保険薬局
採用基準は1つしかないのか
採用基準は2つあっても良い
株式会社ウィーク シニアコンサルタント 長谷川 周重下記のような求職者から応募があった場合、どう判断しますか。書類選考、面接はOKでしょうか?NGでしょうか?
●求職者 Aさん<プロファイル>
50歳、女性、病院薬剤師経験6年、調剤薬局経験20年、転職回数14回(転職ブランクなし)、車の運転可能(一般道のみ)、既往歴あり(服薬で発症なし)、閉店まで業務可能、残業可能、勤務曜日限定なし、現職年収550万円、現在1人管理薬剤師、勤務歴1年未
満による転職活動中
(希望)東京23区内、自宅から30分圏内、年収550万円以上(できれば600万円)
気になるところはいくつかあるものの、一度会って確認してみたいという方もいるのではないだろうか。
●求職者 Aさん<プロファイル>
50歳、女性、病院薬剤師経験6年、調剤薬局経験20年、転職回数14回(転職ブランクなし)、車の運転可能(一般道のみ)、既往歴あり(服薬で発症なし)、閉店まで業務可能、残業可能、勤務曜日限定なし、現職年収550万円、現在1人管理薬剤師、勤務歴1年未
満による転職活動中
(希望)東京23区内、自宅から30分圏内、年収550万円以上(できれば600万円)
気になるところはいくつかあるものの、一度会って確認してみたいという方もいるのではないだろうか。
●転職理由に注意 ※特にコロナ禍の退職
まず気になるのはやはり転職回数が14回あり、直近の在籍期間も1年に満たないことだろう。ここでの注意は、退職理由がそれぞれしっかりとあったとしても、実際の理由とは異なっているケースがあるかもしれないということだ。最近は、コロナ禍による業績不振を理由とした会社都合の退職が散見された。特に主な応需科目を小児科や耳鼻科としているところでは、実際によく発生した。
今回のAさんは2回とも耳鼻科がメインの薬局に勤務していた。しかし、たまたまにしては2社続けて業績不振による退職勧告というのは少し疑問が残る。それが本当の理由であるなら、そもそも採用するのだろうか。しかも、転職方法を伺うと、いずれもエージェントを介しているということだった。
ここで、2つの点に注意したい。
今回のAさんは2回とも耳鼻科がメインの薬局に勤務していた。しかし、たまたまにしては2社続けて業績不振による退職勧告というのは少し疑問が残る。それが本当の理由であるなら、そもそも採用するのだろうか。しかも、転職方法を伺うと、いずれもエージェントを介しているということだった。
ここで、2つの点に注意したい。
- どういった転職方法であったか確認すること。
- 退職理由を聞いて終わりではなく、掘り下げて質問を行うこと。
1は私が事前にエージェント経由と確認した。2は、1社目はどうやら売上不振であったが、2社目の理由は、売上不振という実状もあったが、高額年収を理由に無理をして遠方の店舗に転職をしたため、遅刻が発生してしまい信頼を得られなかったことが要因としてあった。その理由を記載する人はなかなかいないだろう。転職歴が多い人は、信じたくはないが、虚偽の記載をしている可能性がある。退職することに慣れてしまい、退職理由を都合良くつくってしまいがちだ。また、エージェントが介入することで履歴書が仕上がっていることも多い。従って、退職理由に矛盾点はないのか、慎重に確認して欲しい。
実際Aさんは今回で15回目の転職活動になるが、私の書類選考を含めて5社通過しているので驚いた。その中には大手ドラッグストア、大手調剤薬局チェーンもあったのでさらに驚いた。おそらく14回も転職をしてはいても、転職ブランクがないことや、残業可能、曜日制限がないというのは魅力的であるのだろう。
●採用基準は2つあっても良い
新型コロナウイルス感染症時代を経て、今年はまた売り手市場に戻りつつあると感じる。そうした環境下、薬剤師の採用基準は大きく2つに分かれ、さらに言えば、多くの薬局はどちらか1つの基準に基づき採用している。
- 今まで通り採用基準に基づいて採用
- 健康面等、最低限の条件をクリアし、薬剤師業務ができれば採用
1は王道の採用だが、2つめはドラッグストアをはじめとする店舗数拡大よる増収を優先している企業に多いヘッドカウント採用である。
そもそもヘッドカウント採用は短期退職や店舗評判の低下、社内の軋轢を発生させる恐れがある。
転職回数が多い応募者には、トラブルメーカーであるというエビデンスがなくても、採用の及第点ラインを設定することで薬剤師確保を優先する企業は存在する。
「自分のところに合う良い人に来て欲しい!」と願って、採用基準を設定しているところがほとんどのはずだ。しかし、吟味して、折角入社をしても、早期で辞めてしまうことはある。また、優秀な人ほど現場に馴染めず、すぐに辞めてしまうことも少なくない。そのように考えると、そもそも長期就業を前提として採用を行ったとしても、1回の面接でその善し悪しを推し量ることも限界があり、意味がないのかもしれない。
実は入社してから退職をする理由は、現場に存在する別の問題が多い。そのため、どちらが正しいという答えはないが、採用基準は1つでなくてよいというのが採用のコツである(妥協ではなく別の基準を設定)。また、採用費が高額だという理由で内定を出さない方もいるが、採用費はエージェント経由かダイレクト採用か、応募経路で異なることもある。仮にエージェント経由による手数料35%が高いということであれば、手数料を25%にしてくれないかと交渉し、内定通知を出すことも1つの方法である。
アフターコロナで経済が回り始めて、採用競争が激しくなってきているが、少しの工夫で改善することもある。人材の安定は経営と心の安定。ご検討を頂けたら幸いである。
【2023.10月号 Vol.329 保険薬局情報ダイジェスト】
そもそもヘッドカウント採用は短期退職や店舗評判の低下、社内の軋轢を発生させる恐れがある。
転職回数が多い応募者には、トラブルメーカーであるというエビデンスがなくても、採用の及第点ラインを設定することで薬剤師確保を優先する企業は存在する。
「自分のところに合う良い人に来て欲しい!」と願って、採用基準を設定しているところがほとんどのはずだ。しかし、吟味して、折角入社をしても、早期で辞めてしまうことはある。また、優秀な人ほど現場に馴染めず、すぐに辞めてしまうことも少なくない。そのように考えると、そもそも長期就業を前提として採用を行ったとしても、1回の面接でその善し悪しを推し量ることも限界があり、意味がないのかもしれない。
実は入社してから退職をする理由は、現場に存在する別の問題が多い。そのため、どちらが正しいという答えはないが、採用基準は1つでなくてよいというのが採用のコツである(妥協ではなく別の基準を設定)。また、採用費が高額だという理由で内定を出さない方もいるが、採用費はエージェント経由かダイレクト採用か、応募経路で異なることもある。仮にエージェント経由による手数料35%が高いということであれば、手数料を25%にしてくれないかと交渉し、内定通知を出すことも1つの方法である。
アフターコロナで経済が回り始めて、採用競争が激しくなってきているが、少しの工夫で改善することもある。人材の安定は経営と心の安定。ご検討を頂けたら幸いである。
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