保険薬局

(14)世界禁煙デーは、みんなの禁煙デー

きっかけを作って禁煙してみませんか?
薬剤師 産業カウンセラー 荒井 なおみ
5月31日は【世界禁煙デー】です。たばこが健康に及ぼす影響について、かなり周知されてきたのではないかと思いますが、なかなか禁煙できない方もいらっしゃることでしょう。喫煙率の高い30代、40代(特に男性)の方々にとって禁煙を考えるきっかけになれば嬉しいです。

1.【世界禁煙デー】とは

毎年5月31日は【世界禁煙デー】です。日本国内においても、日頃から禁煙に関するさまざまな取り組みが行われています。東京都では、禁煙のためのリーフレットやニコチン依存症治療に保険適用される都内の医療機関一覧をホームページに掲載しています(東京都福祉保健局:とうきょう健康ステーション)。

まず【世界禁煙デー】とは何かについて、厚生労働省のホームページを見てみましょう。

世界保健機関(WHO)は、昭和45年にたばこ対策に関する初めての世界保健総会決議を行い、平成元年には5月31日を「世界禁煙デー」と定め、喫煙しないことが一般的な社会習慣となることを目指した「たばこか健康かに関する活動計画」を開始した。厚生労働省においても、平成4年から世界禁煙デーに始まる1週間を「禁煙週間」として定め、各種の施策を講じてきたところである。

「喫煙しないことが一般的な社会習慣」に早くなったらいいですね。喫煙による健康被害は大きいのですから。さて次に、日本の喫煙率を見ていきましょう。2019年国民生活実態調査の概況(厚生労働省)から、20歳以上の喫煙率(入院患者を除く)を表にしてみました。2001年に比べれば男女ともに喫煙率は低下していますが、それでもまだ総数で見ると男性の3割弱の方、女性の1割弱の方が喫煙していることが分かります。



2.無煙たばこ・スヌースについて

たばこは、現代人に好まれるようさまざまな形で販売されています。「嗅ぎたばこ」や「噛みたばこ」というと遠い昔だと感じる方もいらっしゃるでしょうが、2013年8月より一部の地域で販売が始まった『スヌース』はおしゃれな容器に入った「嗅ぎたばこ」の一種です。加工したたばこ葉を入れた小袋を口に含み、上唇の裏に挟んで使います。
 厚生労働省のホームページでは「たばこと健康に関する情報ページ」で無煙たばこ『スヌース』の健康影響について情報を提供しています。その中からいくつかご紹介したいと思います。
* 2013年8月30日、日本学術会議より「無煙タバコ製品(『スヌース』を含む)による健康被害を阻止するための緊急提言」が公表されている。←『スヌース』の特徴に起因する健康被害の出方について分かりやすく説明しています。

*EU欧州連合加盟国では、公衆の健康に脅威であるとして、スウェーデン以外において販売が禁止されている。←『スヌース』はスウェーデンの伝統的なたばこです。

*『スヌース』は、使用が分かりにくく青少年を含めた非喫煙者の喫煙誘導(ゲートウェイ)になる可能性が指摘されている。←使用が分かりにくい、ということは職場や学校で使用することも不可能ではない?

*『スヌース』には、ニコチンだけで無く、「たばこ特異的ニトロサミン」などの多くの発がん性物質が含まれている。使用により口腔がんなどの原因となるほか、歯周疾患を引き起こし、循環器疾患のリスクも高める可能性がある。

3.きっかけを作って禁煙してみませんか?

禁煙したいなと少しでも思ったら、その思いを大切にしましょう。ふっと「たばこ、やめてみようかな」と心の声が聞こえるかもしれません。「でもやめたくない」「やめるつもりなんてない」と反対の声も聞こえてきそうです。習慣を手放すかどうかの瀬戸際ですから心が揺れるのは当たり前のこと。すぐに禁煙しなくても、準備しておいて損にはなりません。

①きっかけを作る
→ 外圧もきっかけになります。職場でたばこを吸えない。これ以上物価が上がったらたばこは無理。などなど
→ 誕生日、ご結婚、お子さんの誕生など、生活スタイルの変化に合わせて禁煙する方も多いですね。

② 禁煙支援マニュアル(第2版)増補改訂版(厚生労働省e-ヘルスネット『禁煙』)
→ 禁煙の方法を理解していれば、いざ始めるときの心構えになるでしょう。自分が禁煙指導するとしたらどういう風に話すかな、と想像してみるのもいいかも。

③失敗したらまたチャレンジする
→ 禁煙を1回で成功する方は非常に少ないです。平均して3~5回くらいは挑戦しているようですね。失敗したところまでは成功したのです。落ち着いたらまた始めましょう。

今回は【世界禁煙デー】をきっかけに、禁煙について考えてみました。ご参考になれば幸いです。


【2023.6月号 Vol.325 保険薬局情報ダイジェスト】