診療報酬
かかりつけ医機能強化は診療報酬で政策誘導
コロナ患者受診拒否は応召義務の正当な事由に該当しなくなった
株式会社MMオフィス 代表取締役 工藤 高■ コロナ患者受診拒否は応召義務の正当な事由に該当しなくなった
新型コロナ感染症パンデミック下において、診療所を中心としたいわゆる「かかりつけ医」機能を持つ医療機関の発熱患者に対する初診拒否がマスコミ報道等で問題視された。なかには明らかな見当違いの報道も散見された。2類感染症に該当するコロナ患者は疑い患者も含めて、待合室が狭い等の理由で「感染症に対応ができない」場合の診療拒否は法的には問題はなかった。「診療に従事する医師は診察治療の求めがあった場合は、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」という「応招(おうしょう)義務」を定めた医師法第19条第1項に規定された「正当な事由」に該当するからだ。
しかし、新型コロナの感染症法上の位置付けが5月8日から見直された。緊急対応が必要であるか否か等、個々の事情を総合的に勘案する必要があるとした上で、患者が発熱や上気道症状を有しているまたはコロナに罹患している、もしくはその疑いがあることのみを理由として診療を拒否することは「正当な事由」には該当しないことになった。
診療所等のかかりつけ医は発熱等の症状を有する患者を受け入れるための適切な準備を行い、それでもなお診療が困難な場合には、少なくとも診療可能な医療機関への受診を適切に勧奨するなどの対応が必要になった。適切な受診勧奨とは「患者に対して対応可能な医療機関を伝えること等」とされている。
しかし、新型コロナの感染症法上の位置付けが5月8日から見直された。緊急対応が必要であるか否か等、個々の事情を総合的に勘案する必要があるとした上で、患者が発熱や上気道症状を有しているまたはコロナに罹患している、もしくはその疑いがあることのみを理由として診療を拒否することは「正当な事由」には該当しないことになった。
診療所等のかかりつけ医は発熱等の症状を有する患者を受け入れるための適切な準備を行い、それでもなお診療が困難な場合には、少なくとも診療可能な医療機関への受診を適切に勧奨するなどの対応が必要になった。適切な受診勧奨とは「患者に対して対応可能な医療機関を伝えること等」とされている。
■ 本年5月にかかりつけ医制度に関する法案が成立した
「家庭医」「ファミリードクター」「プライマリケア医」などさまざまな呼称がある「かかりつけ医」の定義は日本医師会・四病院団体協議会の合同提言では、「なんでも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要なときには専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師」とされてきた。医療法的に明確な定義があったわけではなかったが、本年5月12日に法案が成立した。
【かかりつけ医制度の成立した法案】
- 患者がかかりつけ医機能(身近な地域における日常的な診療、疾病の予防のための措置とその他の医療を行う機能と定義)を十分に理解した上で選択できるよう医療機能情報提供制度を充実させる(2024年6月施行)
- かかりつけ医機能報告制度を創設する(2025年7月施行)
- 個々の医療機関は患者に対してその内容を説明する(2025年4月施行)
法案成立までの議論のプロセスで日本医師会、日本病院会、健康保険組合連合会、財務省のステークホルダー(利害関係者)が、それぞれの立場から「かかりつけ医」の制度についての考え方を公表した。診療側の日医、日病ともに「かかりつけ医機能」は医療機関が自主的に届け出ることが望ましいという考えであった。結果的にはその自己申告という形に落ち着いた。
一方、支払側の健保連はかかりつけ医を認定制にした上で、国民・患者が任意でかかりつけ医1人を登録する仕組みを提案した。かかりつけ医・医療機関に対する診療報酬や保健事業への支払いは今後の検討課題とした。財務省も同様にかかりつけ医の制度化を求めていた。これはイギリスの国営医療保険制度のNHS(Nat ional Healt h Ser v ice)の一般開業医(GP:General Practitioner)のような住民の登録人数に応じた「人頭払い制」(Capitation)のイメージであった。もちろん、日本の医療保険制度はフリーアクセスで外来は出来高払いが基本なので、英国のようなGP制度や人頭払い制度導入は不可能であった。
■ 診療報酬上においては着々とかかりつけ医機能強化が進んでいる
今回の法案においては認定制や登録制の記載はなく、導入は見送られることになった。ただし、医療法上ではそうだが、健康保険法上の診療報酬においては着々と定義づけや機能強化が実施されている。前回2022年改定における「かかりつけ医機能の評価」の「機能強化加算80点の見直し」である。この加算は専門医療機関への受診の要否の判断を含めた初診時の診療機能を評価するもので、初診料及び小児かかりつけ診療料(初診時)に加算できる。
前々回2020年度改定においては①健康診断の受診勧奨及び結果等について健康管理の相談、② 介護・保健・福祉サービスの相談/主治医として介護の意見書の作成、③必要に応じて「専門医・医療機関」を紹介、④夜間・休日の相談対応――の4点を実施していることを「院内掲示」して、必要に応じて患者が持ち帰ることができるようにすることが施設基準として追加された。
前回2022年改定では(イ)患者が受診している他の医療機関及び処方されている医薬品を把握し、必要な服薬管理を行うとともに、診療録に記載すること。なお、必要に応じ、担当医の指示を受けた看護職員等が情報の把握を行うことも可能であること、(ロ)専門医師又は専門医療機関への紹介を行うこと、(ハ)健康診断の結果等の健康管理に係る相談に応じること(ニ)保健・福祉サービスに係る相談に応じること、(ホ)診療時間外を含む、緊急時の対応方法等に係る情報提供を行うこと――が追加された。この「強化加算」のデューティ(義務)増加は加算名称どおりの「かかりつけ医機能強化」になる。
【2023. 9. 1 Vol.575 医業情報ダイジェスト】
前々回2020年度改定においては①健康診断の受診勧奨及び結果等について健康管理の相談、② 介護・保健・福祉サービスの相談/主治医として介護の意見書の作成、③必要に応じて「専門医・医療機関」を紹介、④夜間・休日の相談対応――の4点を実施していることを「院内掲示」して、必要に応じて患者が持ち帰ることができるようにすることが施設基準として追加された。
前回2022年改定では(イ)患者が受診している他の医療機関及び処方されている医薬品を把握し、必要な服薬管理を行うとともに、診療録に記載すること。なお、必要に応じ、担当医の指示を受けた看護職員等が情報の把握を行うことも可能であること、(ロ)専門医師又は専門医療機関への紹介を行うこと、(ハ)健康診断の結果等の健康管理に係る相談に応じること(ニ)保健・福祉サービスに係る相談に応じること、(ホ)診療時間外を含む、緊急時の対応方法等に係る情報提供を行うこと――が追加された。この「強化加算」のデューティ(義務)増加は加算名称どおりの「かかりつけ医機能強化」になる。
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