財務・税務

医療法人の決算スケジュールについて考える(2025年3月期)

医療機関のガバナンスを考える
あすの監査法人 公認会計士 山岡 輝之
今回は 「医療法人の決算スケジュール」 について考えてみたいと思います。過去にも同様のテーマを扱いましたが、今期は事業報告書等の電子的届出に係る報告システムに変更点があります。改めて、医療法に定められている決算手続や期限を正確に理解し、事業報告書の作成から社員総会の開催に至るまでの各決算スケジュールについて、ポイントをお伝えしたいと思います。

【医療法人の決算スケジュール例】

2025年3月期を決算日とする医療法人を前提にした場合の決算スケジュール例を作成しました。なお、会計監査を必要とする医療法人とそれ以外の医療法人に分けております。



【事業報告書等の作成、会計監査】

事業報告書等の作成、会計監査(会計監査人監査、監事監査)については、以前の記事(2024年6月1日号Vol.593)に記載しておりますので、そちらを参照ください。

【事業報告書等の理事会承認】

(1)理事会の招集通知
監査を受けた事業報告書等については、理事会の承認を受けなければなりません。
理事長は、各理事及び各監事に対して理事会を招集する旨を通知します。理事会招集通知は、1週間前※、あるいは定款で定めた期日までに発送しなければなりませんが、理事及び監事の全員の同意がある場合は招集の手続を省略することが可能です。
※ 期間計算の起算点については、原則として、初日を算入せず翌日から起算します(初日不算入の原則)。招集通知発送日と理事会開催日の間隔は中7日以上必要となる点にご注意ください。

(2)理事会の決算承認
理事会承認期限は特に設けられてはいませんが、社員総会又は評議員会(以下、 「社員総会等」 )の開催スケジュールを考慮する必要があります。

【事業報告書等の備え置き】

医療法人は、次に掲げる書類を主たる事務所に備え置き、社員等から請求があった場合には、正当な理由がある場合を除いて、閲覧に供さなければなりません。
(1)事業報告書等
(2)監事の監査報告書
(3)定款

会計監査人の監査が必要となる医療法人は、前記の書類に加え、会計監査人の監査報告書
また、前記書類のうち、事業報告書等、監事の監査報告書及び会計監査人の監査報告書を、社員総会の日の1週間前の日から5年間、主たる事務所に備え置かなければなりません。

【事業報告書等の社員総会等承認】

(1)社員総会等の招集通知
社員総会の日より少なくとも5日前※に、その目的である事項を示し、定款で定めた方法に従って行う必要があります。その際、社員に対し、理事会の承認を受けた事業報告書等を提供する必要があります。
※ 理事会同様、期間計算の起算点については、原則として、初日を算入せず翌日から起算します。招集通知発送日と社員総会開催日の間隔は中5日以上必要となる点にご注意ください。

(2)社員総会の決算承認
理事会で承認を受けた事業報告書等を招集通知の際に提供し、社員総会の承認を受けなければなりません。

【理事会開催日と社員総会等開催日の間隔】

前述の箇所が重要なポイントになります。
理事会の承認を受けた事業報告書等を社員総会等の1週間前から主たる事務所に備え置かなければなりません。つまり、理事会開催日と社員総会等開催日の間隔は最低1週間必要であると考えられます。
実務上、理事会と社員総会等の決算承認が同日開催されているケースが見受けられますが、前述の通り、理事会と社員総会等は同日に開催することはできない点にご留意ください。

【医療法人の事業報告書等及び経営情報等の提出】

医療法人では毎会計年度終了後3月以内(外部監査の対象となる医療法人は4月以内)に、事業報告書等及び経営情報等を都道府県知事に届け出なければならないとされています。
これに関連し、令和7年4月より、医療法人の事業報告書等及び経営情報等を電子的方法により届け出る場合に、報告システムがG-MIS(医療機関等情報支援システム)から独立行政法人福祉医療機構がWAM NET上に構築する新システムに移行されます。
新システムでは、データ登録時におけるチェック機能や前年度情報の自動入力等の機能向上が図られていますので、紙媒体で報告している医療法人においても、新システムによる提出に切り替えてはいかがでしょうか。
なお、昨年度までのG-MISでは、貸借対照表や損益計算書の勘定科目が公認会計士監査を受けた計算書類と整合して登録することができない等の問題点も確認されています。これらの問題が生じた場合には、監査を受けている公認会計士・監査法人に相談しながらシステム登録を進めるようお願いします。


【2025. 4. 1 Vol.613 医業情報ダイジェスト】