組織・人材育成
地域医療連携ってどうやるの?連携のお作法とは
「気持ちの良い、地域の医療機関や介護施設等関係機関との連携」のあり方
株式会社メディフローラ 代表取締役 上村 久子
秋らしい季節になって参りましたね。24年度診療報酬改定に向けた議論の第1弾が終わり、さらに具体的な議論に突入する時期となりました。次年度の改定の落としどころが気になるところですが、今回は「地域医療連携」のご担当となったスタッフの何気ないひと言から、「気持ちの良い、地域の医療機関や介護施設等関係機関との連携」のあり方を考えていきたいと思います。
ケース:
北関東にある地域で行われた「地元の診療所や病院などが集う地域医療連携の会」に参加したクリニック(病院や介護・福祉サービスの事業所も有する法人が母体)のスタッフの皆さまとの振り返りの場で起こったお話です。
その法人では戦略的に地域の医療機関などと連携することで、集患はもちろん患者さんにとって安心安全な医療を地域で担うことを目的とした活動に取り組み始めています。そこで、このクリニックを含めた法人で地域連携を担うチームを組み、そのチームが中心となって地域との交流を積極的に行っていくことになりました。
このチームメンバーでありクリニックで事務を担当するAさんが連携の会に参加されたことをご報告いただいた際に、こんな発言がありました。
Aさん「会では色々な大きな病院や役職の方が参加されていて圧倒されました。帰宅後、私のような役職の無い人にも賞状のような御礼状が届いて驚きました!」
筆者「はじめて他機関との連携の場に参加されて驚かれたのですね。ちなみにこちらからの御礼状はどのようにされたのですか?」
この私の発言の後、何の発言も無くお互いの目を見合うチームメンバー。
筆者「当日はご自分の名刺は持参されたのですよね?名刺交換された後はどうされたのですか?」
Aさん「……もちろん名刺は持っていきました。交換した名刺は名刺ホルダーにしまいました。名刺交換した後って、私のようなものから連絡しても良いのでしょうか?」
Aさん以外も、誰も連携の会で交換した名刺にある連絡先に御礼状などでその後の交流を持とうとした人はいないことが判明したのでした。
筆者「私事ですが、以前、医療従事者に対するシミュレーション教育の最先端を見学するために海外視察へ行った時にこんな経験があります。あるシミュレーション教育で有名な先生にお会いした際に名刺を交換しました。私はとても嬉しくてその日1日の学びを思い返しながら寝る前にパソコンを開くと、その日のうちに御礼のメールがその先生から届いていたのです。私は大変恐縮して、すぐにお返事を致しました。その後分かったことですが、その先生は他の見学者にも名刺を交換した人に全員に御礼のメールを送られていたのです。私は見学で学びを得るだけではなく、見学から帰った後も連絡を取り、情報交流が出来る関係性を築くことが出来ました。私はお仕事や学びにおける交流はとても大切だと思いますので、名刺を頂いた後にはご挨拶をすることをルールとしてはいかがでしょうか?」
この話の後、すぐにチームメンバーは今まで連携先からいただいた名刺を集めてデータベースにすること、そして交流した人に対して御礼をすることに決めたのでした。
このケース、どのような感想を持ちましたか?
連携室での取り組みは皆さまの医療機関でも非常に大切になっていると思いますが、具体的にどのような動きをされているのか、連携先でどのように振る舞っているのか、連携先とより良い関係性を築くためにどのような取り組みを行いチームで共有しているのかといったことは、特に院外との連携を担当されていることもあり、院内のスタッフからは見えにくいものです。今回のように「名刺は頂いたら御礼を送る」という、一般的にビジネスパーソンから見ると当たり前に見えることも、医療従事者というプロ集団の常識かと言われると必ずしもそうでないことも少なくないようです。
連携はその医療機関の「顔」として地域に出ているはずです。その立ち居振る舞いは連携スタッフの評価ではなく、自分の組織に対する評価に直結します。今回は名刺を取り上げましたが、連携先とより良い関係性を築くための一挙手一投足について振り返ってはいかがでしょうか?自分の常識は必ずしも相手にとっても常識とは限りません。「そんなことも教えなければならないのか」ではなく、それぞれの役割を全うするための行動の意味を伝えることで、正しい行動を自分で考え、実行できる人材を育てていきましょう。
【2023. 11. 15 Vol.580 医業情報ダイジェスト】
その法人では戦略的に地域の医療機関などと連携することで、集患はもちろん患者さんにとって安心安全な医療を地域で担うことを目的とした活動に取り組み始めています。そこで、このクリニックを含めた法人で地域連携を担うチームを組み、そのチームが中心となって地域との交流を積極的に行っていくことになりました。
このチームメンバーでありクリニックで事務を担当するAさんが連携の会に参加されたことをご報告いただいた際に、こんな発言がありました。
Aさん「会では色々な大きな病院や役職の方が参加されていて圧倒されました。帰宅後、私のような役職の無い人にも賞状のような御礼状が届いて驚きました!」
筆者「はじめて他機関との連携の場に参加されて驚かれたのですね。ちなみにこちらからの御礼状はどのようにされたのですか?」
この私の発言の後、何の発言も無くお互いの目を見合うチームメンバー。
筆者「当日はご自分の名刺は持参されたのですよね?名刺交換された後はどうされたのですか?」
Aさん「……もちろん名刺は持っていきました。交換した名刺は名刺ホルダーにしまいました。名刺交換した後って、私のようなものから連絡しても良いのでしょうか?」
Aさん以外も、誰も連携の会で交換した名刺にある連絡先に御礼状などでその後の交流を持とうとした人はいないことが判明したのでした。
筆者「私事ですが、以前、医療従事者に対するシミュレーション教育の最先端を見学するために海外視察へ行った時にこんな経験があります。あるシミュレーション教育で有名な先生にお会いした際に名刺を交換しました。私はとても嬉しくてその日1日の学びを思い返しながら寝る前にパソコンを開くと、その日のうちに御礼のメールがその先生から届いていたのです。私は大変恐縮して、すぐにお返事を致しました。その後分かったことですが、その先生は他の見学者にも名刺を交換した人に全員に御礼のメールを送られていたのです。私は見学で学びを得るだけではなく、見学から帰った後も連絡を取り、情報交流が出来る関係性を築くことが出来ました。私はお仕事や学びにおける交流はとても大切だと思いますので、名刺を頂いた後にはご挨拶をすることをルールとしてはいかがでしょうか?」
この話の後、すぐにチームメンバーは今まで連携先からいただいた名刺を集めてデータベースにすること、そして交流した人に対して御礼をすることに決めたのでした。
このケース、どのような感想を持ちましたか?
連携室での取り組みは皆さまの医療機関でも非常に大切になっていると思いますが、具体的にどのような動きをされているのか、連携先でどのように振る舞っているのか、連携先とより良い関係性を築くためにどのような取り組みを行いチームで共有しているのかといったことは、特に院外との連携を担当されていることもあり、院内のスタッフからは見えにくいものです。今回のように「名刺は頂いたら御礼を送る」という、一般的にビジネスパーソンから見ると当たり前に見えることも、医療従事者というプロ集団の常識かと言われると必ずしもそうでないことも少なくないようです。
連携はその医療機関の「顔」として地域に出ているはずです。その立ち居振る舞いは連携スタッフの評価ではなく、自分の組織に対する評価に直結します。今回は名刺を取り上げましたが、連携先とより良い関係性を築くための一挙手一投足について振り返ってはいかがでしょうか?自分の常識は必ずしも相手にとっても常識とは限りません。「そんなことも教えなければならないのか」ではなく、それぞれの役割を全うするための行動の意味を伝えることで、正しい行動を自分で考え、実行できる人材を育てていきましょう。
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2025-05-27「疑義解釈資料の送付について(その26)」を追加しました
2025-05-26
「疑義解釈資料の送付について(その25)」を追加しました
2025-05-03
「疑義解釈資料の送付について(その24)」を追加しました
[お知らせ]
2025-05-07【セミナーのご案内】新社会システム総合研究所主催「ミクロとマクロのデータ分析による エビデンスある病院経営戦略」
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『九州医事新報/中四国・関西医事新報/東海・関東医事新報』で「HMレビュー」が紹介されました
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