組織・人材育成
人事考課の基本と人材マネジメント
人事考課は被考課者の職務行動を評価する
株式会社To Doビズ 代表取締役 篠塚 功
今年4月に役職に就いて新たに部下を持ち人事考課の考課者となった指導職等を集めて、6月に丸2日間の新任考課者研修会を行いました。この新人考課者たちは10月に初めて部下の人事考課を行ったわけです。
この法人では、新任考課者研修のフォローアップ研修を11月に行っています。法人の規模が大きく、新任考課者が毎年40名規模で誕生するため、ここまでの研修体制が必要なのだと思われますが、できれば中小病院でも、このような形が望ましいと考えます。なぜなら、指導職がまだ部下のマネジメントに慣れていない新鮮な時期に人事考課の理解を深めることは、人材マネジメントの力をつける上で有効であると考えるからです。そこで今回は、人事考課の基本の1つを例として人材マネジメントについて考えます。
この法人では、新任考課者研修のフォローアップ研修を11月に行っています。法人の規模が大きく、新任考課者が毎年40名規模で誕生するため、ここまでの研修体制が必要なのだと思われますが、できれば中小病院でも、このような形が望ましいと考えます。なぜなら、指導職がまだ部下のマネジメントに慣れていない新鮮な時期に人事考課の理解を深めることは、人材マネジメントの力をつける上で有効であると考えるからです。そこで今回は、人事考課の基本の1つを例として人材マネジメントについて考えます。
人事考課は被考課者の職務行動を評価する
人事考課に「院内外で開催される勉強会・研修会等に参加している」という考課要素があったとします。この考課要素でSからDの5段階評価においてA評価(期待する行動を上回る)を付けた理由を考課者に尋ねると、「積極的に研修会に参加していたから」と答える人がいます。果たして、この答えは、人事考課の基本である「人事考課は被考課者の職務行動を評価する」ということを守っていると言えるでしょうか。答えはNoです。
職務行動とは、人事考課の対象となる事実のことで、通称、「評価事実」という言い方をしています。「積極的に」は事実ではなく、考課者のイメージでしかありません。「彼は熱心に仕事に取り組んでいた」「彼は上司への報告が不足していた」といった情報は、すべて評価事実とは言えません。
研修会の参加を事実として捉えるとすれば、院内の感染管理と医療安全の研修会に各1回参加したとか、外部で開催された褥瘡看護の研究会に参加した、小児看護の研究会で発表したといったことが評価事実になります。Aを付ける根拠としては、「研究会で発表することは上位者に求められていることであり、それをしたのでA評価とした」というように答えてもらわなければならなかったわけです。
人は、たった1回のことでも印象に残ると先入観を持ってしまいます。たった1回、業務がものすごく忙しい中、報告が漏れてしまったにも関わらず、その報告漏れが考課者の印象に深く残ると、「上司への報告が不足していた」となってしまうわけです。このように、考課者自身は評価事実を基に評価をしていると思っていても、実際には、先入観やイメージで評価をしてしまっているのではないかと危惧します。この程度の部下の観察では、部下との信頼関係を築くことはできません。この上司は、自分のことをたった1回のミスで決めつけ、よく見ていてくれないと捉えられてしまうからです。部下と良好な関係を築いて人材マネジメントを行うためには、日常から部下の職務行動を観察し、事実情報を集めなければなりません。先入観を排除し、正しい評価事実を集めることが、人材マネジメントの基本と言っても過言ではないでしょう。
もう1点、誤った評価をしてしまう事例を考えてみましょう。例えば、「Aさんは仕事を終えた後、お酒の好きな上司に付き合ってお酒を飲みに行った」というのは評価事実でしょうか。これは、時間外のことで、しかも仕事とは関係ないことですから、評価事実ではありません。しかし、実際の人事考課においては、無意識のうちに評価事実にしている場合が見受けられます。コミュニケーションに関する考課要素でC評価を付けた理由を確認すると、「彼はいつもお酒の誘いを断るから」と答える考課者が昔はいました。今はさすがにそのように答える考課者はいないと思いますが、考課者の深層意識の中には、時間外のこととは言え、自分の誘いを断る部下と応じる部下では、評価に違いが出ているものと危惧します。このような視点で部下を評価していたのでは、真に優秀な人材を見逃しかねないでしょう。
最後の質問です。「Aさんは、毎朝30分前に出勤し、看護記録を確認して患者さんの状態を把握している」というのは、評価事実と言えるでしょうか。これも時間外のことですから、評価事実ではありません。万が一、このことを評価すれば、仕事に関する行動として時間外労働手当を支給しなければなりません。あくまでも本人の意思による時間外の行動であり、評価事実ではないという取り扱いをすべきと考えます。
評価事実1つ取り上げても、人材マネジメントや労務管理において重要なことが含まれていると気づきます。まずは評価事実とは何かを理解し、日常の観察を怠ることなく適切な事実を捉え評価し、部下の能力を正しく把握することで、部下との信頼関係も作られ人材マネジメントを行うことができると考えます。
【2023. 12. 1 Vol.581 医業情報ダイジェスト】
職務行動とは、人事考課の対象となる事実のことで、通称、「評価事実」という言い方をしています。「積極的に」は事実ではなく、考課者のイメージでしかありません。「彼は熱心に仕事に取り組んでいた」「彼は上司への報告が不足していた」といった情報は、すべて評価事実とは言えません。
研修会の参加を事実として捉えるとすれば、院内の感染管理と医療安全の研修会に各1回参加したとか、外部で開催された褥瘡看護の研究会に参加した、小児看護の研究会で発表したといったことが評価事実になります。Aを付ける根拠としては、「研究会で発表することは上位者に求められていることであり、それをしたのでA評価とした」というように答えてもらわなければならなかったわけです。
人は、たった1回のことでも印象に残ると先入観を持ってしまいます。たった1回、業務がものすごく忙しい中、報告が漏れてしまったにも関わらず、その報告漏れが考課者の印象に深く残ると、「上司への報告が不足していた」となってしまうわけです。このように、考課者自身は評価事実を基に評価をしていると思っていても、実際には、先入観やイメージで評価をしてしまっているのではないかと危惧します。この程度の部下の観察では、部下との信頼関係を築くことはできません。この上司は、自分のことをたった1回のミスで決めつけ、よく見ていてくれないと捉えられてしまうからです。部下と良好な関係を築いて人材マネジメントを行うためには、日常から部下の職務行動を観察し、事実情報を集めなければなりません。先入観を排除し、正しい評価事実を集めることが、人材マネジメントの基本と言っても過言ではないでしょう。
もう1点、誤った評価をしてしまう事例を考えてみましょう。例えば、「Aさんは仕事を終えた後、お酒の好きな上司に付き合ってお酒を飲みに行った」というのは評価事実でしょうか。これは、時間外のことで、しかも仕事とは関係ないことですから、評価事実ではありません。しかし、実際の人事考課においては、無意識のうちに評価事実にしている場合が見受けられます。コミュニケーションに関する考課要素でC評価を付けた理由を確認すると、「彼はいつもお酒の誘いを断るから」と答える考課者が昔はいました。今はさすがにそのように答える考課者はいないと思いますが、考課者の深層意識の中には、時間外のこととは言え、自分の誘いを断る部下と応じる部下では、評価に違いが出ているものと危惧します。このような視点で部下を評価していたのでは、真に優秀な人材を見逃しかねないでしょう。
最後の質問です。「Aさんは、毎朝30分前に出勤し、看護記録を確認して患者さんの状態を把握している」というのは、評価事実と言えるでしょうか。これも時間外のことですから、評価事実ではありません。万が一、このことを評価すれば、仕事に関する行動として時間外労働手当を支給しなければなりません。あくまでも本人の意思による時間外の行動であり、評価事実ではないという取り扱いをすべきと考えます。
評価事実1つ取り上げても、人材マネジメントや労務管理において重要なことが含まれていると気づきます。まずは評価事実とは何かを理解し、日常の観察を怠ることなく適切な事実を捉え評価し、部下の能力を正しく把握することで、部下との信頼関係も作られ人材マネジメントを行うことができると考えます。
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「疑義解釈資料の送付について(その30)」を追加しました
2025-10-01
「後発医薬品の出荷停止等を踏まえた診療報酬上の臨時的な取扱いについて」を追加しました
[お知らせ]
2026-01-14【セミナーのご案内】新社会システム総合研究所主催 これからの薬局経営の方向性と戦略
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