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なぜ紹介受診重点医療機関入院診療加算の算定は0件なのか

医療法と診療報酬改定は別なのだが勘違いは多い
株式会社MMオフィス 代表取締役 工藤 高

■ 医療法と診療報酬改定(健康保険法)は別なのだが勘違いは多い

医療機関が保険診療を行うにあたって遵守する法律は①医師法、②医療法、③健康保険法(診療報酬)となる。①医師法は第17条に「医師でなければ、医業をなしてはならない」と規定されており、医師の資格とその権利義務について定めた身分法である。
②医療法の目的は「医療を提供する体制の確保を図り、もって国民の健康の保持に寄与する」になる。病院、診療所等の適切な配置、その開設手続き、人員配置、構造設備、管理体制、運営管理に対する監督、広告規制、医療法人、公的医療機関の役割などを定めた医療機関のハード、ソフトに関する様々な規制法である。また、地域医療計画で二次医療圏ごとの基準病床数を決めるなど、わが国の医療提供体制を定めているのも医療法になる。③ 健康保険法は保険給付に関する法律であり、診療報酬点数もこの法律に基づいている。医療法改正と診療報酬改定(健康保険法)は別であるが混同している場合が多い。

■本年10月から外来機能報告制度が開始される

医療法においては第8次医療計画(2 02 4〜2029年度まで)が検討されている。第6次計画(2013~2017年度)までは、5年ごとに改定されていたが、直近の第7次医療計画(2018~2023年度)からは6年ごとに改定されることになった。
第8次では2022年度改定でも重点課題であった「医師の働き方改革」に加えて、2022年度からの新型コロナ感染症パンデミックを受けて医療計画に新興感染症への対応を位置付ける改正が盛り込まれている。

さらに医療提供体制改革を目指す「地域医療構想」を進める一環として、統廃合などで病床を削減した医療機関を財政支援する財政制度の恒久化や外来医療機能の明確化、医師の業務範囲を見直す「タスクシフト」などが第8次医療計画で予定されている。
外来医療については地域の医療機関の外来機能の明確化・連携に向けて、データに基づく議論を地域で進めるため、本年度から医療機関が都道府県に外来医療の実施状況を報告する「外来機能報告」が開始される。そして外来機能報告を踏まえ、「地域の協議の場」において、外来機能の明確化・連携に向けて必要な協議を行うことになった。

これらを踏まえて協議促進や患者の分かりやすさの観点から、「医療資源を重点的に活用する外来」を地域で基幹的に担う医療機関である「紹介受診重点医療機関」を明確化することになった。これは本年10月より開始される外来機能報告に基づいて、地域で基幹的に高額医療機器使用、抗がん剤治療、放射線療法、短期滞在手術、紹介外来等のいわゆる「医療資源重点外来」を担うものとして手上げした医療機関になる。強制ではなく、あくまでも任意となる。

■ 紹介受診重点が算定できるのは都道府県に公表された医療機関が対象

これに先立ち2022年診療報酬改定では、従来の選定療養費対象医療機関に特定機能病院、一般病床20 0床以上の地域医療支援病院のほか新たに一般病床200床以上の紹介受診重点医療機関を加えた。本年10月からは定額負担の最低徴収金額が初診時5,000円以上は7,000円以上に、再診時2,500円以上は3,000円以上に義務化される。その外来減収分の補填として、「紹介受診重点医療機関入院診療加算」(入院初日800点)が2022年診療報酬改定で新設された。
急性期病院には2022年改定で全身麻酔年間2,000件以上(そのうち緊急手術350件以上)等の高いハードルである「急性期充実体制加算」が新設された。本年6月中旬の地方厚生局からのデータでは全国120病院強の届出となっている。700床規模病院で加算分だけで3.5億円程度の大増収となるため、高度急性期病院が目指すべき高いハードルである。

一方、現時点で「紹介受診重点医療機関入院診療加算」を算定する病院はゼロである。理由は「外来医療を提供する基幹的な病院として都道府県により公表されたものに限る」という要件があり、それは外来機能報告制度をふまえて公表は年度末か来年度以降になるからだ。ただし、診療報酬改定は2年に1回のため2022年度改定で同加算を創設しておかないと2023年度からの点数評価に間に合わない。地域医療支援病院同様に医療法で指定して、その後に診療報酬で評価する。このように医療法改正(外来機能報告制度)と診療報酬改定(同加算)はお互いに「車の両輪」のような機能で外来医療提供体制を法律と収入的側面から構築していくわけだ。


【2022. 8. 1 Vol.549 医業情報ダイジェスト】