保険薬局

(13)こころの情報サイト

「知ることで元気に働く」について考える
薬剤師 産業カウンセラー 荒井 なおみ
冬が終わり、関東南部では4月の初めには桜の花もすっかり散ってしまいました。その代わりではありませんが、まぶしいほどの新緑が目を楽しませてくれます。さて、今回は4月3日に開設された「こころの情報サイト」についてご紹介いたします。

1.「こころの情報サイト」

URL:https://kokoro.ncnp.go.jp/
精神保健研究所70周年記念事業として、国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター(NCNP)が2023年4月3日、こころの健康に関する総合的な情報サイトとしてオープンしました。こころの健康づくりに関する情報と医学的情報、医療・福祉・労働・年金等にわたるさまざまな社会的支援に関する情報、国の施策に関する情報を一般の皆様に向けて、総合的に、正確に、かつ分かりやすく提供する「こころの情報ナビゲーター」を目指しているとのことです。以下、WEBサイトよりコンテンツをご紹介いたします。

コンテンツ

こころの健康のために
こころの病気の予防に重要なストレスとの付き合い方やこころの病気のサインなど、こころの健康・病気への理解を深める
●ストレスとセルフケア
●こころの病気について理解を深めよう

こころの病気を知る
専門家がわかりやすく各病気・症状を解説
●依存症 ●うつ病 ●強迫性障害 ●摂食障害 ●双極性障害 ●てんかん ●統合失調症 ●認知症 ●パーソナリティー障害 ●発達障害(神経発達症) ●不安症 ● PTSD ●不眠症(睡眠障害)

治療や生活へのサポート
こころの健康や病気のことが気になるときや治療のとき、生活に困っているときなどに必要な支援やサービスの情報を紹介
●相談しあう・支えあう
●こころの病気への助成
●精神科の入院について
●障害福祉サービス
●障害者手帳・障害年金 など

国の取り組み
こころの健康や病気に関する国の政策や今後の方向性について紹介
● NIPPON COCORO ACTION
●精神障害にも対応した地域包括ケアシステム
●健康日本21
●医療計画
●精神保健福祉法について など

2.『知る』ことから始めよう

誰もがこころの病気を持つ可能性があります。そのために生きづらさを感じ、辛い思いをしている人たちもたくさんいらっしゃいます。社会にいろいろな人がいるように、職場にもいろいろな人がいるのは当たり前のこと。業種によって働けるかどうかが制限される場合もありますが、いろいろな人がいるという状況があればこそ視野が広がり、創意工夫が生まれ、私たち一人一人が成長できるのではないかと思います。こころの病気や障害を持っていても、ちょっとした工夫で一緒に働くことができる世の中であったらいいなと願っています。
とは言え、忙しい毎日で猫の手も借りたい状況であれば悠長なことは言っていられませんね。どうしたらいいでしょう。そんなとき、まずは「知ること」から始めましょう。知らなければ遠回りしてしまうことでも、知っていることで工夫につながります。工夫することでトラブルが起きにくくなればお互いの気持ちに余裕が生まれます。「ああ、そういうことなんだ」と分かることで視野が広がります。身近なテーマでありながら実はよく知らないこころの病気。この機会に、こころの健康や病気について「知ること」から始めてみませんか。多くの人が基本知識として知っていることで、より身近で対応可能なものとなり、罹患しても生きやすい世の中になっていくに違いありません。

コロナ心の支援情報(ht tps://www.ncnp.go.jp/mental-health/covid19/)
 長く続く新型コロナ感染症に関して、多くの人が不安を感じ、ストレスで心身の不調を感じている方も少なくないことでしょう。多くの方が知らず知らずのうちに精神的な負荷を抱えていることと思います。できるだけ普段と同じ生活を取り戻すためのヒントが載っています。ぜひご覧ください。

3.知っておくことで得られること

知ることは大切なことですが、「頭では理解していても心が追い付いていない」ことが結構あるなと感じています。それでも知らなければ一歩を踏み出すことはできません。まずは知ること、次に理解しようと心を寄せること、一つずつ焦らず段階を踏めたらいいなと思います。

① 自分自身や身近な人のストレスに気付くことができる
→ ストレス過多の時代に生きる私たち。こころの健康を守るためにはストレスと上手に付き合いたいですね。身近な人がいつもと違うと感じた時は声をかけてください。

② 相手の立場に立って考えることができる
→ あの行動は病気が原因だったんだな、その場合はこう対応したらいいんだな、ということが分かれば相手も自分も生きやすくなります。

③工夫することで働きやすい職場を作ることができる
→ こころの病気の人にやさしい職場は、誰にとってもやさしい職場です。凄い人だけが生き生きできる職場ではなく、誰もが自分の持てる力を発揮できる職場にしていきましょう。

今回は、こころの情報サイトを活用し、「知ることで元気に働く」について考えてみました。ご参考になれば幸いです。


【2023.5月号 Vol.324 保険薬局情報ダイジェスト】