診療報酬

看護職員処遇改善評価料

過去実績から今後の動向を予測する
株式会社メデュアクト  代表取締役 流石 学
本年10月より看護職員処遇改善評価料が新設される。
看護職員の処遇改善を目的に、10月以降に収入を3%程度(月額平均12,000円相当)引き上げるための仕組みだ。2022年改定において診療報酬本体を+0.20%引き上げた分の財源が、看護職員処遇改善評価料にあてられる。

ただしすべての医療機関が評価されるのではなく、救急搬送件数が年間200件以上もしくは救命救急センター、高度救命救急センター、小児救命救急センターに該当する医療機関が対象となる。また賃金改善の合計額の2/3以上は、基本給または決まって毎月支払われる手当の引き上げを図ること、「賃金改善計画書」「賃金改善実績報告書」を地方厚生局長等に提出すること等が要件になっている。
診療報酬上の評価は「看護職員等の数(保健師、助産師、看護師、准看護師の常勤換算の数)」「延べ入院患者数」から算出する【A】によって、165通りに細分化され、1日あたり点数は1点から340点が設定されている。

看護職員処遇改善評価料1から評価料145までは1点ずつ、評価料146は5点、評価料147から評価料165までは10点ずつ点数が上がっていく。計算式の延べ入院患者数は、直近3ヶ月の1ヶ月あたりの延べ入院患者数の平均値で、毎年3、6、9、12月に地方厚生局長等に届出する。

【A】= (当該保険医療機関の看護職員の数×12,000円×1.165)/(当該保険医療機関の延べ入院患者数×10円)



■区分を決める【A】の傾向は?

2022年改定では紹介割合、逆紹介割合という新しい指標が登場したが、ここでも新たな指標が誕生することになった。
では区分を決める【A】は、どのくらいの値が平均的で、医業収益にどの程度の影響を与えるのだろうか。今回は令和2年度病床機能報告のデータをもとに、救急車の受入件数が年間200件以上の病院を抽出し、看護職員処遇改善評価料にかかる【A】について検証した。
図は【A】の分布である。傾向として【A】が30~70の範囲にあてはまる病院が多い。中央値は48.7で、これは看護職員処遇改善料49(入院1日あたり49点)に該当する。区分が1つ上がるたびに10点上がる、【A】が147.5以上(評価料146~165)はごく一部の病院に限られているようだ。具体例として199床、病床稼働率80%の病院で、施設基準が看護職員処遇改善評価料49だったとすると、同評価料による入院収益は月あたり約230万円になる。



■「細分化」=「施設基準を頻繁に変更」か?

看護職員処遇改善評価料が165区分に細分化されたことには驚いた方も多いのではないだろうか。筆者自身、最初に見たときは目を疑ってしまった。これだけ細分化されてしまうと、3ヶ月ごととはいえ、病床の稼働状況等によって、届出区分が頻繁に変更になるケースが多くなるかもしれない。
前述と同じく199床、病床稼働率80%の病院の場合、評価料145までは区分が1つ変動するごとに入院収益は月あたり5万円程度増減する。「看護職員等の数」「延べ入院患者数」、【A】のいずれの変化も直近3ヶ月で1割以内の場合は区分の変更を行わないことになっているが、急性期病床は稼働率の変動の大きい病院が多い。どの程度の影響が見込まれるかは、今後改めて検証していきたい。
また賃金の改善措置の対象は看護職員等だけでなく、看護補助者、理学療法士など22職種が含まれる。賃上げの対象を看護職員等のみにするのか、他の医療職に広げるのか、各病院で判断のわかれるところだろう。
看護職員処遇改善評価料の新設にあたっては基本的な考え方として「地域でコロナ医療など一定の役割を担う医療機関」に勤務する看護職員等への処遇改善となっているが、必ずしも救急搬送を受入れている病院だけでない。22職種に薬剤師が含まれていないことを問題視する声も上がっており、そもそも論も含め、診療報酬上の評価として安定化するのは、もう少し先になるかもしれない。


【2022. 9. 15 Vol.552 医業情報ダイジェスト】