組織・人材育成

【続き】話し合いは聞き合い~「聞く」は本当に難しい

「理解し合うための工夫」が必要
株式会社メディフローラ 代表取締役 上村 久子
相談を受けた筆者が会議で話し合われた詳細を伺うと、「議事録はないから話し合いの詳細は覚えていないが、ちゃんと話し合った」という院長先生。

筆者「なぜ、議事録を書かなかったのですか?どう相手が理解したことを確認したのですか?」

院長先生「ですから、話をしたのです。結論は『目標とする項目を減らそう』ですもの。会議の議事録なんて面倒ですよ。ただ、今思えば日々の業務で管理職は忙しいですし、目標設定の期限もたくさん取っていたわけではなく、会議に管理職全員が参加していたかというとそうでもなく、欠席者には口頭で伝えていただけで……。自分が思う以上に『話し合い』をしたからと言って伝わったわけではないのですね……。議事録など、後から見返すことのできる『理解し合うための工夫』は必要なのかもしれません」

このケース、どのような感想を持ちましたか?
このように「話し合ったから理解しているはず」と思い込んでしまうケースは案外仕事の中で起こるのではないでしょうか。

「私たちが複雑な問題について生産的に話し合えないのは、聞くことが出来ないからだ」とは、南アフリカにおけるアパルトヘイト後の民主化の支援に携わり、その後世界50か国以上で教育、環境、紛争、食糧問題などのさまざまな社会課題について、対話を通じた新たな未来創造プロセスを支援している第一人者であるアダム・カヘン氏の著書『それでも対話をはじめよう』(小田理一郎訳、英治出版、2023年)からの一説です。

人は誰かの話を聞く際に、程度の差はあれ、無意識に自分自身のフィルターを通して聞いているものです。そうすると相手が本当に何を言いたかったのかということに意識を向けるよりも、自分が聞きたいことだけに耳を傾けてしまいがちです。そうであれば、先のケースの院長先生の気づきにあったように、中長期的に良い関係性を築くために「理解し合うための工夫」が必要ではないでしょうか。

皆さまの組織では「理解し合うための工夫」はありますか?このケースを参考に、皆さまの組織に合う工夫を考えてみることをお勧めいたします!


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【2024. 5. 15 Vol.592 医業情報ダイジェスト】