保険薬局
選定療養、税理士側の視点で考えること
税務調査でのリスクについて
アシタエ税理士法人 税理士 薬剤師・認定登録医業経営コンサルタント 市川 秀2024年10月から薬局でも選定療養が導入され、多くの薬剤師の先生方がその対応に苦労しているという話を耳にします。私自身も調剤薬局専門税理士として、顧問先やSNS(X / 旧Twitter)を通じて多くの質問や悩みをいただいています。この選定療養に関しては、特に消費税に関わる問題が重要な論点となります。今回は、税理士の視点から見た選定療養における注意点について、主に消費税にフォーカスして解説します。
選定療養が課税売上に影響
税理士の視点から選定療養を見た場合、最も注意すべき点は 「自己負担額に消費税が含まれる」 ということです。特に、中小零細の薬局においては消費税の免税事業者であることが多いですが、選定療養によって消費税の計算に影響が及ぶことになります。
免税事業者である薬局の方々の中には、 「払いもしない消費税がどう変わろうとも関係ないだろう」 と思われる方がいらっしゃるかもしれません。ですが、たとえ現在は免税事業者であっても、油断は禁物です。選定療養により課税売上が増加し、それが結果的に1,000万円を超えることによって、2年後に課税事業者となる可能性があるからです。
免税事業者である薬局の方々の中には、 「払いもしない消費税がどう変わろうとも関係ないだろう」 と思われる方がいらっしゃるかもしれません。ですが、たとえ現在は免税事業者であっても、油断は禁物です。選定療養により課税売上が増加し、それが結果的に1,000万円を超えることによって、2年後に課税事業者となる可能性があるからです。
課税売上による判定の仕組みとは?
消費税法では、課税事業者となるかどうかの判定は 「基準期間」 という制度に基づいて行われます。簡単に言えば、2年前の課税売上が1,000万円を超えた場合、課税事業者になるという仕組みです。ですから、現在の課税売上が1,000万円を超えたとしても、その年にすぐに課税事業者になるわけではありません。しかし、2年後には課税事業者となり、消費税を納付しなければならない可能性があるのです(一部例外があるため、課税事業者の判定は顧問税理士と相談してください)。
たとえば、今期に選定療養によって課税売上が増えてしまい、2年後には課税事業者となってしまうケースが考えられます。そのため、選定療養による売上が一時的なものか、今後も続くのかをしっかりと見極めた上で、税務計画を立てる必要があります。
たとえば、今期に選定療養によって課税売上が増えてしまい、2年後には課税事業者となってしまうケースが考えられます。そのため、選定療養による売上が一時的なものか、今後も続くのかをしっかりと見極めた上で、税務計画を立てる必要があります。
税務調査でのリスク
税務調査においても選定療養は注意しなければなりません。税務調査は数年後に行われることが一般的ですが、その際に選定療養の影響が見逃されていた場合、過去の売上が課税対象であったことが発覚してしまう可能性があります。仮に、免税事業者であると自己認識していた薬局が、実際には選定療養によって課税事業者に該当していた場合、過去に遡って消費税を追徴されるリスクがあります。
たとえば、車両の買い替えや業務委託契約などの大きな収入を課税売上として計上しつつも、なんとか1,000万円の売上基準を超えないように工夫したとしても、選定療養による課税売上を正確に管理しなかったがために、後から税務調査で選定療養が影響していたことが発覚すれば、課税事業者としての申告を怠っていたことが指摘される可能性があります。このような状況を避けるためには、選定療養による課税売上を正確に把握し、適切な税務処理を行うことが重要です。
たとえば、車両の買い替えや業務委託契約などの大きな収入を課税売上として計上しつつも、なんとか1,000万円の売上基準を超えないように工夫したとしても、選定療養による課税売上を正確に管理しなかったがために、後から税務調査で選定療養が影響していたことが発覚すれば、課税事業者としての申告を怠っていたことが指摘される可能性があります。このような状況を避けるためには、選定療養による課税売上を正確に把握し、適切な税務処理を行うことが重要です。
税理士は選定療養を把握しているのか?
選定療養が導入されることで、消費税の計算が複雑になるため、税理士としっかり連携を取ることが求められます。ここで注意が必要なのは、税理士が必ずしも選定療養や薬局経営に精通しているわけではないという点です。多くの税理士は税務のプロフェッショナルであるものの、薬局業界や選定療養に関する知識は乏しい場合があります。私自身も、医療系の士業向けに選定療養について説明するセミナーを行った際、多くの先生方から 「薬局でも消費税が発生するような制度が始まるのか」 と驚かれた経験があります。
このような背景を考慮すると、選定療養の影響を税理士に適切に伝えることが重要です。選定療養が薬局にどのような影響を与えるかを理解し、それに基づいて税務処理を依頼することが必要です。
このような背景を考慮すると、選定療養の影響を税理士に適切に伝えることが重要です。選定療養が薬局にどのような影響を与えるかを理解し、それに基づいて税務処理を依頼することが必要です。
まとめ
選定療養が始まり、多くの薬局経営者にとっては新しい対応が求められていますが、税務面での影響もしっかりと把握しておくことが重要です。今回は免税事業者であった場合のリスクについて説明しましたが、たとえ課税事業者であっても消費税の計算方法が変わる可能性があるため、どの事業者においても選定療養を顧問税理士と共有することは重要です。
まだ税理士とこの問題について話し合っていない方は、厚労省のパンフレットやガイドラインを参考に、ぜひ一度税理士と相談することをお勧めします。薬局に特化した税理士であれば、このような問題に対しても的確なアドバイスが期待できますが、そうでない場合は、薬局側から積極的に情報を提供し、選定療養の影響を把握してもらうことが重要です。
税務調査が行われた際、選定療養の影響を税理士に伝えていなかった場合、その責任は事業者側にあると見なされる可能性があるため、注意が必要です。薬局経営者として、選定療養と消費税の関係について適切に対応するための準備を整えておくことが、今後のリスク回避につながります。
【2024.11月号 Vol.342 保険薬局情報ダイジェスト】
まだ税理士とこの問題について話し合っていない方は、厚労省のパンフレットやガイドラインを参考に、ぜひ一度税理士と相談することをお勧めします。薬局に特化した税理士であれば、このような問題に対しても的確なアドバイスが期待できますが、そうでない場合は、薬局側から積極的に情報を提供し、選定療養の影響を把握してもらうことが重要です。
税務調査が行われた際、選定療養の影響を税理士に伝えていなかった場合、その責任は事業者側にあると見なされる可能性があるため、注意が必要です。薬局経営者として、選定療養と消費税の関係について適切に対応するための準備を整えておくことが、今後のリスク回避につながります。
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