診療報酬

在宅療養支援病院が第8次医療計画で位置付けられる

医療計画は介護保険事業(支援)計画に合わせて5年から6年ごとに
株式会社MMオフィス 代表取締役 工藤 高

■ 医療計画は介護保険事業(支援)計画に合わせて5年から6年ごとに

現在、第8次医療計画(2024〜2029年度まで)が検討中である。医療計画は、病床規制を主な目的に、二次医療圏ごとの病床数や病院の整備目標、医療従事者の確保などを定めるため1985年に導入された。2006年の医療法改正で、疾病・事業ごとの医療連携体制を記載することになり、2016年の医療法改正で現在進行形の地域医療構想が明示されている。第6次医療計画(2013~2017年度)までは、5年ごとに改定されていたが、3年単位の介護保険事業(支援)計画と足並みを揃えるために直近の第7次医療計画(2018~2023年度)からは6年ごとに改定されることになった。

第8次では新型コロナの感染拡大を踏まえて、「新興感染症等の感染拡大時における医療提供体制の確保に関する事項」を医療計画に位置付けることになった。従来の5事業(救急医療、災害時における医療、へき地の医療、周産期医療、小児医療)に追加して6事業となる。その結果、医療計画では5疾病(がん、脳卒中、心筋梗塞等の心血管疾患、糖尿病、精神疾患)・6事業および在宅医療に関する事項が計画に記載される。

■ 地域包括ケア病棟1,3の病院における機能強化型在支病の届出ハードルは下がった

200床未満病院で在宅医療を手掛ける「かかりつけ医機能」を持った病院では、診療報酬上の在宅療養支援病院の届出は必須と言えるだろう。
2022年度改定では「在宅療養支援病院(在支病)・在宅療養支援診療所(在支診)の施設基準の見直し」が行われた。在支病とは、患者が住み慣れた地域で安心して療養生活を送れるよう、患家の求めに応じ24時間往診が可能な体制を確保する、または訪問看護ステーションとの連携により24時間訪問看護の提供が可能な体制を確保することで、緊急時に在宅療養を行っている患者が直ちに入院できるなど、必要に応じた医療・看護を提供できる病院のことである。

厚労省によると2020年7月1日現在で在支病は従来型934、機能強化型(連携型)398、機能強化型(単独型)214の合計1546病院と増加傾向になっている。一方、在支診は従来型1万1108、機能強化型(連携型)3302、機能強化型(単独型)205の合計1万4615診療所である。
2022年度改定では地域における24時間往診体制の構築に向けて、機能強化型の在支病・在支診には、他の医療機関や介護施設との連携や24時間体制での在宅医療の提供に、より積極的に関わるように促した。機能強化型在支病の施設基準において改定前は「過去1年間の緊急往診実績が10件以上」だけだったが、改定で「在支診等からの要請で患者の受け入れを行う病床を常に確保し、患者の緊急受け入れの実績が直近1年間で31件以上」「地域包括ケア病棟入院料・入院管理料1または3の届出」という要件が加わった。これら3つのうち、いずれかひとつを満たせば良くなったので地ケア1、3を持つ病院にとっては、ハードルが高かった「緊急往診10件以上」を満たす必要はなくなったので要件緩和と言えよう。なお、「過去1年間の看取りの実績又は超・準超重症児の医学管理の実績いずれか4件以上」の施設基準は変わっていないが、一定数の高齢寝たきり在宅患者がいれば看取り4件以上はクリアできるであろう。

■ WGで在支診と在支病は「望ましい」から「位置付ける」と明確になった

4年前の2018年5月の「第4回在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ」の資料「在宅医療の体制」では、「在宅医療において積極的役割を担う医療機関」として①退院支援、②日常の療養支援、③急変時の対応、④ 看取り――の機能確保が掲げられた。そして、在支診と在支病は、その積極的役割を担うため「自ら24時間対応体制の在宅医療を提供」「他医療機関の支援」「医療、介護、障害福祉の現場での多職種連携の支援」を行う医療機関と位置付けられている。つまり、診療報酬(健康保険法)上だけではなく、第8次医療計画においては、地域医療支援病院などと同様に在支診や在支病が医療圏内で医療法上に位置付けられると思われる。

実際に本年10月31日に開催された「在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ」で「意見の取りまとめ(案)」が示された。そこでは従来の「在宅医療の体制構築に係る指針」と比べて踏み込んだ内容となったのが「在宅医療において積極的役割を担う医療機関」と「在宅医療に必要な連携を担う拠点」である。これまでは計画に「位置付けることが望ましい」だったが、「位置付ける」との記述に改めた。これは在支診と在支病が想定されており、提供状況把握のための指標として機能強化型在支診と同在支病を指標例に加えることも明記されている。 いずれに200床未満病院でかかりつけ医機能を持つ病院は在宅機能の強化が必要となってくる。


【2022. 12. 1 Vol.557 医業情報ダイジェスト】