保険薬局

採用面接のポイント

適切な人材を見極めるためのポイント
一般社団法人薬局支援協会 代表理事 薬剤師 竹中 孝行
薬局経営において、優れた人材の採用は、会社の未来を左右する非常に重要な要素です。しかし、 「採用したものの期待した成果が得られない」  「職場に馴染めず短期間で退職してしまう」 といった課題に直面することも少なくありません。
そこで今回は、私の経験をもとに、採用面接で適切な人材を採用するためのポイントを紹介します。経営者でない方も、転職活動時に選ばれるポイントとして活用いただければ幸いです。

■採用面接の準備

面接は、その場の感覚で進めるのではなく、しっかりとした準備を行うことで、採用の精度を向上させることができます。まずは、求める人材像を具体的に定めることが重要です。

・必要なスキルや経験の明確化
たとえば、薬剤師の場合、必要とするスキルや能力のレベル、求める経験を具体的に設定しましょう。これにより、入社後に求めている業務に適応できるかを判断しやすくなります。

・価値観や人柄の確認
会社の理念や行動指針があれば、それに合致する人物像を描いておくことも重要です。これに基づいて、価値観やチームでの協調性を面接で評価できるよう準備します。

・面接質問の事前整理
求める人材像が明確になったら、それを確認するための面接時で確認すべきことを事前に整理しておきましょう。面接では限られた時間で多くの情報を引き出す必要がありますので、これまでの実務経験の具体的な内容やこれまでどのような職場環境でどんな役割を果たしてきたかなど、質問を明確にしておくことが大切です。

■面接時のチェックポイント

次に、こんなところをチェックすると良いという一例を紹介します。

・第一印象の確認
身だしなみ、挨拶の仕方、表情、声の大きさなどを確認しましょう。これらは患者様からの印象に直結するため、店舗運営において重要な要素です。

・コミュニケーション能力
接客が重要な薬局では、コミュニケーション能力を把握する必要があります。具体的には言葉遣いや態度、傾聴姿勢や会話の理解力、質問力や質問に対しての回答の仕方などです。これらの要素は、スタッフ間や患者様との信頼関係を築くうえで欠かせません。

・実務スキルの確認
求めているスキルを持っているかを具体的な質問で深掘りしましょう。 「できます」 と回答があった場合でも、実際の経験や能力のレベルには個人差があるため、具体例を挙げてもらいながら詳しく確認することが重要です。

・チームワークの適正
薬局の運営においては、店舗のチームで協力し合うことも欠かせません。チームワークへの考え方や前職での人間関係、チーム内での役割などを職場でのエピソードを含めて確認していくことで、職場に馴染める可能性を判断する必要があります。

・転職理由の確認
転職理由を確認することで、候補者の背景や考え方を把握できます。特に、ネガティブな転職理由が多い場合は、同じような状況が再発する可能性があるため、慎重に判断する必要があります。

■面接時の質問の工夫

面接では、オープンクエスチョンとクローズドクエスチョンを適切に使い分けることが重要です。オープンクエスチョンは、応募者に自由な回答を求める形式で、背景や考え方を深く知るのに役立ちます。一方、クローズドクエスチョンは 「はい」 「いいえ」 や簡単な選択肢で答えられる形式で、具体的な情報を得る際に便利です。例えば、 「調剤薬局での経験は何年ありますか?」 という質問が挙げられます。
さらに、応募者の具体的な経験や能力を掘り下げる方法として、STAR法(Situation, Task, Action,Result)を活用するのも効果的です。この手法は以下の4つのステップで構成されます。
  • Situation(状況): 直面した具体的な状況を尋ねる
  • Task(課題): その状況で取り組んだ課題を聞く
  • Action(行動): 課題解決のために取った行動を確認する
  • Result(結果): 行動の結果やそこから得た学びを尋ねる
この方法で応募者の問題解決能力や実務経験を具体的かつ的確に把握できます。

■面接とともに職場見学の実施

昨今、オンライン面接が増えていますが、実際の職場を見ていただくことも非常に重要です。働く環境や職場の雰囲気に対する適応度を確認することで、応募者のイメージも明確になり、入社後のミスマッチのリスクを減少させることができます。また、実際に一緒に働くことになるメンバーに応募者とコミュニケーションを取ってもらうことで、応募者の印象をより深く理解でき、採用の合否を決定する際の重要な参考となります。
今回は、私の経験をもとに、採用面接で適切な人材を見極めるためのポイントについてお話しいたしました。短い時間で候補者の適性を判断することは決して容易ではなく、私自身も多くの試行錯誤や失敗を経験してきました。
重要なのは、会社としてどのような人物像を求めているのかを明確にし、その基準に合致する人材を採用することです。それが、会社の未来を築く礎となります。今回紹介した内容が、皆さまが自社の採用活動を見直すきっかけとなれば幸いです。


【2025.2月号 Vol.345 保険薬局情報ダイジェスト】