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在宅療養支援病院、在宅療養支援診療所の届出状況の地域差は?

高齢者人口あたりの施設数は?
株式会社メデュアクト  代表取締役 流石 学
2024年度から第8次医療計画が始まる。昨年11月の第8次医療計画等に関する検討会では、「在宅医療の体制構築に係る指針」が示された。以下は指針の冒頭部分の抜粋である。

多くの国民が自宅等住み慣れた環境での療養を望んでいる。高齢化の進展に伴い疾病構 造が変化し、誰もが何らかの病気を抱えながら生活をするようになる中で、「治す医療」から「治し、支える医療」への転換が求められている。在宅医療は、高齢になっても病気になっても障害があっても、住み慣れた地域で自分らしい生活を続けられるよう、入院医療や外来医療、介護、福祉サービスと相互に補完しながら、患者の日常生活を支える医療であり、地域包括ケアシステムの不可欠の構成要素である。
また、今後増大する慢性期の医療ニーズに対し、在宅医療はその受け皿として、さらに看取りを含む医療提供体制の基盤の一つとして期待されている。
 
国内全体の高齢化が進む中で、慢性期の医療ニーズの受け皿として在宅医療が期待されており、在宅医療の提供体制をいかに構築するかが各地域に求められる。第8次医療計画の議論では、在宅医療の提供体制の「量的拡充」が挙げられている。

2022年改定では、地域包括ケア病棟入院料の施設基準として、200床未満の病院では在宅療養支援病院の届出もしくは敷地内への訪問看護ステーションの設置のいずれかを満たさなければならなくなった。診療報酬による更なる誘導も想定されるため、いかに対応するかを該当する医療機関は準備しておく必要がある。

■高齢者人口あたりの施設数は?

在宅医療の担い手である在宅療養支援病院、在宅療養支援診療所の届出数は現状どのようになっているのだろうか。
今回は地方厚生局が公表している1月1日時点の施設基準届出状況(東北厚生局、関東甲信越厚生局の管轄は昨年12月1日時点)より、75歳人口10万人あたりの在宅医療支援病院、在宅医療支援診療所の施設数を検証した。

まず在宅療養支援病院および在宅療養支援診療所が最も多いのは徳島県だった。徳島県は他と比較して在宅療養支援病院が顕著に多いようだ。次いで大阪府、広島県、長崎県、鹿児島県、兵庫県の順になっており、西日本エリアで充実していることがわかる。
逆に少ないのは、下から順番に青森県、秋田県、新潟県、岩手県、高知県だった。東日本全体が少ない傾向にあるが、東北エリアは特に少ないようだ。
機能強化型(単独型、連携型)とその他の割合も地域間で差があることがわかる。在宅療養支援病院、在宅療養支援診療所に占める機能強化型の割合は、千葉県が47.6%で最も高かった。40%を超えるのは、東京都、神奈川県、埼玉県、三重県の5都県となっている。関東エリアは人口あたりの届出施設数が相対的に少ないものの、機能強化型の割合は高い傾向にあるようだ。

■増える需要をいかに吸収するか

訪問診療の受療率は年齢とともに増加する。当然ながら高齢化に伴い、在宅医療の需要は今後ますます増加する見込みだ。
在宅医療の多くは、診療所を中心とした小規模な組織体制で提供されている。2 4 時間対応、急変時の対応や看取りを行うための連携体制の構築が求められるが、現状の供給を超える需要をいかに吸収するかが今後の課題になる。

増える需要を吸収するために、医療機関間、事業所間の連携やICT化等による対応力強化、これまで訪問診療を行っていない医療機関や新規開業の医療機関の訪問診療への新規参入等により、地域ごとの体制整備を進めていく必要がある。
課題解決にあたっては地域事情を避けて通ることはできない。前述の指針においても、訪問診療を提供している医療機関の地域間のばらつきが指摘されている。

今回の検証では、最も多い徳島県と最も少ない青森県では3.7倍の差があることがわかった。また同じ四国エリアでも、高知県は特に少なく、徳島県の1/3に満たない。高知県といえば、人口あたりの療養病床が最も多い県である。潤沢な療養病床の存在が、在宅医療の体制構築に繋がっていない可能性がある。これらの地域差は、高齢化の進展状況やそもそもの医療提供体制など、地域ごとの背景により生じた差ともいえるだろう。
第8次医療計画もあり、在宅医療の提供体制構築の動きは、これから数年で一層活発化する可能性が高い。市場環境の変化にどう対応するのか。自院の戦略、立ち位置を再確認しておきたい。

75歳以上人口10万人あたりの在宅療養支援病院、在宅療養支援診療所の施設数



【2023. 4. 1 Vol.565 医業情報ダイジェスト】