請求業務

「こころの連携指導料(Ⅰ)及び(Ⅱ)」について運用の留意点

請求業務のポイント解説
株式会社ウォームハーツ 古矢 麻由
 日本は、G7各国においても自殺の死亡率が第1位と深刻な状況であり、国策として「自殺総合対策大綱」に沿って、対策が推進されています。令和4年度改定では、孤独・孤立により精神疾患が増悪するおそれのある患者に対し、かかりつけ医及び精神科又は心療内科医が自治体と連携、指導を行った場合の評価が設けられました。本稿では、その指導料である「こころの連携指導料(Ⅰ)及び(Ⅱ)」について運用の留意点をお伝えいたします。

(Ⅰ)(Ⅱ)共通 要届出
B005-12 こころの連携指導料(Ⅰ) 350点
B005-13 こころの連携指導料(Ⅱ) 500点
下記Point1の対象患者に診療及び指導を行い、患者の同意を得て診療情報の文書を提供した場合に算定。

Q1: こころの連携指導料(Ⅰ)と(Ⅱ)の 違いについて教えて下さい。
A1: 精神科・心療内科以外のかかりつけ医については(Ⅰ)、精神科・心療内科については(Ⅱ)の算定となります。ただし、心療内科・精神科標榜の保険医療機関の内科等の担当医が、他の心療内科・精神科に当該患者を紹介した場合も(Ⅰ)が 算定できます。(令和4年3月31日 疑義解釈その1 問164 )
なお、心療内科・精神科標榜の保険医療機関の心療内科・精神科の担当医が、他の心療内科・精神科に当該患者を紹介した場合(Ⅰ)は 算定できません。 (令和4年3月31日 疑義解釈その1 問163 )

●Point1:対象患者
<(Ⅰ)の場合>
下記のいずれかの外来患者
① 地域社会からの孤立の状況等により、精神疾患が増悪するおそれのある患者
② 精神科若しくは心療内科の担当医による療養指導が必要であると判断された患者
<(Ⅱ)の場合>
紹介元がこころの連携指導料(Ⅰ)を算定し、当該保険医療機関に紹介された外来患者

●Point2:(Ⅰ)紹介が必要とした判断方法は?
SAD Persons スケール、EPDS、PHQ-9 又は
K-6 等によるスクリーニングにより必要の判断を行う。

●Point3:施設基準の有無
(Ⅰ)の施設基準
● 精神科又は心療内科を標榜する保険医療機関との連携体制を構築していること。
● 当該診療及び療養上必要な指導を行う医師は、自殺対策 等に関する適切な研修を受講していること。
(Ⅱ)の施設基準
● 精神科又は心療内科を標榜している保険医療機関
● 当該保険医療機関内に精神保健福祉士が1名以上配置

Q2: 施設基準(Ⅰ)の医師の研修は、具体的にどのようなものがありますか?
A2:現時点、以下の研修が該当します。
  •  厚生労働大臣指定法人・一般社団法人いのち支える自殺対策推進センターが主催する自殺未遂者ケア研修(精神科救急版)又は自殺未遂者ケア研修(一般救急版)
  •  日本臨床救急医学会等が実施するPEECコース
  •  自殺未遂者等支援拠点医療機関整備 事業で各事業者が主催する研修(令和4年3月31日 疑義解釈その1 問162 )

●Point4:算定限度
<(Ⅰ)(Ⅱ)共通>初回算定月から1年を限度に月1回限り算定

●Point5:算定の留意点
<(Ⅰ)>
  • 指導は患者の心身の不調に配慮するとともに、生活上の課題等について聴取する。
  • 2回目以降の診療等は、連携する精神科又は心療内科医から提供された患者に係る診療情報等を踏まえ、適切な診療及び療養上必要な指導に努める。
<(Ⅰ)(Ⅱ)共通>
  • 2回目以降は、あらかじめ定められた方法で、情報共有を行う。(2回目以降、連携する精神科・心療内科医または紹介した医師に必ずしも文書による情報提供は要しない。)
  •  必要に応じて、患者の同意を得た上で、患者に係る情報を市町村等に提供する。

●Point6:カルテ記載
<(Ⅰ)の場合のみ>
患者の生活上の課題等について聴取し、その要点を診療録に記載。


【2022. 5. 1 Vol.543 医業情報ダイジェスト】