病院

誤嚥性肺炎や尿路感染症は地ケアでの受け入れ推進か

同時改定に向けた医療・介護の意見交換会が開催された
株式会社MMオフィス 代表取締役 工藤 高

■ 同時改定に向けた医療・介護の意見交換会が開催された

2024年は2年に1回の診療報酬改定と3年に1回の介護報酬改定が6年に1回重なる年である。診療報酬は中央社会保険医療協議会(中医協)総会、介護報酬は社会保障審議会(社保審)介護給付費分科会において改定内容が検討される。訪問看護サービスや訪問リハビリなど両保険にまたがるサービスも多く、同時改定ではその整合性が問われることになる。そのため3月15日に第1回目となる「2024年度の同時報酬改定に向けた意見交換会」が開催された。今回を含めて3回の開催が予定されている。

意見交換会の目的は「今後の健康危機管理やポスト2025を見据えた際の課題や方向性の共有」で、「具体的な報酬に関する方針を決めない」とされている。報酬は中医協、介護給付費分科会で決定されるわけだが、これからの議論の方向性に大きな影響を与えることは間違いない。テーマは①地域包括ケアシステムのさらなる推進のための医療・介護・障害サービスの連携、②リハビリテーション・口腔・栄養、③要介護者等の高齢者に対応した急性期入院、④高齢者施設・障害者施設等における医療、⑤認知症、⑥人生の最終段階における医療・介護、⑦訪問看護、⑧薬剤管理――となっている。今回は①~③、4月開催予定の第2回で④~⑤、5月開催予定の第3回で⑥~⑦を中心に議論し、⑧は各回に盛り込まれる予定だ。

■ 介護側から示された「医療は敷居が高い」は永遠のテーマ

① 医療・介護・障害サービスの連携----では
主な課題として「医療・介護連携」「医療・介護DX」「主治医と介護支援専門員(ケアマネジャー)の連携」が示された。「医療・介護連携」では、医療においては「より『生活』に配慮した質の高い医療」を、介護においては「より『医療』の視点を含めたケアマネジメントを行うための必要な情報提供や連携」を課題にあげた。とくに医療・介護連携推進が求められているが、これは同時改定全体に求められている共通テーマである。
2000年に介護保険が創設されてから23年になるが、当初からケアマネ側から連携にあたって、「医療機関は敷居が高い」という言葉が聞かれた。病院において医療・介護連携で重要なキーパーソンは社会福祉士(MSW)になるが、現在は全国的に採用しにくい職種となっている。「主治医と介護支援専門員の連携」においては、ケアマネが医療機関との情報共有に負担を感じており、とくに「医療機関に時間を取ってもらうことが困難」という永遠のテーマが厚労省から示された。

② リハビリテーション・口腔・栄養----では
一体的な運用によって、効果的な治療・重症化予防、自立支援につながることが期待されるとの見方が示されている。ただし、問題点として「多職種による適切な評価が行われず、治療期間の延長につながっていたり、入院前に経口摂取できていた誤嚥性肺炎患者の約4割が入院1カ月後に3食経口摂取を再開できていない実態がある」と、的確に対象者を把握し、速やかに評価・介入する必要があるとしている。
これらを踏まえて、検討の視点では「リハビリ・口腔・栄養の一体的な取り組み」「医療保険による急性期・回復期リハビリと介護保険による生活期リハビリの円滑な移行の促進」「適時・適切なリハビリの提供」「医療機関や介護施設在宅での口腔管理と栄養管理」等を掲げている。

■ 誤嚥性肺炎や尿路感染症等を地ケア受け入れ推進にはどうしたら良いのか

③ 要介護者等の高齢者に対応した急性期入院医療----では
「高齢者にとって一般的な疾患である誤嚥性肺炎や尿路感染症等に対する入院医療を急性期一般病棟が担っている実態があり、このような医療機関が提供しうる医療の内容と、要介護者等の高齢者が求める医療の内容に乖離がある可能性」を指摘した。問題提起として「生活機能が低下した高齢者に一般的である誤嚥性肺炎をはじめとした疾患について、地域包括ケア病棟や介護保険施設等での受入を推進するためにどのような方策が考えられるか」とした。

高齢者の重症ではない誤嚥性肺炎や尿路感染症等については急性期一般入院料1(7対1看護配置)等の一般病棟での治療ではなく、特定入院料の地ケア病棟での治療を促すものだ。これについては2022年診療報酬改定において、地ケア2・4における「院内転棟割合が6割以上」だと入院料15%減算ルール導入で方向性は示されていた。減算回避のためには直接入院を4割以上にする必要がある。その方策は白内障手術や内視鏡的大腸ポリープ摘出術などの定型的な疾患や入院が長引く傾向がある軽度の誤嚥性肺炎や尿路感染症等を地ケア病棟へ直接入院で行なっているか、だ。前回改定が“地ケア直接入院トライアル”とすれば、2024年同時改定が誤嚥性肺炎や尿路感染症等の直接入院推進策の本番というわけか。


【2023. 5. 1 Vol.567 医業情報ダイジェスト】