組織・人材育成
「アドバイス」が無いとだめ?「アドバイス」があれば出来る?
「アドバイス」と「気付き」
株式会社メディフローラ 代表取締役 上村 久子
東京都内でも大雪が降る日に、この文章を記しております。例えば、雪の日に「スノーブーツを履いていきなさい」というアドバイスは非常にわかりやすいですが、実際にスノーブーツを履くかどうかは指導された側の選択です。そして、外に出てみたら雪は積もっておらず必要無い可能性もありますが、それは指導した側の責任とは言い切れません。この「アドバイス」が人や組織の成長を促すものの場合、その複雑さは計り知れないものがありますが、それが人や組織を指導する側の面白さとも言えると思います。今回のテーマは「アドバイス」と「気付き」です。
今回もめまぐるしく変化する医療業界で努力される皆さまをご紹介することで、少しでも皆さまの組織のお役に立てることが出来たら幸いです。
今回もめまぐるしく変化する医療業界で努力される皆さまをご紹介することで、少しでも皆さまの組織のお役に立てることが出来たら幸いです。
ケース:
複数のクリニックを運営している法人で開かれた、管理職者対象の組織開発を目的としたリーダー研修でのお話です。1年間を通した研修が行われており、次期研修内容を検討するために、研修企画者が参加者に対してアンケートを行うことになりました。
リーダー研修の目的は「法人内で必要とされるリーダーシップの在り方を知る」こと。リーダーシップの在り方が考えられるよう、リーダーが行うコミュニケーション方法やモチベーションに対する考え方、ハラスメントまで多岐に渡るテーマで年間研修は行われました。1年が終わる頃には、スタッフから「変わった!」「私を気遣う発言がありました!今まで無かった!」と言われるリーダーが出てくるという成果が徐々に上がってきていました。
勉強熱心な人が多いこの法人の特徴通り、アンケート結果はリーダーシップ研修に対してポジティブな反応が多く、学んだ内容が具体的に多く記されていました。一方で気になる回答がありました。
「アドバイスが無かった」
この自由記載された回答には名前が添えられていました。それはあるクリニックの院長先生。後日、このA院長先生と面談を行うことになりました。
筆者「この度はアンケートに感想を寄せていただき、ありがとうございます。次回の参考にしたいので、もう少し掘り下げて回答の意図を伺っても良いですか?」
A先生「わざわざ時間を取っていただいてありがとうございます。講義そのものはとても良いと思って聞いているのですが、いざ自分のクリニックに戻ると実践が出来ないことが歯がゆいのです。もっと具体的なアドバイスが無いと組織が良くならないというか……他の院長先生たちもそうだと思うのですが……」
筆者「大変よく分かりました。確かにアドバイスがあればそれを基に組織を変えるための1歩を踏み出しやすくなりますね。ところで、自転車の乗り方ってどのように習いましたか?」
A先生「自転車ですか?私は一人で自転車に乗れるようになったのが遅くて(笑)そのため、色々な大人から指導されましたが、ある時突然目覚めたように乗れたのです!たくさん浴びたアドバイスは全く私に合わなかったのに、突然自分の中で良い漕ぎ方を発見したのです……あれ?」
このケース、どのような感想を持ちましたか?
現代社会では誰もが忙しく生活しているのですから、確かに解決に繋がるアドバイスがあったほうが自分で生み出すよりも効率的な気がします。しかし、残念ながら組織づくりや人づくりに数学の公式のような決まりきった正解がある訳ではありません。ただし、「こうすれば確実に良くなる」というアドバイスは困難であっても、たくさんのリーダーたちが経験してきた物事をご自身の状況に置き換えて考えたり、物事の抽象度を高くして考えたりすることで、解決のヒントを探ることは出来るはずです。自分自身がしっくりくる、まさに自転車に乗れるようになった感覚に至るようなアドバイスを盲目的に探すよりも、ご自身で考え、行動を起こし、ご自身の組織にあったより良くなるための「気付き」を発見することが大切だと考えます。
効率を重視するあまり、意外と組織づくりや人づくりについて「考える」ことが得意ではないリーダーが少なくないように思います。医療機関において組織づくりや人づくりの研修が多くなってきていますが、研修の学びを実務に活かすためには、研修中に気付きを得ようとするよりも、実務の中で気付けるように、研修を「考える訓練の場」だと捉えてみませんか?
組織も人も同じものはひとつとして無く、常に流動的なもの。その唯一無二のものをより良くしていくためのヒントは、意外と自分自身の中や自組織の中にあることも多いのですが、身近過ぎて見えなくなっているだけなのかもしれません。もしご自身で考えることが難しければスタッフを巻き込んで!一緒により良くなるためのヒントを考えてみてはいかがでしょうか。
【2024. 3. 1 Vol.587 医業情報ダイジェスト】
リーダー研修の目的は「法人内で必要とされるリーダーシップの在り方を知る」こと。リーダーシップの在り方が考えられるよう、リーダーが行うコミュニケーション方法やモチベーションに対する考え方、ハラスメントまで多岐に渡るテーマで年間研修は行われました。1年が終わる頃には、スタッフから「変わった!」「私を気遣う発言がありました!今まで無かった!」と言われるリーダーが出てくるという成果が徐々に上がってきていました。
勉強熱心な人が多いこの法人の特徴通り、アンケート結果はリーダーシップ研修に対してポジティブな反応が多く、学んだ内容が具体的に多く記されていました。一方で気になる回答がありました。
「アドバイスが無かった」
この自由記載された回答には名前が添えられていました。それはあるクリニックの院長先生。後日、このA院長先生と面談を行うことになりました。
筆者「この度はアンケートに感想を寄せていただき、ありがとうございます。次回の参考にしたいので、もう少し掘り下げて回答の意図を伺っても良いですか?」
A先生「わざわざ時間を取っていただいてありがとうございます。講義そのものはとても良いと思って聞いているのですが、いざ自分のクリニックに戻ると実践が出来ないことが歯がゆいのです。もっと具体的なアドバイスが無いと組織が良くならないというか……他の院長先生たちもそうだと思うのですが……」
筆者「大変よく分かりました。確かにアドバイスがあればそれを基に組織を変えるための1歩を踏み出しやすくなりますね。ところで、自転車の乗り方ってどのように習いましたか?」
A先生「自転車ですか?私は一人で自転車に乗れるようになったのが遅くて(笑)そのため、色々な大人から指導されましたが、ある時突然目覚めたように乗れたのです!たくさん浴びたアドバイスは全く私に合わなかったのに、突然自分の中で良い漕ぎ方を発見したのです……あれ?」
このケース、どのような感想を持ちましたか?
現代社会では誰もが忙しく生活しているのですから、確かに解決に繋がるアドバイスがあったほうが自分で生み出すよりも効率的な気がします。しかし、残念ながら組織づくりや人づくりに数学の公式のような決まりきった正解がある訳ではありません。ただし、「こうすれば確実に良くなる」というアドバイスは困難であっても、たくさんのリーダーたちが経験してきた物事をご自身の状況に置き換えて考えたり、物事の抽象度を高くして考えたりすることで、解決のヒントを探ることは出来るはずです。自分自身がしっくりくる、まさに自転車に乗れるようになった感覚に至るようなアドバイスを盲目的に探すよりも、ご自身で考え、行動を起こし、ご自身の組織にあったより良くなるための「気付き」を発見することが大切だと考えます。
効率を重視するあまり、意外と組織づくりや人づくりについて「考える」ことが得意ではないリーダーが少なくないように思います。医療機関において組織づくりや人づくりの研修が多くなってきていますが、研修の学びを実務に活かすためには、研修中に気付きを得ようとするよりも、実務の中で気付けるように、研修を「考える訓練の場」だと捉えてみませんか?
組織も人も同じものはひとつとして無く、常に流動的なもの。その唯一無二のものをより良くしていくためのヒントは、意外と自分自身の中や自組織の中にあることも多いのですが、身近過ぎて見えなくなっているだけなのかもしれません。もしご自身で考えることが難しければスタッフを巻き込んで!一緒により良くなるためのヒントを考えてみてはいかがでしょうか。
【2024. 3. 1 Vol.587 医業情報ダイジェスト】
同カテゴリーの記事:

2023-11-20

2023-11-20

2023-11-20

2023-11-20
[事務れんらクンの更新情報]
2025-05-27「疑義解釈資料の送付について(その26)」を追加しました
2025-05-26
「疑義解釈資料の送付について(その25)」を追加しました
2025-05-03
「疑義解釈資料の送付について(その24)」を追加しました
[お知らせ]
2025-05-07【セミナーのご案内】新社会システム総合研究所主催「ミクロとマクロのデータ分析による エビデンスある病院経営戦略」
2024-05-30
『九州医事新報/中四国・関西医事新報/東海・関東医事新報』で「HMレビュー」が紹介されました
2024-05-03
ホームページを開設いたしました
お知らせ一覧
[新着記事]
2025-05-30現役薬剤師・葦立ひとみの☆ななころびやおき☆
2025-05-26
労働基準法の解釈における病院人事パーソンの認識の違い
2025-05-26
認知症の緩和ケアにおける薬剤師の役割と可能性
2025-05-26
新人教育の成功法則 ~教え上手・教わり上手で新人スタッフが育つ職場に変える~
2025-05-26
調剤薬局経営における資金繰り管理の極意
2025-05-20
医療法人の決算スケジュールについて考える(2025年3月期)
2025-05-20
セルフメディケーション時代における薬局の役割
2025-05-20
看護補助者の労働条件は悪くない?
2025-05-19
薬局での医薬品販売について考える
2025-05-19
医療法改正と診療報酬改定は車の両輪
2025-05-15
ただ伝えることと成長を促すことの違い ~お話上手なリーダーの悩み~
2025-05-15
高年齢者に関する法改正と 定年延長、退職金制度の見直し