診療所
スタッフに辞めてもらうには……「退職勧奨」の進め方
クリニック相談コーナー
合同会社MASパートナーズ 代表社員 原 聡彦【相談内容】
近畿地方で開業2年目の内科クリニックの院長から「現在、どうしても辞めてもらいたいスタッフがいます。しかし、下手に解雇などを行うと後で法的な問題を指摘されクリニックにとって相当な不利益になると顧問の社労士に聞いているので日々、我慢している状況です。そこで、のちのちトラブルなどが発生しないようクリニックを辞めてもらう方法があれば、お教え頂きたい」というご相談を頂きました。
【回 答】
合法的にクリニックを辞めてもらう方法はよほどの懲戒事由がなければ難しいと思いますが、丁寧に話し合いをして合意のうえ退職してもらうことは可能です。そこで今回は合意の上、スタッフに退職してもらう退職勧奨についてお伝えしたいと思います。
1. 退職勧奨とは
退職勧奨は、雇用主である院長が労働者に退職を促すことを意味します。つまり雇用主が一方的に当該労働者のスタッフを辞めさせるのではなく、労働者であるスタッフがこれに応じた場合にはじめて労働契約が終了して退職することになるものを指します。当然、労働者は、雇用主からの退職勧奨を受け入れる義務などありませんので、労働者が断れば雇用主は労働者を退職させることはできません。このように退職勧奨はあくまで労働者の退職を促す行為を指すため原則として労働法による規制はありません。したがって雇用主は退職勧奨については比較的自由に行うことが可能です。
ただし、労働者が断ったにもかかわらず執拗に何度も退職勧奨したり単なる「勧奨」を超えて辞めなければならないように勘違いさせたり脅すような言動を用いれば当然問題になりますので、慎重に退職勧奨を行うことが必要です。
ただし、労働者が断ったにもかかわらず執拗に何度も退職勧奨したり単なる「勧奨」を超えて辞めなければならないように勘違いさせたり脅すような言動を用いれば当然問題になりますので、慎重に退職勧奨を行うことが必要です。
2.退職勧奨を進める際の流れ
退職勧奨は解雇と勘違いされないよう慎重に進めて頂く必要があります。退職勧奨を進める際の具体的な流れを下記にまとめておりますのでご参考にしてください。
ステップ1.退職勧奨することの表明
対象となるスタッフと個別面談をもって退職勧奨することを次のように明確に表明する。
「本日は◎◎さんに退職勧奨をさせて頂きます。退職勧奨とは、従業員に対して退職するように促すことです。あなたが退職勧奨に応じた場合にはじめて雇用契約が終了します」と明確に退職勧奨を表明して頂くことをお勧めします。
<注意点>
■ 相手方が過剰に反応して、議論になるのを防ぐために「解雇する」という言葉を使わないようにしてください。
■ 相手方から、退職勧奨に応じない場合はどうなるのかと聞かれるかもしれません。その場合は、「仮定の質問には答えられない」と回答して頂くことをお勧めします。安易に答えて議論にならないようにしてください。
ステップ2.退職勧奨をする理由を説明する
退職勧奨する理由についてあらかじめ考えて明確にお伝えする。
伝え方の事例としては下記のとおりです。
「◎◎さんを退職勧奨する理由は2点あります。1点目は、・・・・・・です。そして2点目は、・・・・・・ということです。以上の2点は、いずれも当院の職責を担う者の行動としてふさわしいものではなく、あなたにとっては、小さなことかもしれませんが私にとってはこの小さな積み重ねが信頼失墜につながっており、今後、一緒に仕事をすることが困難であると考えています。当院としては、残りの有給休暇を消化後の令和◎年◎月◎日付で退職してもらうのが相当であると考えています」
ステップ3.退職条件の説明
上記の流れで退職勧奨をしていきますがスタッフにとっては職を失うわけですので、積極的にクリニックを辞めることに合意してくれるとは限りません。したがってスタッフにメリットのある退職条件をあらかじめ考えてお伝えすることをお勧めします。
下記に退職勧奨の退職条件の事例をご紹介します。
「今回のお話に応じて頂けるのであれば、有給休暇の残日数を消化した後、退職ということで退職合意金100万円支払う予定です。これは解雇ではないので、あなたは、この退職条件を拒否することも可能です。ただし、この退職条件を拒否する場合には、退職合意金の支払い条件は撤回します」
<退職条件提示のポイント>
■ スタッフ側が退職した後、退職条件を受け入れることを強制されたと言い出してトラブルになることを防ぐために退職条件を拒否することも可能であることを相手方に伝えることが重要です。
■ 考える時間が欲しいと言われたら「いつまでにお返事を頂けますか」とスタッフの都合にあわせ回答して頂くことをお勧めします。
ステップ4.退職合意書の交付
退職合意書を交付し、サインをもらいます。退職合意書は弁護士などの専門家に作成して頂くことをお勧めします。縁があって一緒に仕事をしたスタッフの方ですから感情的にしこりを残すことは極力避けるために退職理由はお互いに公表しない旨、退職合意書に記載して頂くことも効果的です。
【2022. 9. 15 Vol.552 医業情報ダイジェスト】
ステップ1.退職勧奨することの表明
対象となるスタッフと個別面談をもって退職勧奨することを次のように明確に表明する。
「本日は◎◎さんに退職勧奨をさせて頂きます。退職勧奨とは、従業員に対して退職するように促すことです。あなたが退職勧奨に応じた場合にはじめて雇用契約が終了します」と明確に退職勧奨を表明して頂くことをお勧めします。
<注意点>
■ 相手方が過剰に反応して、議論になるのを防ぐために「解雇する」という言葉を使わないようにしてください。
■ 相手方から、退職勧奨に応じない場合はどうなるのかと聞かれるかもしれません。その場合は、「仮定の質問には答えられない」と回答して頂くことをお勧めします。安易に答えて議論にならないようにしてください。
ステップ2.退職勧奨をする理由を説明する
退職勧奨する理由についてあらかじめ考えて明確にお伝えする。
伝え方の事例としては下記のとおりです。
「◎◎さんを退職勧奨する理由は2点あります。1点目は、・・・・・・です。そして2点目は、・・・・・・ということです。以上の2点は、いずれも当院の職責を担う者の行動としてふさわしいものではなく、あなたにとっては、小さなことかもしれませんが私にとってはこの小さな積み重ねが信頼失墜につながっており、今後、一緒に仕事をすることが困難であると考えています。当院としては、残りの有給休暇を消化後の令和◎年◎月◎日付で退職してもらうのが相当であると考えています」
ステップ3.退職条件の説明
上記の流れで退職勧奨をしていきますがスタッフにとっては職を失うわけですので、積極的にクリニックを辞めることに合意してくれるとは限りません。したがってスタッフにメリットのある退職条件をあらかじめ考えてお伝えすることをお勧めします。
下記に退職勧奨の退職条件の事例をご紹介します。
「今回のお話に応じて頂けるのであれば、有給休暇の残日数を消化した後、退職ということで退職合意金100万円支払う予定です。これは解雇ではないので、あなたは、この退職条件を拒否することも可能です。ただし、この退職条件を拒否する場合には、退職合意金の支払い条件は撤回します」
<退職条件提示のポイント>
■ スタッフ側が退職した後、退職条件を受け入れることを強制されたと言い出してトラブルになることを防ぐために退職条件を拒否することも可能であることを相手方に伝えることが重要です。
■ 考える時間が欲しいと言われたら「いつまでにお返事を頂けますか」とスタッフの都合にあわせ回答して頂くことをお勧めします。
ステップ4.退職合意書の交付
退職合意書を交付し、サインをもらいます。退職合意書は弁護士などの専門家に作成して頂くことをお勧めします。縁があって一緒に仕事をしたスタッフの方ですから感情的にしこりを残すことは極力避けるために退職理由はお互いに公表しない旨、退職合意書に記載して頂くことも効果的です。
【2022. 9. 15 Vol.552 医業情報ダイジェスト】
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