保険薬局

(5)職場の防災を考えよう

防災を意識した安全・安心な職場作り
薬剤師 産業カウンセラー 荒井 なおみ
9月1日は「防災の日」。毎年この日をきっかけに、家庭や地域、職場の防災を考えていらっしゃることと思います。災害大国と言われる日本に住んでいる私たちにとって、自宅だけでなく、過ごす時間が長い職場の防災を考えることは大変重要です。日頃から防災を意識した安全・安心な職場作りをしていきましょう。

1.職場に留まることができないときのために

地震、津波、火山の噴火、台風、集中豪雨、土砂災害、火災、豪雪など、災害は突然私たちの日常生活を襲います。そしてこれらの災害により職場に留まることが出来なくなってしまうこともあります。

 ①地域の環境を把握していますか。
自宅近くの状況は把握しているかもしれませんが、職場となるとどうでしょう。どこが危険な場所なのか、どの方向に逃げたらいいのか、災害が起こる前に確認しておきましょう。道路が冠水して通れなくなることもありますので、目的地までのルートを複数知っておくと安心です。
  • ハザードマップを確認しましたか。
  •  通勤に使う駅までのルートを複数知っていますか(車の方は通勤に使う道)
 ②職場から速やかに脱出できますか。
建物の中にいるほうが危険な場合、外に逃げ出さなければなりません。職場のどの場所にいても無事外に逃げ出すことができますか。時間をかけている暇はありません。災害によっては、即座に逃げ出せなければ命を落とすこともあります。
  • 脱出ルートは複数ありますか。
  •  出入口が1つしかない場合、窓から逃げることができますか。
 ③職場近くの避難場所、避難所はわかりますか。
薬局から無事脱出しても、その後どこへいったらよいでしょう。自治体が指定している避難場所、避難所を確認しておきましょう。実際に足を運ぶという体験は、慌てているときの安心につながります。
災害時にはスマホのアプリを使って近くの避難所を知ることもできます。
* 避難場所:緊急で逃げ込むところ。大きい公園や学校の校庭など広いところが多い。
* 避難所:緊急避難のあと、一定の期間生活をするところ。学校や公民館などが多い。

2.薬局に留まるときのために

災害の状況によっては、薬局に留まるほうが安全かもしれません。避難所まで行くことが出来ればいいのですが、薬局内で一昼夜を過ごすことを想定した準備をしておきましょう。
自宅であれば多少の食品や飲料の備蓄があるでしょう。しかし職場は自宅とは異なり、生活に必要な物品はほとんど置いていません。内閣府の防災のページでは、オフィスの防災として3日分程度の水と食料の備蓄を勧めています。お風呂の残り水も利用できないため、断水用に簡易トイレも準備しておきましょう。
薬局に留まるときに留意したいのは、一緒にいるのが家族ではなく職場の人というところです。狭い場所で人間関係が良好かどうかに関係なく、複数の人が災害という大きなストレスの中で過ごさなければなりません。職場だけにプライバシーへの配慮も重要です。
  • 家族と連絡(安否確認)を取れるようにする。
  •  少しでもプライバシーを守れるよう仕切りなどをする。
  •  体調に不安があれば、待合室の椅子などを使って横になれるようにする。
★ 災害時、なくてはならない【スマホ】の充電を長持ちさせるための方法をご紹介します。
<2022年3月18日朝日新聞ほか>
  • 必要な時以外はなるべく使わない。
  •  スマホの消費電力を抑える「低電力モード」「バッテリーセーバー」などに設定する。
  •  画面の明るさを暗くする。画面の背景を黒くする「ダークモード」にする。
  •  使わないアプリは終了する(wi-fiやbluetoothは、電波を探してしまうため電池を消耗する)。
  •  スマホは常に充電しておく。停電中でも充電できるポータブル電源、ソーラーバッテリーを準備する。 

3.災害時、自分の命を守りましょう!

災害時は、まず自分の命を守ることが大切です。命があって動けるからこそ他の方を助けることができます。この機会に、職場の防災を点検してみましょう。

①防災用品の整備
→ 自宅に留まる際の防災用品と同じです。飲食物、簡易トイレ、懐中電灯もお忘れなく。
→ 窓を破って逃げるにはバールやトンカチが必要です。窓の外に危険な物を置かないように。

②調剤機器や棚などの転倒防止
→ 棚が倒れれば、怪我をしたり逃げ道が封鎖されたりするかもしれません。物が落ちて足の踏み場もなくなれば、同じことが起こります。必要な場所には、転倒・落下防止を施しましょう。

③逃げやすい環境(整理整頓)
→ 通路には物を置かないようにします。そのためには他の場所も含め徹底的に整理整頓し、不要な物を捨てて場所を作りましょう。それでも棚が必要なら転倒防止策を施し、通路を確保してください。

④避難訓練
→ 実際に体験してみると問題点がわかります。対策を立てるヒントになります。

今回は、防災に強い職場について考えてみました。ご参考になれば幸いです。


【2022.9月号 Vol.316 保険薬局情報ダイジェスト】