組織・人材育成
研修開始から半年で「変わった!」と言われたリーダー
より良い組織作りを目指して指摘し合える雰囲気づくり
株式会社メディフローラ 代表取締役 上村 久子
医療、介護・障害福祉サービスのトリプル改定が控えている今年は、否応なしに組織の変革を迫られている年と言えます。昨今の環境変化に対応するためには成長し続ける必要があると言われますが、成長のためには変化が必要であり、特に組織のリーダーは常に変化と対峙していると思います。より良い変化はリーダーの下で働くスタッフにとっても非常に喜ばれるものです。とはいえ、変化とは一般的に面倒であり、変化しないで良いのならば変化しない方が楽なのもまた事実です。今回のテーマはそんな「リーダーの変化」を取り上げたいと思います。
ケース:
規模の大きなクリニックで働く、リハビリ部門のリーダーAさんのお話です。このクリニックではリーダー育成が課題となっており、特に「私たちのクリニックは体育会系である」ということが免罪符のように使われる(=体育会系だから少しくらいハラスメントが疑われる発言や態度も問題視する必要が無いという雰囲気等)、上下関係が極端な文化を変えていけるよう、リーダーを中心に組織開発を目的とした研修が行われることになりました。
この組織の中で最も「体育会系」なのがリハビリ部門。そのリーダーが、このクリニックでリハビリセラピストとして最も長く勤務しているAさんです。Aさんは体格と声が大きく常に腕組みをしており、本人に自覚が無くとも高圧的に感じられる態度が原因でスタッフが離れていくことが度々ありました。しかしAさんは経営幹部からの評価は非常に高く、Aさん自身も組織をより良くしようという志を経営幹部に示していたことから、リハビリ部門の問題としてこれまで表出することはありませんでした。
ところが、昨今のハラスメントを問題視する社会的な風潮から、少しずつ「この組織、何か変ではないか」「問題を感じてもスタッフが声を上げられない雰囲気は変えないといけないのではないか」という訴えが退職希望者から浮上してきました。最初はこのような声が上がっても「本人の認識がおかしい」「Aさんの功績があるから問題視する必要は無いのでは」と考えていた人事・総務担当者でしたが、退職希望者が徐々に増えてきたこともあり、「問題として捉えなければならないのでは」とリーダー育成に舵を切ったのでした。
さて、筆者が講師となるリーダー研修がスタート!最初はワークを行ってもAさんをはじめとして特定の人のみの発言が聞こえる状態でしたが、研修内の心理的安全性が高まったことで徐々に活発な発言が聞かれるようになりました。
もう少しで研修開始から半年が過ぎようとする時、「ハラスメント」を題材とした研修が行われました。
ハラスメント事象と思われるケースについてグループワークを行っていただき、グループ毎に話し合った成果を発表するという場面での出来事です。
Aさんのグループが発表する番になった時、Aさんが同じグループにいたリハビリ部門の主任に対し「お前が発表しろ」と笑顔で肩を叩いたところ、他のグループから「おっと!それは例題であったケースのハラスメントを体現したのですか?!」という声が掛かり、どっと笑い声が会場に溢れたのです。みんなの笑顔につられてAさんも笑顔になったのですが、その後、しばらくAさんの声は小さく聞こえなくなりました。
その研修から1か月後、再びこのクリニックを訪問した際に先の主任さんをはじめとしたリハビリスタッフから筆者は呼び止められました。
スタッフ「あの研修からAさんがものすごくスタッフに優しくなったのです!言葉ひとつとってもとても丁寧に慎重になったというか。だからと言ってAさんがビクビクしている様子はなく、Aさんは『俺は変わるぞ!目覚めた!』と自身の目標を『スタッフから声を掛けられやすい雰囲気のリーダーになる』と語っています。高圧的な態度が無くなったわけでは無いのですが、スタッフから『あ!腕を組んでいますよ!ちょっと怖いです!』という声が掛かるようになりましたし、Aさんも『おおお!気が付かなかった!ありがとう!』と返事をしています。Aさんの態度は無意識だったんだなと分かりましたし、無意識が周りに与える恐ろしさも同時に気が付きました。今日もAさんは『次の研修でも俺は変わるんだ!』と息巻いていました」
以降もこのクリニックに訪問するたびに、Aさんの変化について他のスタッフから報告があり、さらに他のリーダーの変化についても徐々に聞かれるようになったのでした。
このケース、どのような感想を持ちましたか?
色々な組織でお話を伺うと、悪意を持ってスタッフと接しているために問題が起こっている事例は極々少ないと感じています。このケースのようにご自身の課題と素直に向き合うことが出来ると、周りを巻き込んだより良い変化の循環が起こるようです。忘れてはならないのは、より良い組織作りを目指して指摘し合える雰囲気づくりがなければこのような状況は生まれなかったということです。自分に対する気付きをお互いに得られるよう、環境づくりを行っていますか?
このケースが皆さまにとってより良いリーダー及び組織の在り方を目指す参考になれば幸いです。
【2024. 3. 15 Vol.588 医業情報ダイジェスト】
この組織の中で最も「体育会系」なのがリハビリ部門。そのリーダーが、このクリニックでリハビリセラピストとして最も長く勤務しているAさんです。Aさんは体格と声が大きく常に腕組みをしており、本人に自覚が無くとも高圧的に感じられる態度が原因でスタッフが離れていくことが度々ありました。しかしAさんは経営幹部からの評価は非常に高く、Aさん自身も組織をより良くしようという志を経営幹部に示していたことから、リハビリ部門の問題としてこれまで表出することはありませんでした。
ところが、昨今のハラスメントを問題視する社会的な風潮から、少しずつ「この組織、何か変ではないか」「問題を感じてもスタッフが声を上げられない雰囲気は変えないといけないのではないか」という訴えが退職希望者から浮上してきました。最初はこのような声が上がっても「本人の認識がおかしい」「Aさんの功績があるから問題視する必要は無いのでは」と考えていた人事・総務担当者でしたが、退職希望者が徐々に増えてきたこともあり、「問題として捉えなければならないのでは」とリーダー育成に舵を切ったのでした。
さて、筆者が講師となるリーダー研修がスタート!最初はワークを行ってもAさんをはじめとして特定の人のみの発言が聞こえる状態でしたが、研修内の心理的安全性が高まったことで徐々に活発な発言が聞かれるようになりました。
もう少しで研修開始から半年が過ぎようとする時、「ハラスメント」を題材とした研修が行われました。
ハラスメント事象と思われるケースについてグループワークを行っていただき、グループ毎に話し合った成果を発表するという場面での出来事です。
Aさんのグループが発表する番になった時、Aさんが同じグループにいたリハビリ部門の主任に対し「お前が発表しろ」と笑顔で肩を叩いたところ、他のグループから「おっと!それは例題であったケースのハラスメントを体現したのですか?!」という声が掛かり、どっと笑い声が会場に溢れたのです。みんなの笑顔につられてAさんも笑顔になったのですが、その後、しばらくAさんの声は小さく聞こえなくなりました。
その研修から1か月後、再びこのクリニックを訪問した際に先の主任さんをはじめとしたリハビリスタッフから筆者は呼び止められました。
スタッフ「あの研修からAさんがものすごくスタッフに優しくなったのです!言葉ひとつとってもとても丁寧に慎重になったというか。だからと言ってAさんがビクビクしている様子はなく、Aさんは『俺は変わるぞ!目覚めた!』と自身の目標を『スタッフから声を掛けられやすい雰囲気のリーダーになる』と語っています。高圧的な態度が無くなったわけでは無いのですが、スタッフから『あ!腕を組んでいますよ!ちょっと怖いです!』という声が掛かるようになりましたし、Aさんも『おおお!気が付かなかった!ありがとう!』と返事をしています。Aさんの態度は無意識だったんだなと分かりましたし、無意識が周りに与える恐ろしさも同時に気が付きました。今日もAさんは『次の研修でも俺は変わるんだ!』と息巻いていました」
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