診療報酬

連携は在宅復帰機能の強い慢性期病院と

地域完結型医療への転換、病床高回転化の変化は慢性期病院も
株式会社メディチュア  代表取締役 渡辺 優

■ 地域完結型医療への転換、病床高回転化の変化は慢性期病院も

病院完結型から地域完結型への転換に対するプレッシャーは、重症度、医療・看護必要度の厳格化、地域包括ケア病棟入院料の院内転棟の制約、回復期リハビリテーション病棟入院料の重症患者割合、療養病棟入院基本料の医療区分2・3の比率など、さまざまな形で強められてきた。このような変化は、病院にとって入退院調整の難易度が飛躍的に上がり、また患者・患者家族は追い出されるといったネガティブな感情を抱く事態を引き起こしている。
 しかし、限られた医療資源を有効に使うため、地域完結型への移行、病床高回転化の流れは今後も続くだろう。それは比較的在院日数の長い療養病床も例外でない。以前180日程度だった療養病床全体の平均在院日数が、直近では131.1日まで短くなっている=グラフ1=。

グラフ 1 療養病床 平均在院日数推移(全国平均)

厚生労働省 病院報告を基に作成

在院日数の短縮は、療養病床における退院調整の重要性を高めた。そのため、病床機能報告(2021年度報告)で、算定している入院料が療養病棟入院基本料のみの施設を対象に、退院調整部門の有無を調べると、半数近くが持っていた=グラフ2=。

グラフ 2 療養病棟入院基本料のみの病院 病床規模別退院調整部門の有無

病床機能報告(2021 年度報告)を基に作成

さらに退院調整部門の有無で施設を分け退院先の割合を比較すると、退院調整部門を有している施設は、終了(死亡退院等)の割合が低く、その代わり、社会福祉施設・有料老人ホーム等に入所する比率などが高くなっていた=グラフ3=。

グラフ 3 療養病棟入院基本料のみの病院 退院調整部門の有無別 退院先割合

病床機能報告(2021 年度報告)を基に作成※ 病床稼働率が20% 未満か120% 以上の病院、または平均在棟日数が計算できない病院は除外

■地域完結型・高回転化に必要な在宅医療への対応

また、グラフ3の対象施設のうち、200床未満の施設について、在宅療養支援病院の届出有無、および退院調整部門の有無の関係を見た=グラフ4=。

グラフ 4 療養病棟入院基本料のみの病院(200 床未満)在宅療養支援病院の届出有無別 退院調整部門の有無割合

病床機能報告(2021 年度報告)を基に作成※ 病床稼働率が20% 未満か120% 以上の病院、または平均在棟日数が計算できない病院は除外

在宅療養支援病院の届出をしている施設は6割以上が退院調整部門を有しているのに対し、届出をしていない施設は4割程度にとどまっている。療養病棟入院基本料の病棟を中心に構成している慢性期病院において、在宅医療に対し積極的な病院ほど、退院調整部門を持つ必要性を認識していると思われる。

慢性期病院では、以前は平均在院日数の長さが特徴的であったように、死亡退院で空いた病床に、転院を待っていた患者が入り、常に満床稼働しているところが珍しくなかった。そのため、退院調整に力を入れる必要も、連携に積極的になる必要もなかった。しかし、地域完結型、高回転化の流れにより、大きく環境は変わりつつある。当然、2024年度の医療介護同時改定では、その連携について、双方向から見直しが入るだろう。このような変化を前向きに捉え、自院のあり方を変化させようとする慢性期病院と連携を深めることが、周辺の急性期病院や開業医、介護施設の生き残りにおいて重要であると考えている。


【2023. 8. 15 Vol.574 医業情報ダイジェスト】