診療所

開業を考える医師が押さえておくべき3つのポイント

クリニック相談コーナー
合同会社MASパートナーズ 代表社員 原 聡彦

【相談内容】

大阪府にて1年後ぐらいをめどに内科(呼吸器内科、在宅)で開業を検討している40歳の医師より、「開業コンサルタントに依頼をしていろいろアドバイスをもらって開業地を選定している段階です。この段階で押さえておくべきポイントを教えてください」というご相談を頂きました。

【回  答】

最近、新規開業のご相談が増えています。今回は、私が新規開業を希望されている先生に必ずお伝えしている「開業を考える医師が押さえておくべき3つのポイント」をまとめました。

1.開業地を選定する視点
診療所の開業地選定においてチェックしていただきたい視点は、下記の5つです。

①土地条件面
土地の広さ、用途などが開業に適しているかどうか。建ぺい率・位置・間口・用途制限などチェックしていく。

②交通面
主に利便性をチェックする。チェックポイントは、駐車場・公共の交通機関・道路整備状況・渋滞状況など。

③将来面(地域性)
活気があり将来性のある地域かどうか。人口動態・交通事情の整備・都市宅地開発の有無などチェックしていく。

④競合面
競合となる医療施設の状況。単に多い少ないだけではなく、競合の院長の年齢・得意分野・患者数などをチェックし、将来的に自院の患者数増加が期待できるかを考える。

⑤経済面
開業条件にあっているか。事業計画と照らし合わせ判断していく。
 
以上の立地選定の視点を参考に、Googleマップを見ながら、その地域をご自身で歩いてみて、競合クリニック、連携可能な医療機関、学校・スーパー・公共の交通機関、来院を見込める町など地域のロケーションを確認するとともに人通りや車の交通量など現場視察をして、ご自身の目で「自分がやりたい医療が地域に選ばれるのか」という視点でインスピレーションを膨らませていただきたいと思います。
最近は開業地の選定の際、必ず現場視察をされていると思いますが、時間帯を変えて複数回視察されているでしょうか? 開業地の朝・昼・夕・夜、それぞれの顔を知っていらっしゃいますか? ぜひ、開業地の時間帯ごとの顔を開業前に必ず知っておいてください。

2.初期投資額を抑えること
「なんだ。当たり前のことやないか?」と言われる方は、要注意です。新規開業する際、内装工事や機器、物品の見積もりは普段の買い物より一桁違って感覚が鈍ってきます。例えば、内装工事のちょっとした工事代30万円前後が小さな金額に思えてきたりします。この小さな金額の積み重ねが初期投資額を大きくしてしまいます(結構、多いですよ。このような先生)。これは医療機器などについても同じです。最初は必要最小限のものでスタートすることを意思決定してください。
ただ、原則は必要最低限のものでスタートすることをお勧めしますが、経営戦略にしたがって開業時から資金をかけ拘る部分と利益が出てから揃えても遅くはない部分を区別して初期投資計画を立案していただくことをお勧めします。

3.開業後のランニングコストはローコスト化すること
「これも当たり前のことやないか?」と言われる方は、要注意です。開業後のランニングコストは開業前の検討段階から始まっています。テナントの家賃、人件費(常勤スタッフの配置人数など)、リース料、割賦の支払、借入金元本返済額など、開業前から決まる内容が多いと思います。また、生命保険、住宅ローン、教育費、生活費など事業以外で毎月必要な資金はいくらか。開業前から見積もりをして節約できる部分はしっかり節約することを計画していただきたいと思います。開業後のランニングコスト(運転コスト)は、開業前から全力投球で抑えにかかってください。


 【2022. 5. 15 Vol.544 医業情報ダイジェスト】