保険薬局
高齢者の特徴と在宅医療との親和性
医療の限界と目標の変化
在宅療養支援診療所薬剤師連絡会 代表理事 在支診薬剤師 大須賀 悠子
在宅医療は、 「治癒が期待できない疾患や障害を抱える患者とその家族を支えるための医療」 と、医師の平原佐斗司先生が定義されておられるとおり、患者本人だけではなく、家族までも支える対象に入っているところが核心だと感じます。患者が住み慣れた環境で安心して生活を続けられるよう支援するだけではなく、患者やその家族の価値観を尊重し、その人生に寄り添いながら医療を提供することを重視します。
厚生労働省の統計でも示されているように、在宅医療を利用することの多い年齢層は75歳以上の高齢の患者群です。高齢者には加齢に起因するさまざまな変化が起きやすく、それらを認識しておかないと地域の医療介護連携のチームの中で目標を設定するときに齟齬が生じかねません。これらは薬剤師が在宅医療に関わるうえで必要なことと思いますので、ここにまとめてみます。
厚生労働省の統計でも示されているように、在宅医療を利用することの多い年齢層は75歳以上の高齢の患者群です。高齢者には加齢に起因するさまざまな変化が起きやすく、それらを認識しておかないと地域の医療介護連携のチームの中で目標を設定するときに齟齬が生じかねません。これらは薬剤師が在宅医療に関わるうえで必要なことと思いますので、ここにまとめてみます。
身体的特徴
高齢者における身体的特徴で特筆すべきは、非典型的な症状を呈することです。わたしたちが教科書で学んだとおりの症状が現れにくく、しばしば家族から聞かれる 「元気がない」 「いつもより食欲がない」 「熱もないのだけどいつもと違う気がする」 といった、漠然とした訴えがヒントになり病気に気付くことが度々あります。また、複数の疾患や症状を同時に抱えることが多く、治療のゴール設定が複雑になることも特徴です。さらに、視覚・聴覚や認知機能などの低下が進行することで日常生活に影響を及ぼし、薬物療法においては副作用や相互作用の発現やポリファーマシーの問題が顕著になってきます。すべての疾患・症状にそれぞれ治療を施し処方をだすというアプローチではなく、患者のQOLを重視したアプローチへの転換が求められてくるわけです。
精神・心理的特徴
経済的な問題や住環境の変化、伴侶の死などの喪失体験が積み重なり、ストレスや心の痛みを抱えている方も多くおられます。加齢による認知機能の低下も高頻度で起きてきます。認知症の進行は周りの環境によって大きく速度が変わることが知られています。精神的健康と身体的健康は密接に関連しており、精神的な不調が身体的な疾患に影響を及ぼすことがあるということは、在宅医療の現場でよく感じていることです。薬剤師の声かけ一つで患者の安心につながることも多くあるので、良好なコミュニケーションをとる努力を怠らない姿勢が大事になるでしょう。
機能的特徴
高齢者は一つの疾患が次の疾患の発症につながってしまったり、慢性疾患化して障害として残ってしまったりする傾向がみられます。必要な栄養をしっかりと摂取できた上での適切なリハビリが重要になりますし、低下した機能を抱えて生活するための人的、物的支援も考える必要があります。社会背景や生活習慣が個々の健康状態や回復能力に大きな影響を与えるため、個人差が非常に大きい点も特徴です。その時その時で使える機能をしっかりと見極め、一包化がいいのか粉砕がいいのか、それともお薬カレンダーがいいのかなど、調剤を工夫することも必要ですし、本当に飲めているのかの確認までを薬剤師がすることが理想です。
社会的特徴
独居や老老介護の増加なども相まって、社会的孤立のリスクは大きく、また自宅や地域からの移動が心理的および身体的負担を増加させる、いわゆるリロケーションダメージも大きな課題となります。入院により、元の疾患は治っても寝たきりになってしまった、という話は皆さんも地域でよく聞かれるかもしれません。できるだけこれらの負担を減らすためには、自宅での療養を続けられる体制を整備することが重要で、そのためには医療介護だけにとどまらない地域社会全体での支援体制が必要です。薬剤のことだけを考えるのではなく、ケアマネジャーや訪問看護師とも連携を取り合って情報共有を図っていく意義は大きいです。
医療の限界と目標の変化
機能低下を抱えた中で生活していく高齢患者に対しては、従来の 「治す」 医療だけに注視するのではなく、QOLを重視した 「支える」 医療へ転換していくことが必要になってきます。この医療は、高齢者における新たなスタンダードとなるべきでしょう。そういった対象を多くみることになる在宅医療には、密接な医療介護連携が必要です。多職種で協力して患者に最適なケアを提供する中で、薬剤師としての専門性を発揮し、ポリファーマシーや残薬管理といった薬物治療の課題に対応していくことで、地域医療の高度化とタスクシフトの推進に寄与できます。できるだけ入院しなくても済み、入院しても早期に退院できるような体制は、地域単位で整備していくほかありません。薬局として、地域で何ができるのかいま一度考えることをおすすめします。
まとめ
高齢者の特徴を踏まえた医療とケアの提供は、社会全体の課題です。より柔軟で包括的な医療環境の構築を目指し地域全体で連携することで、患者がその人らしく生活できる社会を構築できるはずです。そのためにできることを一つひとつ積み上げていきましょう。
【2025.2月号 Vol.345 保険薬局情報ダイジェスト】
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