保険薬局

【続き】税理士の視点から見た調剤薬局M&A

【新連載】 薬剤師 × 税理士の薬局経営教室
アシタエ税理士法人 税理士・ 薬剤師・認定登録医業経営コンサルタント 市川 秀

税理士は企業価値がわかる?

先日、薬局開業希望の方から 「M&Aを活用して薬局を開局したいが、提示された価格が高額で困っている」 と相談を受けました。インターネットで 「税理士が適正な企業価値を算定できる」 と聞き、私に依頼したいとのことでした。結論として、税理士が適正価格を出すのは難しく、あくまで 「税務・財務の観点から見ると、これくらいが適正では?」 というアドバイスにとどまります。いわゆるデューデリジェンスに該当しますが、これも売り手側の決算書などの情報がないと算出が難しく、相当な時間と労力がかかるため、報酬も高額になりがちです。

では、普段の顧問先で買収計画を聞いた際に、毎回そのような高額な手続きを踏んでいるかというと、実はそうではありません。最初に手に入れた簡単な情報を基に、先述したインカムアプローチやマーケットアプローチを駆使して、将来の利益見込みや決算書の状況を把握し、デューデリジェンスよりも精度は落ちますが、簡易的な指標となる企業価値をお伝えしています。
 最初に述べたように、調剤薬局はM& Aが活発で、おおよその相場が出やすい業種ですので、そのような簡易的な指標を作成することが可能です。また、M&A仲介・アドバイザーの中でも取引先事例を多く抱えているところであれば、自社でその相場観を持っているところもあるようです。

まとめ

今回は調剤薬局のM&Aに関する基本的な情報と、税理士の役割について紹介しました。M&Aを成功させるためには、企業価値のスピーディーかつ正確な算定が不可欠です。そして、そのためには専門知識を持った税理士等の専門家のサポートが重要です。次回の内容もどうぞお楽しみに。


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【2024.7月号 Vol.338 保険薬局情報ダイジェスト】