診療所

【続き】患者さんの怒りや不快感を軽減させるクレーム初期対応の型

不満を増幅させない事実確認と傾聴のポイント
合同会社MASパートナーズ 代表社員 原 聡彦
Step2:患者さんの話を受け止める(傾聴する)
相手の話をただ聴くだけでなく、同時に「事実確認」のための情報収集とクレーム内容や要求の妥当性の判断を行います。
ただし、相手を刺激したり不満を増幅させることのないよう、以下の点に留意していただきたいと思います。

<不満を増幅させない事実確認と傾聴のポイント>
  • 相手の話を途中で遮らず肯定も否定もせず聴く
  • 相手とまっすぐ向かい合い目線の高さを合わせる
  • 無意味に笑わない
  • うなずいたり、相づちをうつ。 「はい」 「さようでございますか」 「そのような印象を持たれたのですね」
  • キーワードの繰り返し 「・・・・と思われたということですね」 など
  • 避けるべき対応 「そんなことありません」 「それは誤解ですね」 など相手の話を遮ったり否定すること

基本的な傾聴スキルについては、クレーム対応の上手いスタッフを講師として、スタッフ全員にクレーム対応のレクチャーをしてもらうことをお勧めします。
受講するスタッフだけでなく、教える講師のスタッフにも新たな気づきや今後の行動について襟を正すきっかけにもなります。

Step3:切り上げる
話が長い患者さんの場合、自分が納得のいく答えが返ってくるまで、1時間以上もクレームを続けることがあります。高齢の人なら、同じ話を何度もループして繰り返すこともあります。その場合は、「(ご指摘の内容は)○○ということですね」というように話を要約しながら今後の対応を伝え、いったん切り上げることをお勧めします。クリニックの場合、お詫びから傾聴までの時間は、長くても30分前後が目安です。ただし、相手の気分を害さずに切り上げるのはとても難しいので、不用意な発言をしないよう院内で切り上げの言葉を慎重に選んでいただきたいと思います。

<切り上げのトーク例>
  • 誠に申し訳ございませんが、いま結論を出すことはできませんので今週中には結論を出し連絡をさせていただきます。一度、電話を切らせていただきます。
  • 本日のお話はたしかに承りました。当方でも改めて事実関係を調査し、その結果について○○日までにご報告いたします。恐れ入りますが本日はお帰りください。

■  「何度も説明させていただいているのですが」 はNG!患者さんの立場で言葉を選ぶ!
うまく事態を収めようと焦るあまり、かえって火に油を注ぐ言葉を発してしまうことも少なくありません。
よくある事例では、患者さんに説明してもなかなか納得してもらえないとき、「何度も説明させていただいているのですが」と言ってしまうケースが見受けられます。 「きちんと説明しているのにどうしてわからないのか?」 「聞いていないのか?」 というニュアンスが患者さんに伝わると、最初は良かれと思ってちょっと指摘するだけのつもりでも、大きな怒りへと変わってしまうケースもあるのでクレーム対応時はNGです。
クリニック側に非はないという思い込みから、このような言葉が出るケースが多いですが、患者さんの立場からすると、まるで自分の理解度が足りないと言われたような感覚を持たれるので、イラッとするのも無理もありません。 「こちらの説明が悪かったと思いますが」 「言葉不足で失礼しました」 など、クッション言葉と言い換え言葉を使って患者さんの責任にしない言葉を選ぶことも有効ですのでお勧めしたいと思います。


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【2024. 7. 1 Vol.595 医業情報ダイジェスト】