組織・人材育成
院長先生の何気ない言動のチカラ
何気ない言動がもたらすチカラについて学んだケース
株式会社メディフローラ 代表取締役 上村 久子
毎日とてつもない暑さが続いている中で原稿を書いております。先日は経口補水液に助けられましたが、皆さまもどうぞご自愛くださいませ。さて、今回はどんどん職員が離れていく院長先生との会話から、何気ない言動がもたらすチカラについて学んだケースをご紹介します。
ケース:
海に面する県にある、海岸近くの整形外科クリニックのお話です。このクリニックは自ら体を動かすことが大好きなA院長が「私と同じくスポーツが好きな人が体のメンテナンスに来てくれるクリニックを目指したい」とこの地に開院したのでした。
ある日、A院長のクリニックのスタッフであるBさん(看護師)から筆者に「助けてください!」と連絡がありました。
Bさん「私は開院の時から勤めています。しかし、開院の時から一緒に働いているスタッフは全員辞めてしまいました。それでも口下手なA院長の医療に対する真摯な思いを信じ、その代弁者としてスタッフとの繋ぎ役になってきましたが、最近の院長先生の言動は酷い!スタッフを大切にしているとは到底思えません。結果、ここ何年も新しいスタッフが3か月と続いていません。人が変わるのには時間がかかることは分かっているので、私から院長先生の改善点は伝え続けていましたが限界を感じています。患者さんも離れており、売上も院長先生の思うような数値でないのでイライラしているのも原因だと思いますが、それにしても手の打ちようがありません。無理なお願いと分かっていますが、一度A院長と話をしてもらえませんか?」
筆者「私とお話をすることで何か変化を起こすことは難しいと思いますが、それでも良ければ院長先生の了承を得たうえでお話を伺いましょう」
それからBさんより「A院長も組織作りに困っており、ぜひ話を聞いてほしい」と返事があり、クリニックの休診日にBさんも同席の上、お話を伺うことになりました。
A院長「理学療法士ってどうしたら言うことを聞いてくれますか?ノルマを達成すれば良いとしか考えていないように見えるのです」
筆者「なるほど。院長先生としては目の前の患者さんに向き合ってほしいのでしょうか。ところで、理学療法士の皆さまはプロとしてどんな医療を提供したいと考えられているのか、聞いたことはありますか?」
A院長「(苦笑いしながらBさんの方を見つつ)…アイツらに『目指す医療』なんていう考え無いんじゃないですかね。とてもそうは見えません」
筆者「どんな理由であろうと資格職である理学療法士を目指した理由があるはずです。一般論ですが、彼らの思いに寄り添った方が組織により良い働きが生まれやすくなりますが、その点についてどうお考えですか?」
A院長「…正直、医師と理学療法士って『格』が違うじゃないですか。こんな事言いたくありませんが、私は国立医学部を出ていて彼らは専門で。どんな勉強をして資格を取ったか知りませんが、目指す医療とか話がお互い成り立たないというか、そう思いませんか?」
この後もとことん他責を繰り返し訴える院長先生の声に耳を傾けてこの日は終了し、その後Bさんから「退職を決めました」という連絡があったのでした。
このケース、どのような感想を持ちましたか?
スタッフが同席しているにも関わらず、一緒に働くスタッフのことを「アイツ」という言葉で表し、同じ医療の資格を有するプロの職業観について「格が違うから語るまでもない」と切り捨てるなど、第三者としてこの発言を聞くと「このリーダーの下では働きたくないな」という感想を抱く人が多いと思います。残念ながらこの院長先生のように自らの言動を省みることが出来ないリーダーは少なくありません。
別のケースで、ある病院で働く看護師長さんが「うちの病棟の看護助手さんは全然言うことを聞かない!」と憤慨していました。そこで看護助手さんにお話を聞くと「あの看護師長、私たち助手のことを名前で呼ばずに『助手さん』って言うのです。一人の人間として尊ばれているとはとても思えません。そんな看護師さんの下で頑張りたいって思えないですよね」とおっしゃっていました。A院長のケースと通じるものがあると思います。
何気なく使用している言葉は自分で気が付きにくいもの。周りにいる人が自分に対して良くない動きを見せたならば、自分の言動を振り返る機会を作ってはいかがでしょうか?このケースから私は、何か問題が起こった場合に他責の方が自責よりも傷つかず簡単ですが、中長期的により良い環境を作りたいならば自分と真剣に対峙することがより大切だと学んだのでした。
【2023. 8. 15 Vol.574 医業情報ダイジェスト】
ある日、A院長のクリニックのスタッフであるBさん(看護師)から筆者に「助けてください!」と連絡がありました。
Bさん「私は開院の時から勤めています。しかし、開院の時から一緒に働いているスタッフは全員辞めてしまいました。それでも口下手なA院長の医療に対する真摯な思いを信じ、その代弁者としてスタッフとの繋ぎ役になってきましたが、最近の院長先生の言動は酷い!スタッフを大切にしているとは到底思えません。結果、ここ何年も新しいスタッフが3か月と続いていません。人が変わるのには時間がかかることは分かっているので、私から院長先生の改善点は伝え続けていましたが限界を感じています。患者さんも離れており、売上も院長先生の思うような数値でないのでイライラしているのも原因だと思いますが、それにしても手の打ちようがありません。無理なお願いと分かっていますが、一度A院長と話をしてもらえませんか?」
筆者「私とお話をすることで何か変化を起こすことは難しいと思いますが、それでも良ければ院長先生の了承を得たうえでお話を伺いましょう」
それからBさんより「A院長も組織作りに困っており、ぜひ話を聞いてほしい」と返事があり、クリニックの休診日にBさんも同席の上、お話を伺うことになりました。
A院長「理学療法士ってどうしたら言うことを聞いてくれますか?ノルマを達成すれば良いとしか考えていないように見えるのです」
筆者「なるほど。院長先生としては目の前の患者さんに向き合ってほしいのでしょうか。ところで、理学療法士の皆さまはプロとしてどんな医療を提供したいと考えられているのか、聞いたことはありますか?」
A院長「(苦笑いしながらBさんの方を見つつ)…アイツらに『目指す医療』なんていう考え無いんじゃないですかね。とてもそうは見えません」
筆者「どんな理由であろうと資格職である理学療法士を目指した理由があるはずです。一般論ですが、彼らの思いに寄り添った方が組織により良い働きが生まれやすくなりますが、その点についてどうお考えですか?」
A院長「…正直、医師と理学療法士って『格』が違うじゃないですか。こんな事言いたくありませんが、私は国立医学部を出ていて彼らは専門で。どんな勉強をして資格を取ったか知りませんが、目指す医療とか話がお互い成り立たないというか、そう思いませんか?」
この後もとことん他責を繰り返し訴える院長先生の声に耳を傾けてこの日は終了し、その後Bさんから「退職を決めました」という連絡があったのでした。
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別のケースで、ある病院で働く看護師長さんが「うちの病棟の看護助手さんは全然言うことを聞かない!」と憤慨していました。そこで看護助手さんにお話を聞くと「あの看護師長、私たち助手のことを名前で呼ばずに『助手さん』って言うのです。一人の人間として尊ばれているとはとても思えません。そんな看護師さんの下で頑張りたいって思えないですよね」とおっしゃっていました。A院長のケースと通じるものがあると思います。
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