病院
看護補助者の処遇改善評価料が必要
病院で最も採用困難な職種が「看護補助者」
株式会社MMオフィス 代表取締役 工藤 高■ 病院で最も採用困難な職種が「看護補助者」である
仕事で全国行脚をしていると、新型コロナ感染症の2類相当から5類への変更によって需要が大きく回復したホテルや飲食店などのサービス業において明らかな人手不足が生じていることを実感する。2020年からの3年間に渡るコロナ禍でサービス業種解雇等により、逆に需要を拡大したIT関連製造業、食品製造関連にともなうデリバリーなどの他業種への流出があったと思われる。その影響は、病院における最も採用困難な職種が「看護補助者」になっていることにもつながる。看護補助者を募集しても、都会では他に賃金が高い仕事があり、地方ではそもそも働き手がいないために応募がない。
診療報酬において看護補助者は「看護師長及び看護職員の指導の下に、原則として療養生活上の世話(食事、清潔、排泄、入浴、移動等)、病室内の環境整備やベッドメーキングのほか、病棟内において、看護用品及び消耗品の整理整頓、看護職員が行う書類・伝票の整理及び作成の代行、診療録の準備等の業務を行う」とされている。そもそも療養病棟や回復期リハビリ病棟において看護補助者は急性期一般入院料や地域包括ケア病棟のように加算ではなく施設基準上のマスト(義務)配置になっている。
重症度、医療・看護必要度のADL(日常生活動作)や認知、せん妄等を評価したB項目得点が高い病院は、看護職員から看護補助者への「タスクシフティング」(業務の移管)が必要になる。看護職員でなければできない注射や処置等の「業務独占」以外の介護中心の業務が多いからだ。しかし、看護補助者が募集しても来ないというジレンマに陥っている。
診療報酬において看護補助者は「看護師長及び看護職員の指導の下に、原則として療養生活上の世話(食事、清潔、排泄、入浴、移動等)、病室内の環境整備やベッドメーキングのほか、病棟内において、看護用品及び消耗品の整理整頓、看護職員が行う書類・伝票の整理及び作成の代行、診療録の準備等の業務を行う」とされている。そもそも療養病棟や回復期リハビリ病棟において看護補助者は急性期一般入院料や地域包括ケア病棟のように加算ではなく施設基準上のマスト(義務)配置になっている。
重症度、医療・看護必要度のADL(日常生活動作)や認知、せん妄等を評価したB項目得点が高い病院は、看護職員から看護補助者への「タスクシフティング」(業務の移管)が必要になる。看護職員でなければできない注射や処置等の「業務独占」以外の介護中心の業務が多いからだ。しかし、看護補助者が募集しても来ないというジレンマに陥っている。
■ 介護医療院とそれ以外の病棟の看護補助者給料が違うという矛盾
日本看護協会によれば2019年度の看護補助者の年度内離職率は正規雇用25.6%、非正規雇用32.9%、正規・非正規合算で29.9%と非常に高い。退職理由も「思っていた業務内容と異なる」が最も多く、3K(きつい、汚い、危険)職種になっている。「『危険』は感染症リスク」になるが、これに「給料安い」を加えると4Kになる。厚労省によれば、看護補助者の平均年収は約303万円(平均年齢46.8歳、賞与込み)で、他の介護系職種と比較しても30万〜80万円ほど低い。
病院にとって悩ましいのは院内に介護医療院がある場合、介護職員(医療保険では看護補助者)が医療保険対象の病棟にはない「介護職員処遇改善加算」の対象になることだ。これは介護サービスで働く介護職員のためのキャリアアップの仕組みを作ったり、職場環境の改善を行ったりした事業所に対する賃金改善の加算である。処遇改善加算は加算Ⅰ:月額3. 7万円相当から3段階あり、キャリアパス要件、職場環境等要件で加算額は変わる。
一方、院内に医療保険対象の他病棟があり、これらで働く看護補助者は介護職員処遇改善加算の対象とならない。同じ介護業務だが、病棟が違うと給与が変わるという問題が発生してしまう。病院側の対応は①介護医療院の看護補助者だけを介護職員処遇改善加算分給与を引き上げる、②医療保険の病棟に勤務する看護補助者も病院持ち出しで引き上げる、③給与格差が出るので介護職員処遇改善加算の届出をしない――の三者択一になる。
病院にとって悩ましいのは院内に介護医療院がある場合、介護職員(医療保険では看護補助者)が医療保険対象の病棟にはない「介護職員処遇改善加算」の対象になることだ。これは介護サービスで働く介護職員のためのキャリアアップの仕組みを作ったり、職場環境の改善を行ったりした事業所に対する賃金改善の加算である。処遇改善加算は加算Ⅰ:月額3. 7万円相当から3段階あり、キャリアパス要件、職場環境等要件で加算額は変わる。
一方、院内に医療保険対象の他病棟があり、これらで働く看護補助者は介護職員処遇改善加算の対象とならない。同じ介護業務だが、病棟が違うと給与が変わるという問題が発生してしまう。病院側の対応は①介護医療院の看護補助者だけを介護職員処遇改善加算分給与を引き上げる、②医療保険の病棟に勤務する看護補助者も病院持ち出しで引き上げる、③給与格差が出るので介護職員処遇改善加算の届出をしない――の三者択一になる。
■ 診療報酬版の介護職員処遇改善加算が必要
院内で①だと不公平感がでる。②ではコロナ禍で厳しい医業利益率の中でより病院経営を圧迫することになる。コロナ病棟を確保していた急性期病院では病床稼働が下がって医業利益はマイナスだが、空床補償等のコロナ補助金を雑収入で加えた経常利益は大幅黒字に転換している。コロナ補助金によって過去最高益を出した病院グループや国公立病院も経営が好転している。ただし、介護医療院を持つ病院は療養型や一般病棟の看護配置は低いケアミックス型病院であることが多い。コロナ病床を確保していないケースが多く、経営利益も厳しい状態にある。「無い袖は振れない」わけだ。③だと低賃金のままで、ますます人が集まらない。
この問題について筆者は従来から「診療報酬版の処遇改善加算を設けない限り、病院の看護補助者採用はさらに困難になっていくのは確実だ」(医学通信社、月刊保険診療2019年9月号の連載)と述べている。昨年10月臨時改定の「看護職員処遇改善評価料」は看護職員1人あたり1万2000円相当の賃金配分が診療報酬から支給されるものであった。それを看護補助者、理学療法士、作業療法士そのコメディカルである職員(非常勤職員を含む)等に配分して良いというものだった。しかし、その場合でも財源は変わらないため多くの職種人数に配分するほど、1人あたりの取り分は減少する。2024年同時改定に向けて日本病院団体協議会も『病棟における介護専門職の評価』を2024年診療報酬定に係る要望書で提出しているが、もはや看護補助者の採用については病院の経営努力ではどうしようもない段階だと思う。
【2023. 6. 1 Vol.569 医業情報ダイジェスト】
この問題について筆者は従来から「診療報酬版の処遇改善加算を設けない限り、病院の看護補助者採用はさらに困難になっていくのは確実だ」(医学通信社、月刊保険診療2019年9月号の連載)と述べている。昨年10月臨時改定の「看護職員処遇改善評価料」は看護職員1人あたり1万2000円相当の賃金配分が診療報酬から支給されるものであった。それを看護補助者、理学療法士、作業療法士そのコメディカルである職員(非常勤職員を含む)等に配分して良いというものだった。しかし、その場合でも財源は変わらないため多くの職種人数に配分するほど、1人あたりの取り分は減少する。2024年同時改定に向けて日本病院団体協議会も『病棟における介護専門職の評価』を2024年診療報酬定に係る要望書で提出しているが、もはや看護補助者の採用については病院の経営努力ではどうしようもない段階だと思う。
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