病院

看護外来に積極的に取り組む

最も多い看護外来はストーマ・スキンケア
株式会社MMオフィス 代表取締役 工藤 高

■最も多い看護外来はストーマ・スキンケア

2020年春から始まった新型コロナウイルス感染症は第一波から現在の第七波まで3年以上も生活様式に制限を与えている。医療機関経営では病院・診療所ともに大きく外来患者数減となっている。第一波当時は診療科目では小児科、耳鼻咽喉科、整形外科の外来患者減少が大きかった。一方、当然であるが、外来慢性維持透析の患者には受診抑制は起きていない。インスリン、ストーマ(人工肛門)等の看護外来対象患者も同様であった。
患者さんのQOL(生活の質)向上と外来患者減による医療機関収入減対策として、看護外来に取り組む医療機関が多くなっている。日本看護協の「2021年病院看護実態調査」によると36.9%の病院が看護外来を開設しており、50 0床以上病院では90.3%であった。開設している看護外来の種類(複数回答)は①ストーマ・スキンケア69.1%、②糖尿病(フットケア)61.7%、③がん看護相談38.8%、④糖尿病(フットケア以外)37.2%、⑤助産師外来34.3%の順であった。

■在宅療養指導料と在宅療養指導管理料の混同

多くは通常の外来受診日の流れの中でストーマやフットケアなどの看護師による指導などを行い、所定の要件等を満たせば在宅療養指導料などの診療報酬を算定する。看護外来の代表的な点数が下記(1)(2)になる。
(1)在宅療養指導料 170点(届出不要)
看護師によるインスリン、ストーマ、バルン等への30分以上の指導(看護師の研修要件なし、准看護師は算定不可)
(2)糖尿病合併症管理料 170点(フットケア)
医師または看護師の30分以上の指導 (看護師の研修要件あり)

前述の①ストーマ・スキンケア、④糖尿病(フットケア以外)に該当するのが(1)在宅療養指導料である。在宅自己注射指導管理料などの「在宅療養指導『管理料』」と名前が似ているので混同しがちだ。(1)在宅療養指導料は「在宅」となっているが、点数表の区分は「在宅医療」の項目ではなく「医学管理等」の項目になっている。看護師単独の30分以上の指導を評価したもので、外来患者と入院患者については退院時に算定可能である。ただし、地域包括ケア病棟や回復期リハビリ病棟等の最初から医学管理料が包括された病棟では算定ができない。
 
算定対象は①在宅療養指導管理料(C100〜C112)を算定している患者または②管理が必要な器具(人工肛門、人工膀胱、気管カニューレ、気管カテーテル、ドレーン等)の装着患者になる。前回2020年度改定で医師の指示事項のカルテ記載は不要になったため、看護師判断で実施可能になった。「医師の働き方改革」でますます重要度が増したと言えるのが在宅療養指導料であり、患者への説明業務の一部を看護師へタスクシフトすることを評価している。届出は不要であり、診療所でも看護師がいれば算定可能である。
②糖尿病(フットケア)が(2)糖尿病合併症管理料であり、こちらは看護師に研修要件があり、届出制となっている。生活習慣病には治療だけではなく、患者さんへの看護師によるきめ細やかな指導が必要であり、医療機関として看護外来への積極的な取り組みが求められている。

■ 人工透析実施医療機関では糖尿病透析予防指導が必要

透析予防に関して診療報酬上の評価では「糖尿病透析予防指導管理料」350点/月がある。医師と看護師または保健師と管理栄養士という3職種による透析予防診療チームを評価したものだ。糖尿病の患者で医師が透析予防に関する指導の必要性があると認めた外来患者に対して、当該保険医療機関の上記3職種が共同して必要な指導を行った場合に、月1回に限り算定できる。対象はHbA1cがJDS値で6.1%以上(NGSP値で6.5%以上)または内服薬やインスリン製剤を使用しており、糖尿病性腎症第2期以上の患者となっている。同管理料はあくまでも透析予防を目的にしているので、すでに透析療法を行っている患者は対象外になっている。

人工透析を積極的に実施している医療機関において、糖尿病透析予防指導管理料を届出して実施していないケースが散見される。それは透析予防という「医療の質」の観点からはいかがなものだろうか。性悪説でうがった見方をすれば透析導入の指標が低いと言われかねない。患者さんのQOL向上のためには透析予防を積極的に行うことが透析実施医療機関としての重要なミッションであろう。


【2022. 9. 15 Vol.552 医業情報ダイジェスト】