病院・診療所

急性期一般入院料1から2へ転換、減収回避策は

地域のニーズにあわせた機能転換・機能強化で減収回避を
株式会社メディチュア  代表取締役 渡辺 優

■看護必要度厳格化の影響甚大

 2024年度診療報酬改定は、重症度、医療・看護必要度(以降、看護必要度)において、救急搬送後の評価の期間短縮、およびADL評価の廃止(7対1看護配置のみ)の影響が大きく、厳しい改定となった。
2022年度改定やそれ以前の改定においても、外科系の患者が有利で内科系の患者が不利となるような看護必要度の厳格化が進んできた。しかし、これまでは救急搬送患者を手厚く評価する方向性であったため、積極的に救急搬送を受ける施設においては、病棟看護師の重い負担と看護必要度の評価が極端にずれていなかった。しかし2024年度改定では、救急搬送後の評価期間が短縮されたことで、看護師の負担と看護必要度の評価との間にずれが目立つようになった。入院から一定日数経過し病態がある程度落ち着いていれば早く退院・転院させるべきというメッセージであることは理解できる。しかし、実際には、独居や配偶者の要介護状態などの家庭環境や、後方病床の空き状況により、早期退院・転院が困難なケースは珍しくない。
厳しい改定により、安定的に看護必要度の該当患者割合の基準を満たせない施設では、入院料のダウングレードや、急性期一般入院料から他入院料への転換などの検討をしている。改定前後で急性期一般入院料の届出施設数を比較した=グラフ1=。

グラフ1 改定前急性期一般入院料届出施設における改定後入院料別施設数増減

各地方厚生局 届出受理医療機関名簿を基に作成(改定前:2024年5月1日現在、改定後:東北・関東信越・東海北陸・中国・九州: 2024年11月1日現在、北海道・近畿・四国 : 2024年12月1日現在)

急性期一般入院料1の施設が大幅に減り、入院料2、3の施設が増えた。また入院料4の施設が減り、入院料5、6が増えた。さらに、急性期一般入院料から地域包括医療病棟入院料など別入院料へ機能転換したことで、急性期一般入院料の届出をやめた施設も少なくない。

グラフ2 急性期一般入院料 入院料別 改定前後の病床数比較

各地方厚生局 届出受理医療機関名簿を基に作成 (改定前:2024年5月1日現在、改定後:東北・関東信越・東海北陸・中国・九州: 2024年11月1日現在、北海道・近畿・四国 : 2024年12月1日現在)

また、急性期一般入院料1の病床数は全国で2万6千床ほど減少した。病床数の減少は、入院料2などへのダウングレードに加え、入院料1の施設のダウンサイジングも含まれる。病床数の増減からも、看護必要度の厳格化の影響がいかに大きかったかが分かる。

■ 地域のニーズにあわせた機能転換・機能強化で減収回避を

入院料のダウングレードや急性期病床のダウンサイジングは、短期的には入院収入の減少に直結するため、厳しい対応と言わざるを得ない。しかし、全国的には、今後、高度急性期・急性期の医療ニーズは減少していく。一方、高齢者救急やサブアキュート・ポストアキュートの医療ニーズは相対的に緩やかな減少か、地域によっては増加する地域もある。この厳しい改定を少しでもポジティブに捉えようとするならば、改定の影響を受けて判断したダウングレードやダウンサイジングは、将来の医療ニーズにあわせた積極的な機能転換と考えることができるかもしれない。
しかし、やはり入院収入の減少は経営的に何とか回避したい。では病院はどのような対策を講じるべきだろうか。在院日数を過度に延ばし稼働率向上を図ることは、看護必要度の該当患者割合の低下や、入院単価の低下など、デメリットが大きい。正攻法は、多職種が介入することで入院患者のADLを低下させない取り組みにより、2024年度診療報酬改定で新設されたリハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算の算定などを目指すことだろう。すでにリハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算の届出は230施設を超えた(2024年12月末確認時点)。このような状況を参考に、将来の医療ニーズを見据え、人員確保などを見直すタイミングではないだろうか。


【2025. 2. 15 Vol.610 医業情報ダイジェスト】