診療所

独裁者となった職員を野放しにしない ネジメント方法

クリニック相談コーナー
合同会社MASパートナーズ 代表社員 原 聡彦

【相談内容】

開業15年目の整形外科クリニックの院長より「創業メンバーで入職15年目のベテランのリハビリ職員が自分の気に入らない職員をいじめて辞めさせてしまった。リハビリ部門の独裁者となって著しくリハビリ部門およびクリニック全体に悪影響を及ぼしているので対処策を検討してほしい」という相談を頂きました。

【回  答】

開業10年を経過しているクリニックで部署の独裁者となっているベテラン職員がクリニック全体の職場風土に悪影響を及ぼしているケースはよく耳にします。そこで今回は独裁者となった職員を野放しにしないマネジメント方法をお伝えいたします。

1.ベテラン職員との面談を定例化する
現場で野放しになって好き勝手に仕事をしているベテラン職員が仕事中に居眠りやスマホでゲームをするといったことが日常になっているケースもあるようです。対処のポイントは最低月1回、ベテラン職員との個別面談を必ずスケジューリング化して院長がベテラン職員の仕事の中身を見られる仕組みをつくることです。

2.個人面談で話す内容もパターン化する
上記のようにアドバイスすると、「個人面談で何を話したらいいの?」とご質問をいただくことがあります。個人面談は何気に(何も考えずに)話すのではなく、話す内容を決めてパターン化しておくことをお勧めします。パターン化する内容は下記のとおりです。

  1.  承認(何を言っても受け入れてもらえる)
  2.  傾聴する(話を最後までじっくり聴く)
  3.  フィードバックする(次の行動へつなげる)

特にフィードバックに重点を置いて個人面談を実施していただくことでスタッフの強みと改善点を院長とスタッフの共通認識にすることができます。次の3つの視点でフィードバックを行うと効果が上がります。

  1.  Keep to do・・・効果があり継続すべきこと。
  2.  Start doing・・・さらに良くするために新たに取り入れること。
  3.  Stop to do・・・避けるべきこと。

上述した個別面談を1年間続けた結果、ベテラン職員の行動が変わり、スタッフ間のコミュニケーションも良くなったという事例もあります。個人面談では弱点を強調するのではなくベテラン職員の強みと改善点を洗い出す機会にしていただきたいと思います。

3.ベテラン職員の管理能力を見極める
クリニックにもっとも悪影響を及ぼしているケースは、部下が数名いるベテラン職員ですべての仕事を部下にやらせ業務の管理を放棄しているケースです。そして、何か問題やクレームが発生すると感情任せに部下を怒り倒すという悲劇が現場では繰り返されています。部下に対して「仕事の中身を全然見ない。質問させない。応援しない」というベテラン職員には、管理者というポジションを外してプレイヤーとして仕事に専念させてあげることが、クリニックの組織全体に不必要なストレスをかけなくても済む最良の方法です。院長先生にはベテラン職員を観察し、見極める目を持ってほしいと思います。

4.職務権限と責任範囲を明確にする
現場で野放しになっているベテラン職員を面談すると「私は私なりにマネジメントしているのですよ!」と説明されます。この「私なり」を放置していると、クリニックの中に手をつけられない独裁者を作ってしまうことになります。「私なり」を言わせないように、職務権限と責任範囲を明確にしていただくことが大切です。職務権限と責任範囲を明確にすれば、院長を含め職員全員が安心して仕事ができるようになります。院長先生にはじっくり時間をかけてベテラン職員の職務権限と責任範囲を明確にすることをご提案したいと思います。

ベテラン職員の知恵を現場で活用できるよう、ベテラン職員の管理能力と仕事の中身を見極める視点の参考になれば幸いです。


【2023. 7. 1 Vol.571 医業情報ダイジェスト】