくて気持ちに余裕がなければ他人にきつく当たっても仕方がない。本当にそうでしょうか。どんな理由があってもハラスメントは許されません。組織全体でハラスメントを起こさない環境を整えていきましょう。
①実態を把握する。
→ ハラスメントはどこの職場でも起こり得ます。まずは実態を把握しましょう。そしてどんな結果であっても受け止めることです。そこから職場作りが始まります。
→ データ収集の仕組みを作ります。相談窓口の設置、面談時の聞き取りなどあらゆる機会を通じて声をあげてもらい、また声に出せない声を拾い上げましょう。
②ハラスメントには適切に対処する。
→ 「〇〇さんはそんな人ではない」「〇〇さんの将来のためにここは穏便にしましょう」など、行為者の肩を持つような発言が出ることがあります。本当にその人のためを思うなら、適切な対応により自らを振り返る機会を持ってもらうことが大切です。
→ やっとの思いで上げた被害者の声に対し、速やかに責任を持って対応しなければなりません。
③ 人手不足を解消し、心の余裕を持って働ける環境を目指す。
→ 慢性的な人手不足は、働く人々の心身を摩耗します。どの職場もゆとりのある人員配置は難しいでしょうが、最低限必要な人員を確保し、機器類を整備することで人手不足を補いましょう。
今回は、児童虐待から職場におけるパワハラに思いを馳せてみました。ご参考になれば幸いです。
【2023.2月号 Vol.321 保険薬局情報ダイジェスト】
①実態を把握する。
→ ハラスメントはどこの職場でも起こり得ます。まずは実態を把握しましょう。そしてどんな結果であっても受け止めることです。そこから職場作りが始まります。
→ データ収集の仕組みを作ります。相談窓口の設置、面談時の聞き取りなどあらゆる機会を通じて声をあげてもらい、また声に出せない声を拾い上げましょう。
②ハラスメントには適切に対処する。
→ 「〇〇さんはそんな人ではない」「〇〇さんの将来のためにここは穏便にしましょう」など、行為者の肩を持つような発言が出ることがあります。本当にその人のためを思うなら、適切な対応により自らを振り返る機会を持ってもらうことが大切です。
→ やっとの思いで上げた被害者の声に対し、速やかに責任を持って対応しなければなりません。
③ 人手不足を解消し、心の余裕を持って働ける環境を目指す。
→ 慢性的な人手不足は、働く人々の心身を摩耗します。どの職場もゆとりのある人員配置は難しいでしょうが、最低限必要な人員を確保し、機器類を整備することで人手不足を補いましょう。
今回は、児童虐待から職場におけるパワハラに思いを馳せてみました。ご参考になれば幸いです。
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